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239.世界一ラッキーな女の子?

 金曜日の夜。

 仕事終わりにゲーム内で、とあるプライヤーと出会う約束をしていた。

 その約束通りアルカは、マナカというプレイヤーとマイホームで向かい合っていた。


「運営さん……いえ、マナカさん。今日はありがとうございます」

「ユーザーが困っていれば解決する。それが運営のつとめだからな」


 マナカはユーザーを非常に大切にしている。

 それもあり、仕事が忙しい中、アルカの呼びかけに応じてくれたのだ。


「それでも、ありがとうございます!」

「そんなに礼を言われると、こちらとしても嬉しい。で、一体何があったんだ?」

「実は……」


 アルカは店員について話した。

 あくまで仮説ですが、と付け加えて。


「そんなNPCを配置した覚えはないのだが」


 マナカは顎に手を当て考える。


「そもそも、本人がそう言っていた訳じゃないんだろ?」


「あ、そういえばまだ本人には聞いてないんですよね。なんだか聞きづらくて」


「だったらそうだとも限らないだろ。おまけにケモ耳喫茶のNPCは、ほとんど俺がプログラムしているんだ。そんな残酷なNPCを作る訳ないだろ」


「他に担当した方はいないんですか?」


「いるが……そのようなタイプのAIは誰も使用権限を有していない。有しているのはブレイドアロー社の社長くらいのものだが、あの方がそんなことをする訳がない」


 ブレイドアロー社の社長。

 全てが謎に包まれている存在だ。

 だが、ブレイドアロー社の社長は、VRの母とも呼べる存在だ。


「もし、やっていたとしたら、法律とか抜きにして問題ですよね」

「確かにそうだが。そんなことする訳がない。あの方は優しく、偉大なお方だからな」


 法律違反ではないが、倫理的に問題である。


「何が原因か、それとも君達の勘違いか。それは定かではないが……要するにNPCの記憶データを保存できればいいんだろ?」


「!!……そうです!!」


「それならば、可能だ」


「本当ですか!!」


「ああ。けど、俺と君の関係はあくまで運営とユーザー。ここで俺が特別な処置をしてしまうのは運営として良くないのも事実」


「そ、そんな……」


 アルカはがっくりと肩を落とす。

 そんなアルカに対し、マナカが言う。


「これは独り言なんだが、実は今回の大型アップデートで実装された新システムにショップシステムってのがあってだな。そこでNPCを雇えるようにしてあるんだったな確か。そのシステムを使用すればNPCの記憶が保持されたようなされなかったような……。あっでも、ショップを建てるには、ショップチケットっていう激レアアイテムが必要なんだが、どこで手に入ったかな? 確か……」


 独り言の途中でアルカが口を挟む。


「独り言はそこまでです」


 アルカはスクリーンショットを目の前に表示させる。

 ケモ耳喫茶内にて、キメラがショップチケットを持ってピースしている写真であった。


「も、もう手に入れたのか!?」

「俺じゃありませんけどね」

「そうか……もうちょっと確立を上げようかと思っていたが、その必要は無さそうだ」

「俺達の為にですか?」

「全ユーザーの為にだ」


 アルカとマナカはその後、軽い挨拶をかわし、マナカはアルカのマイホームから出ていった。


「ははっ、キメラちゃんはラッキーガールだな」


 アルカはログアウトし、次の日に備える。


 そして、次の日。


「やぁ、ごきげんよう!」

「アルカさん!?」


 集合時間の30分前にクランホームに来ていたアルカ。

 デカい椅子に座り、ココアを味わっていた。

 あまりに早かったので、2番目に来たキメラは驚いた。


「気合い入れて早めに来ちまったぜ」

「なんだかご機嫌ですね」

「ああ! なんてったて店員の記憶を保持しておける方法が見つかったからな!」

「えっ!? 本当ですか!?」


 アルカはマナカから聞いた話をそのままキメラに伝える。


「まさかこのチケットがこんな形で役に立つとは思いもしませんでした!」

「俺もだよ」


 一体このショップシステムがどのようなものかは詳しく知らない2人だったが、嬉しそうに笑う。


「おはよう」


 次に来たのはカノン。


「2人とも、解決策を見つけたようだね」


 カノンは2人の表情を見て察した。


「流石会長! 鋭いです! いやぁ、私って世界一ラッキーな女ですから? こうなるのも運命として決まっていたに決まってますよ~」

「はっはっは! 調子に乗ってるね!」


 カノンはキメラに対し、笑いを飛ばした。


 そして集合時間の9時。

 皆がクランホームへと集合した。


 アルカは皆に全てを話した。

 皆最初は驚いたが、カノンの辻褄の合う説明で納得してくれたようだ。


「そして! 今の話の通り、キメラちゃんの持つショップチケットによって! この問題は解決に向うこととなる! ということで、キメラちゃん。早速頼む」

「はい!」


 キメラはショップチケットを使用した。

 すると、色々と入力する画面が出てきた。


「何屋さんにしましょうか?」


 今回の目的はあくまでNPCの記憶保持だったので、深く決めずにチケットを使用してしまった。


「ケモ耳喫茶から引き抜くんだから、喫茶店じゃないか?」

「そ、そんな簡単に決めていいんですかね……?」

「売り物は自由だからいいんじゃないか?」


 他のメンバーも特に反対しなかったので、キメラは喫茶店を選択した。


「これで準備完了みたいです! 簡単ですね」


『第2層の砂漠エリアにショップを建てました』


 キメラの目の前にこのような表示が出現した。

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