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248.食べ物で遊んではいけません

 アルカのマイホームエリアに3人は集合する。


「へぇ、こんなこともできるのね!」

「俺はマイホームを結構カスタマイズしてるからな」


 マイホームエリアを拡張していくと、時間帯を変更することができる。

 例えば、現実時間では昼でも夜のように暗くする、といったことが可能だ。

 現在、その機能を使用し、夜を演出している。


 そして、切った木を燃やし、キャンプファイヤーのように3人で囲む。

 3人にしては大規模過ぎたかもしれない。


「じゃあ、俺達だけの早めのクリスマス! カンパイと行こうぜ!」


 3人はワイングラスを手に持った。


「「「カンパイ!!」」」


 3人は、ワイングラスに入ったぶどうジュースを飲む。


「美味しいでござる! 相変わらず凄い再現度でござるな!」

「だろ? 前にも説明したけど、これは現実世界の物をデータ化する技術を使って」

「このお肉も美味しいでござる!」


 アルカの話よりも、目の前の肉に興味津々な極であった。


「マシュマロソード!! 極! 勝負よ!!」


 クローはマシュマロを剣と同じくらいの長さの串に刺し、それを火で燃やした。

 マシュマロがよく燃えている。

 2本あるので、その内の1本を極に投げる。

 極はそれをキャッチすると、ニヤリとする。


「望む所でござる!」


 互いがマシュマロソードを構える。


 先に走り出したのは極だ。


「マシュマロ斬り!!」


 極がクローの顔面にそれを叩き付けようとしたが、それはクローの持つマシュマロソードにより、防がれる。


「やるでござるな!」


 極の普段の武器は刀、それに対しクローは槍。

 極の方が有利だが、クローの反射神経により、互角な戦いを繰り広げる。

 そして、しばらく遊んでいると、火が消える。


「引き分けでござるか……」


 互いの装備や顔の至る所に溶けたマシュマロが付着していた。


「まだよ! ここから挽回するわ! 挽回ッ!!」


 クローは溶けたマシュマロを再び炎で燃やした。


「これぞマシュマロソードの真の姿! メルトマシュマロソードよ!!」


 その時、アルカが2人に言う。


「おい! 食べ物で遊ぶなよ!」

「今更!?」


 2人は流石にやり過ぎたかと感じたのか、アルカの隣に座り、普通に食べ始めた。


「食べてばっかりだと飽きるわね」


「好きなアニメの話でもするか?」


「アルカってアニメ見るの?」


「まぁな。とは言っても見るのは昔放送してたアニメとか、その続編とかだな。最近はそういうのも多いし」


「へぇ、私は最新のアニメを見てるわ! ほら、私って流行に乗れる女だから?」


「昔放送していたアニメを見ると、その時は現実を忘れることができるからな……現実逃避は最高だ……このゲームをしている時もそうだ……いっそのこと、ずっとここにこもってたい……というか、起きてる時間のほとんどが苦痛だ……」


「え? 何? 病んでるの? 引くわー」


「俺の夢は、大人にならないことだった……」


「何急に語り出してんの!? え? 酔ってるの? ぶどうジュースでしょ? ほら、起きる起きる!」


 クローはアルカを軽くビンタした。


「ぐあっ!? 俺は一体何を……?」

「寝ぼけてたのね? ったく! そんなに現実逃避がしたいの?」

「え? まぁな! 正直リアルの世界はあんまり面白くないからなぁ」

「友達は?」

「極しかいないぜ!」

「そ、そう」


 極が言う。


「そんなに辛いんだったら、いっそのこと拙者達の世界に来たらどうでござるか?」

「え? そんなことができるのか!?」

「あ……ごめんでござる。あまり考えないで言ってしまったでござる……」


 極は「しまった」といった感じの表情をすると、悪いと思ったのかションボリした。


「ははっ! そんなに心配するなよ! 俺はメンタル最強だからな! 俺が1度でも弱音をはいたことがあったか?」


 2人はアルカの問いには答えなかった。


「なんか気まずいわね! えーと……あっ! そうだ! 私の将来の夢でも聞いてくれない?」

「夢?」


 先程のアルカのかつての将来の夢を聞いて、とっさにこの話題を思い付いたのであった。


「私の夢はね! 実はあんたのかつての夢に似てるの!」

「あれ? 俺さっき夢のこととか言ってたのか?」

「かつての将来の夢を語ろうとしてたわ! で、私の夢は時を支配することよ! 時を支配して一生楽しい時間を過ごすの!」


 一見ネタっぽく聞こえるが、本心である。


「それは……それはいい夢だな!! 凄くいい!! 俺は全力で応援するぜ!!」

「ありがと! そういえば、極の将来の夢は?」


 極がちょっと困った表情で答える。


「まだ決まってないでござる」


「まだ決まってないの!? 来年は中3よ!? もっと真面目に進路を考えないと私のライバルとして釣り合わないわよ!」


「あっ、でも」


「何よ?」


「最近、VRゲームの開発をしたいなと思うようになったでござる。拙者達の世界にはまだこんな技術ないでござるから」


「いいじゃない! 夢はでっかくよ!」


「後……何というかここまで来ると、何百年かかるか分からないでござるが、色んな平行世界の人がアクセスできるVRゲームを開発したいでござる。今こうやって集まっているように、色んな世界の人達が1つのゲームを遊ぶって、絶対に楽しいに決まってるでござる! 非現実的で申し訳ないでござる……」


「はぁ……」


 クローはため息をついた。


「クロー殿……?」

「凄くいいじゃない! 堂々と胸を張って皆に言えるいい夢じゃない! それにきっと実現するわ! だって、誰の陰謀か奇跡か分からないけど、今こうやって実現してるんだから! 奇跡は起こるわ! 何度でも!」


 アルカはニコリと笑う。


「そうだぞ! 恥ずかしがる必要はないぞ!」

「クロー殿……アルカ殿……ありがとうでござる!!」


 互いの夢を話し合い、とてもいい笑顔で宴を続ける3人であった。


「あっ! 流れ星でござる!!」

「皆! 願いを言うぞ!!」

「間に合わないわ!! 撃ち落としなさいよ!!」


 こうして、明るい雰囲気で宴は続き、やがて終わりを迎えた。

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