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253.正月イベント

 漆歴うるしれき2022年1月1日。

 本日は元旦だ。


 究極アルティメットカケル、28歳は正月休みを無事に迎えることができたようで、本日からそれがスタートする。


 カケルはベッドから起き上がると、着替える。

 そして……。


「よしっ! 朝からやるか!」


 久々にGWOにログインするのであった。

 オフ会前にログインしたのが最後、ログインできずにいたのだ。


 ログインすると、マイホームエリアにいた。

 漆黒の龍の姿をしたアバターこそが、カケルのGWOでの姿だ。

 アバター名は、【アルカ】。

 他のプレイヤーは全員女性アバターだが、アルカだけはなぜかこの姿となってしまっている。

 一体なぜだろうか。

 だが、そんなことは関係ない。

 アルカはこの姿を気に入っているのだから。


 アルカはとりあえず、第1層のはじまりの街へと向かう。

 大体ここに行けばどんなイベントが起こっているかが分かるからだ。


「ゲームの中だってのに、街の装飾が正月みたいになってるな」


 一応中世ヨーロッパのような街なのだが、装飾で正月っぽくしている。

 普段見ないような店もある。

 餅やお雑煮なども売っており、それを食らいながら歩っているプライヤーもいる。


 そして、強いのかどうかは不明だが、浴衣を身に着けたプレイヤーもいた。


「いくら課金すれば手に入るんだ?」


 実際は課金ではない。

 どちらにしろアルカは装備できないので、それ以上あまり興味は示さなかった。


「皆、誰かと歩いてるな。俺も誰か誘えば良かったな」


 クランメンバーの皆は元旦ということもあり、やることがあるようで、少なくとも今日は来れないらしかった。

 だが別に問題はない。

 正月イベントは今日が終わっても続くからだ。


 とはいえ、今日は1人だ。


「おっ! 神社か!」


 普段ない正月イベント限定エリア、神社がアルカの目に入った。

 アルカは神社エリアへ入ると、人の集まりを確認。

 どうやらおみくじが引けるようだ。

 おみくじを引く為に人々は集まっているのであった。


「なんで行列ができているんだ……?」


 このゲーム、たまにリアリティを重視し、あえて行列を作らせたりすることもある。

 やろうと思えば、神社エリアを複数に分けたりもできるだろうに……。


 が、今回に関して言えば現実世界でこういったことをする相手がいないプレイヤーを救済する為、という意味合いもあるかもしれないので、リアリティを重視するのは正しい判断なのかもしれない。


 ちなみにアルカのクラン【聖なる漆黒】の皆は友達と初詣に行っているようだ。


「運試しか……面白い!」


 特に倒すべき敵もいなければ、目標もなかったので、運試しをすることにしたようだ。

 アルカは列に並ぶ。

 幸い、列は複数できているが、それでも長い。


「皆、現実で初詣行く相手がいないんだな」


 アルカもそうだ。


(極、クロー……俺は少し寂しいぞ)


 と、そんなことを考え列に並ぶと体を軽く叩かれた。


「あ、すみません」


 アルカは首を後ろに向け、軽くお辞儀をした。

 するとそこには見知った顔が2つ。


「アルカさん、奇遇ですねぇ!」

「ミサキさん、いきなり叩いたらビックリしてしまわれますよ?」


 ミサキとジルコであった。


「ミサキちゃんとジルコちゃん!? どうしてここに!?」


 ミサキとは、アルカがGWOで初めて戦闘を行った相手である。

 その後も色々あり、何度もアルカと戦っている。

 Vtuberもやっており、以前は事務所に所属していたのだが、今はフリーVtuberだ。


「いやぁ、ジルコさんに誘われましてねぇ。仕方なく一緒に来たんですよ」

「相変わらず生意気ですわね。美少女コンテスト以前は健気でしたのに」

「あれは仮の私です! 今の私が本当の私なのですよぉ!」


 ミサキはドヤ顔で言い放った。


「というか、アルカさん、やりますか?」

「いや、今日は遠慮しておこうかな」

「つまんないですねぇ」


 ミサキは少しムッとした表情をした後、「やれやれ」とでも言いたげな表情をした。


「まったく、ミサキさんは本当に戦いが好きですわね」

「まだアルカさんには勝ったことがありませんからね。リベンジしたいんですよ」

「ま、それはワタクシも同じですわ。なんてたって、ワタクシはアルカさんのライバルですからね!」

「それを言ったら私もですよ!」


 2人共、アルカのライバルを自称している。

 アルカもライバルだとは思っているには思っている。


「とりあえず、俺は今日おみくじを引きに来たんだけど、2人もそうか?」

「そうですの! 、絶対に大吉を引いてみせますの!」

「やる気満々だな!」

「ええ! ここのおみくじはかなり当たりますからね!」

「そうなのか?」

「知らないんですの!?」


 ジルコはジト目で、ひそひそ話をする。


「あくまで噂ですが……ここのおみくじ、マジで当たるっぽいんですわ」

「同じ内容を2回言う程当たるのか?」

「おそらく、ここに並んでいる人の中にはそれ目的の方も多いと思いますわ」

「そこまでなのか……」


 ジルコはひそひそ話を終了した。

 そして、アルカは疑問があったので、質問する。


「1つ訊いていいか?」

「なんですの?」

「当たったって、どんな感じで当たったんだ?」

「う~ん、新しい友達ができたり彼女ができたり、美味しい物を食べられたり……色々噂は聞いていますわ」

「おみくじのおかげっていう、思い込みのような気も……」

「まぁ、ぶっちゃけそういう面もあると思いますわ。けど、無料ならやらない手はないですわ」

「確かにそうだ!」


 無料ならばやらない手はない。

 そう考えているプレイヤーがほとんどであろう。


「アルカさーん、おみくじの話もいいですけど、私達の浴衣姿を見て感想もなしですかぁ?」


 アルカはあまり気にしていないようだったが、2人とも浴衣装備をしている。


「似合っていると思うぞ! いくら課金したんだ?」


「課金はしてませんよ。正月イベント中、はじまりの街で対象商品を購入してポイントを貯めると貰えるんです。比較的簡単にポイントは貯まりましたよ。というか! 反応薄いですねぇ!」


「薄いか?」


「薄いですよぉ! アルカさんの中の人は男だと、前に考察動画があげられてましたが、もしや女性ですか!?」


「えっと、男だよ?」


「そうなんですか!? だとしたら、そんなんじゃ、モテませんよ?」


「俺はそういうのは別に……」


「草食系って奴ですかぁ!? 全く最近の若いのは!」


 ミサキは学生なので、実際はアルカより、はるかに年下である。

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