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243.平和が訪れた

 ドラゴンキングのHPを無事に削り切ったアルカ。

 元の姿に戻った後、キメラとの合体を解除する。


「ほとんどゴリ押しだったな」

「そうですね。でもいいじゃないですか! 勝ったんですから!」


 2人が話していると、ミルが近寄って来る。


「やりましたね! ボス撃破です!」


 ミルが喜んでいると、ドラゴンキングから、数えきれないほどの宝玉が排出され、それらが砕ける。


「ぐ……ここは……? 俺はなにを……?」


 全ての宝玉が排出されたようで、ドラゴンキングが起き上がる。


「そうか……俺は宝玉を取り込み過ぎ、我を失ってしまっていたのか」


 自動で会話が進む。

 ここから先、そこそこ長い説明的口調が続くので割愛するが、要するに宝玉の力が身体から抜けきったのでこれからは優しい皆のリーダーとしてやっていくとのことであった。


「終わったみたいですね」


 キメラが達成感溢れる表情で腕を広げた。


「最後の話が長かったけどな」

「それにしても、今回のシナリオは久しぶりに冒険できて楽しかったです。ストーリーに力を入れているって言われていた割には結構シンプルなストーリーでしたけどね」

「ははっ、確かにそうだな」


 2人は要塞から出る。


「アルカ殿ー!!」


 極やその他のクランメンバーが出迎えてくれた。


「アルカ君、キメラ君、おめでとう。無事に倒せたようだね。雲の色も明るくなったよ」


 カノンが空を指差す。


「おお! 平和になったってことだな!」

「ストーリークリアってことみたいです!」


 キメラはメニュー画面を確認すると、メインシナリオはクリアした扱いとなっていた。


「なんだかあっと言う間だったわね」


 クローがやれやれ、とでも言いたげな表情で言った。

 本来であれば、ドラゴン力を高める際に依頼を多くこなさなくてはならなかったので、それもボリューム不足と感じる理由に一役買っていた。


「さて、これからどうする?」


 アルカが皆に聞いたが、人それぞれであった。

 とりあえず散策したい者、レベルアップを望む者。

 実に様々である。


 ということで一旦解散ということにした。


 そんな中、キメラはこの場に残る。


「キメラちゃんは行かないのか?」

「え、えと……私アルカさんにどうしても言いたいことがあって……」

「ま、まさか!! 愛の告白!?」

「それは違います」


 あっさりと否定された。


「じゃあ一体……?」


 キメラが言う。


「私と、戦ってください!!」


 戦いの申し出であった。


「た、戦う!? キメラちゃんと!?」

「だ、駄目ですか……?」

「いや、いいけど。俺に勝ってもいいことないぜ?」

「なんというか……コミュニケーションの一環です。ほら! 拳で語り合うって奴です!」

「なるほど、そういうことか! ……はっ! まさか、照れ隠し!!」

「? いえ、そう言う訳では……ただ」

「ただ?」

「なんだか、こういうことって出来るうちにやっておきたいんです。ネット上の関係です。明日アルカさんがGWOをやめてしまうかもしれませんし、逆に私が何らかの事情でやめてしまうかもしれません。それが大きな理由です」


 インターネットではよくあることだ。

 自分は一生ものの友達と思っていたが、相手はただの喋り相手くらいしか思っておらず、気が付かない内に離れてしまう。

 キメラはそれを恐れている。

 ただ、ゲーマーとしてアルカに勝ちたいという意味合いもあるのだが。


「そうか……でもそれだったら今までもそういうチャンスがあったよな? 何か最近、心境の変化でもあったのか?」

「……笑わないでくださいね?」

「ああ。ただ、笑わせようとしていた場合は笑っちゃうけどな」


 キメラが理由を言う。


「夢を見るんです」

「夢?」

「はい。とてもとてもリアルな夢です」

「どんな夢なんだ?」

「この世界が消える夢です」

「えっと、GWOのサービスが終了する夢ってことか? まぁ、永遠にサービスが続くなんてことはありえないだろうけど」

「そういう訳では無くてですね……私達が生きている現実世界が消える夢です」

「世界の滅亡ね」


 アルカも中学生の頃はよくそういう妄想をしていたものだと、昔を懐かしんでいた。


「滅亡の原因はなんなんだ?」

「分かりません。ただ、次々と消える訳じゃなくて、ゲームの電源を切るみたいにいきなり消えるんです。それが怖くて怖くて……」

「確かにリアルな夢ってのは怖い。俺もその気持ちは分かる」

「笑わないんですか?」

「笑うなって言われたからな。それに俺だって怖い夢を見る。起きた時に汗がびっしょりになる程に怖い時もある。だから、俺にもその気持ちは分かる。けど、その心配は無用だと思うぜ? もし、世界が滅亡しそうになったのなら……俺がその危機を救ってやるから! ……なんてな!」


 アルカは少し格好をつけて答えた。

 実際に滅亡の危機となった場合、1人の人間がどうにかできる問題でもないのだが。


「ありがとうございます。なんだか他の人に話せて安心しました。会長に話すと絶対笑われちゃいますからね」

「確かに!」


 キメラはすっきりとした表情で言う。


「話を聞いてくれて、ありがとうございます! では、改めてお願いします。アルカさん、私と戦ってくれませんか?」

「ああ! 望むところだぜ!」


 アルカとキメラは闘技場へと移動した。

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