227.巨大ロボと戦闘
アルカ、キメラ、カノンの3人は土のダンジョンの試練をクリアし、2個目の宝玉、エメラルドを手に入れた。
そして、今アルカ達の目の前にあるのは電気のダンジョン。
入り口は見えない壁で遮られているが、アルカがそれに触れると、脳内に声が響く。
『トランススキルの所持を確認。アルカさん、アルカさんと同クランメンバーの通行を許可します』
見えない壁は消滅した。
「おっ、ジルコちゃんの言う通りだったな」
「見えない壁が消えましたね。ありがとうございます」
これで無事に電気のダンジョンに入れるというものだ。
「準備はいいか?」
「はい! 大丈夫です」
「まぁ、ボチボチ」
準備が完了したようなので、2人を連れて電気のダンジョンへと入る。
ダンジョン内は発電所のような所だが、人一人もいない。
代わりに機械系のモンスターが徘徊している。
「無機質って感じですね」
「そうだな。カノンちゃんはこういうの好きそうだ」
ロボット好きのカノンはこのようなメカメカしいものが好きそうだ。
実際に楽しそうな表情で辺りをキョロキョロしている。
「こういうちょっとアングラな施設はワクワクするね。電気の精霊は一体どんなんだろうね」
機械系のモンスターを倒しながら、奥地へと進む。
徘徊モンスターはそこまで強く無いので、楽々進む事ができた。
「よく来たね!」
最奥まで辿り着くと電気の精霊が出迎えた。
「私の名前はバチコ! どうだったかな? 私の作品は!!」
「作品?」
「そう! ここに来るまでに戦ったモンスター達は私が作ったんだよ!」
ここに来るまでに戦闘した機械系のモンスターは全て電気の精霊、バチコが作成したものらしかった。
「バチコ君、君もロボットが好きなんだね。私もだよ」
「そうなんだ! 奇遇だね! それにしてもここまで来たって事は試練を受けに来たって事だよね?」
「そうだね。私とアルカ君、キメラ君の3人で試練に挑むつもりだよ」
「そっかぁ、分かった! 私の試練はとってもシンプル!」
バチコが指パッチンをすると、巨大な人型のロボが現れる。
「私の自信作と戦って勝てたら宝玉を渡してあげる!」
「面白ぇ!」
アルカは拳を握りしめた。
「燃える展開だね。アルカ君、キメラ君、彼女の機体をスクラップにするとしようではないか。出番だ! サイバーレックス!」
カノンの二足歩行の恐竜型ロボ、サイバーレックスが召喚された。
大きさはアルカ程なので、巨大ロボとプロレスをし合う体格は持ち合わせてはいない。
「変身ッ!!」
キメラは走りながら、【マジカルチェンジ】で魔法少女形態へと変身した。
「ゴゴゴ」
巨大ロボは銃を構え、そこから電気の塊を発射してきた。
端から徐々に撃ってくるだけなので、かわすのは容易だ。
「【爆炎】!!」
アルカの口から火球が飛び、敵の機体にヒットすると火球が爆発する。
「ゴゴォッ!!」
機体はよろけるが、すぐに体制を立て直し、両手をあげる。
そして、全身に電気をまとう。
「近付くのは危険だな」
3人共遠距離攻撃が可能なので、遠距離から引き続きスキルを使用し攻撃を続ける。
しかし、敵のこの動作は、次の攻撃の準備運動に過ぎなかった。
「な、何ですか!?」
機体が両手を地面に置くと、一定範囲の地面全体に電流が広がる。
「まずいっ!」
アルカは飛翔、キメラは自力で浮ける範囲まで浮き、回避する。
「会長―!!」
カノンのサイバーレックスは飛行手段を持たない。
と思われたが。
「私なら大丈夫だ」
サイバーレックスの背に乗り、カノンが飛んできた。
どうやらジェットエンジンのような物が備わっているようで、滞空時間は長くはないが、飛行が可能のようだ。
「ゴゴゴ!!」
だが、安心はできない。
今度は空中のあらゆる範囲に電流を飛ばして来た。
「くぅ……っ!!」
キメラは攻撃を食らってしまい、地面へと叩き付けられる。
更には麻痺状態となってしまい、上手いこと身動きが取れないでいる。
「キメラちゃん!」
アルカはキメラの元へと急ぐ。
「アルカ君! 君まで被弾してしまうぞ! 敵は弱っているキメラ君を狙っている! その隙に私達で攻撃を食らわせよう!」
「リスポーン地点まで遠いからな。ここでキメラちゃんが倒れたら時間の関係上、闇のダンジョンを2人で攻略する事になりかねないぜ!」
アルカはキメラを口でくわえ、再び空へと避難する。
「随分と無茶をするね」
カノンはキメラにアイテムを使用し、麻痺状態を回復させる。
「あ、ありがとうございます! すみません」
「気にするな。場所が悪かったら俺も被弾していただろうからな」
キメラは力強く、嬉しそうな表情をする。
「……それでもありがとうございます! よし! 本当はもっと後に披露する予定でしたが、新スキル見せちゃいますよ! 【フォームチェンジ】!!」
キメラはスキルを発動させた。
赤を基調としたプロテクトに包まれ、背中には深紅の翼が生え、その姿はどこか不死鳥を連想させるかのようなものへと変化した。
「これが魔法少女キメラの新たな力! ヒートスカイフォームです!!」
「あまり魔法少女感はないけど、かっこいいぞ!」
「ありがとうございます!!」
キメラはその翼で自由自在に飛び回る。
「【ヒートナックル】!!」
特殊攻撃力が下がり、物理攻撃力が代わりに大きく上がるのがこの形態の特徴の1つだ。
「ゴゴーッ!!」
連続で炎の拳が叩き込まれる。
アルカとカノンのサイバーレックスも攻撃を続ける。
「ゴゴちゃん!! 頑張って!!」
戦闘に参加していないバチコが叫んだ。
ゴゴちゃんは、敵の機体の名前らしい。
「悪いな、バチコちゃん。決めさせて貰うぜ!!」
「くっ……あの飛び回ってるハエが邪魔ね! ゴゴちゃん! これ使え!!」
バチコは黄色い宝玉を握りしめる。
そしてそれに精神を移すと、ゴゴちゃんの額に向かっていき、装着された。
バチコの肉体はその場にドサリと倒れた。
「どうよ! 今の私とゴゴちゃんは一心同体!! そしてスキル発動!! 【超アンチトランス】!! 相手のトランススキルによって変形した状態を解除し、そのプレイヤーのHPを0とする!!」
キメラの炎の拳が再びヒットする。
「残念だったわね! 【超アンチトランス】の発動条件は触れること!! これであんたはおしまいよ!」
バキッ!!
キメラは額の宝玉を思いきりぶん殴った。
「なっ……なぜ!? 何でトランススキルが解除されないの!?」
「【マジカルチェンジ】、【フォームチェンジ】はトランススキルに分類されません。よってそのスキルは無効です!!」
「嘘っ!? 変身するスキルだったら、トランススキルじゃないの!?」
その隙に、アルカは【メタルウイング】でゴゴちゃんの右腕を切断する。
「しまった!!」
「【ヴェノムブレイカー】!!」
アルカは頭上へと移動すると、右手をゴゴちゃんの頭上に振り下ろす。
何とかバランスを取ろうとするが、今度はサイバーレックスの光線を左腕に食らい、左腕を切断されてしまう。
そして、バランスを崩し、倒れてしまう。
「トドメです!! 【フェニックスバースト】!!」
キメラの体が燃え上がり、その炎が不死鳥になり叫びをあげる。
そして、倒れているゴゴちゃんに向け、片足キックの体制を取り突っ込んでいく。
「ぎゃあああああああああああああああああああ」
ゴゴちゃんのHPは0となり、爆発し、消滅した。
「や、やりました!」
「やっぱりキメラちゃんやるな!」
「えへへ! 頑張りました!!」
キメラは変身を解除する。
3人はバチコが倒れている場所へと来た。
「し、死んじゃったんですかね!?」
「どうだろうな? けど、このままだと宝玉は手に入らないな」
死んでしまったのだろうか?
3人は心配していたのだが。
「悔しい……」
バチコはムクリと起き上がった。
「生きていたのか!!」
「別に死んでないわよ。はぁ……悔しいけど、約束は約束。はい、これが【トパーズ】よ」
バチコは黄色い宝玉をアルカへ差し出した。
「ありがとう! これで宝玉は3つ目だ」
「へぇ、もうそんなに集めたのね」
「ああ。次は闇のダンジョンへと向かう予定だ」
「闇のダンジョンね……。精々頑張りなさい。あそこの試練は厳しいわよ!」




