244.vsキメラ
「うおおおおおおおおおおお！！」
「はああああああああああああ！！」
空中でアルカとキメラがぶつかっては離れ、ぶつかっては離れを繰り返していた。
キメラはヒートスカイフォームへとフォームチェンジしている。
「キメラちゃん！ 流石ゲーマーを自称するだけのことはあるな！」
「そっちこそ、ドラゴンキングよりよっぽど凶悪そうなドラゴンに見えますよっ！」
2人共、とても楽しそうにぶつかっていた。
「ありがとう！ 誉め言葉として受け取っておくぜ！」
「誉め言葉ですからねっ！」
キメラはフォームチェンジを解除し、通常の【マジカルチェンジ】を使用した際の姿へと戻る。
「アルカさん相手にぶつかり合うのは得策じゃないですからね。それにしてもアルカさんには、ほとんどのスキルを把握されているのが痛いですね」
「ごめんな！」
ドラゴンキング戦、キメラを装備した際に、キメラのスキルが使えるようになった。
その際、全てのスキルを見てしまったのだ。
「ほとんどのスキルは……アルカさんに把握されています！！ ほとんどはね！！」
「まさか、あの後新スキルを手に入れたのか！？」
「ええ！ その通りです！！」
ドラゴンキングを倒し、レベルアップを果たし、その際に新たなスキルを手に入れた。
「【デステニーダイス】！！ 予想する目は“１”！！」
キメラの目の前に自らの体の大きさ程のサイコロが出現する。
そして、それを投げる。
コロコロと転がり、やがて止まる。
「見事、私は１を出しましたよ」
出目は１だ。
何が起こるのだろうか？
「何が起こるんだ？」
「出目を当てることに成功した場合、その目に応じた効果を取得できます！ 1の場合は、相手の攻撃が何一つ当たらなくなります！」
「そんなのありかよ！？」
（まぁ、このスキルには致命的な弱点があるネタスキルですけどね）
「【スターブラスト】！！」
両手をＬ字にし、キメラは星型の弾丸を次々と放つ。
光属性の攻撃なので、アルカには大ダメージだ。
「くっそ！」
アルカがやけくそに攻撃を放つが攻撃が当たらない。
「なんで当たらないんだよ！」
「そういう効果ですからね！ あっ……」
アルカの放った【爆炎】がサイコロにヒットし、爆発後消滅する。
「し、しまった！！」
「！！ そういうことか！！」
アルカはキメラに攻撃を放つ。
「【サンダーボール】！！」
「ぐあっ！」
弱点、それはサイコロを破壊されてしまうと効果が切れてしまう点だ。
ちなみにサイコロの耐久値はかなり低いので、レベル１の平凡なアバターでも破壊できる程だ。
「体の自由が……！」
サンダーボールは威力は低いが、一定時間相手を麻痺させてしまう効果がある。
「これでトドメだ！！」
「それは……どうでしょう！！」
キメラはスキル【ネクストチェンジ】を発動させる。
1ランク上へと変身するスキルだ。
「【ネクストチェンジ】は連続で発動できません！ こういう時の為に取っておいたんですよ！！」
キメラの麻痺は解除されており、自由に動き回り、アルカの攻撃をかわす。
「なん……だと……？」
「【ネクストチェンジ】や【フォームチェンジ】には隠された効果がありましてね。変身の際、自らの行動が封じられていた場合、それを解除させます！」
「そんなのありかよ！」
「ありです！ スターブラスト！！」
星型の弾丸がアルカを襲う。
「これは私が勝っちゃうかもしれませんね！」
キメラが勝ち誇った笑みをアルカに向ける。
だが、それこそがキメラの弱点だ。
「【スピリットコントロール】！！」
かなり久々に使用したスキル、【スピリットコントロール】。
ボス以外の自分よりレベルが上か下の相手にのみ、発動が許されているスキルである。
今まではアップデート前は、両者共にレベルがカンストしていた為、通用しないスキルであったが、今はそうではない。
「体がっ！」
このスキルは使用後10秒間、相手のコントロールを得るが、その分自分も行動不能となってしまう致命的な弱点がある。
アルカはキメラの変身を解除させる。
「くっ！」
そして、そのままアルカの体に向けて全力疾走させた。
「超至近距離【爆炎】！！」
至近距離でスキル攻撃を食らうキメラ。
変身前の彼女はとても弱いアバターの為、そのＨＰを削り切ることはアルカにとって容易であった。
キメラは吹き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がる。
「負けてしまいました……」
アルカはキメラを見下ろし、言う。
「楽しかったぜ、魔法少女キメラちゃん！」
そして、手を差し述べる。
「負けてしまいました……悔しいです……けど！ 楽しかったからまぁいいですかね！！」
キメラはアルカの手を取り立ち上がる。
「お互い楽しかったって訳か」
「そうですね！ でも、安心しました」
「何だが？」
「私もアルカさんの真の仲間なんだなって！ 拳を交えてそれが分かりました！」
「元々仲間だろ？」
「いや、私だけ平凡ですから……。会長は頭が良いですし、極ちゃんとクローちゃんとミーナちゃんはなんだか言葉では言い表せないんですが、凄みを感じます。なので、ちょっと場違い感を感じていましたというかなんといいますか……」
（極とクローは西暦っていう世界からのアクセス、ミーナはファンタジーな世界からの転生？ 転移？ だからな。それを考えるとキメラちゃんは相当鋭いな）
アルカは言う。
「キメラちゃんはゲームが純粋に好きだ。おそらく俺達のクランの中の誰よりもな！」
「そう、ですよね！！ なんだか変な心配してました！ そうです！ 私はゲーマーです！」
「それでこそ、キメラちゃんだ！」
「これからも、私達6人……それと、ミルちゃんも加えた7人で仲良くやっていきましょう！」
「そうだな！」
これから先も、アルカとその仲間やライバル達のプレイは続く。
助け合い、競い合う。
時には意見がすれ違ってしまうこともあるかもしれない。
けど、サービスが終了するその時まで、きっとアルカ達はこのゲームをやめないだろう。
きっと……。
