226.トランススキル
「えーと、取引っていうのは互いにまだ行ってないダンジョンの場所を教え合おうって事か?」
「その通りですわ! ワタクシあまり攻略情報を見たくないんですわ。ですから、ここで情報交換ができればありがたいですわ」
どちらにとっても損はない取引だ。
「俺はいいけど、2人はどうだ?」
アルカは後ろにいる2人に首をぐりっと向ける。
「私は別に構わないよ」
「私もです。むしろこちらからお願いしたいくらいです!」
キメラもジルコと同じく、あまり攻略見ずにクリアしたいと考えているので、大賛成であった。
「よし、という事で今から土のダンジョンの場所を教える。土のダンジョンはここからこう……」
アルカはジルコに土のダンジョンの場所を伝えた。
「あら? それだけですの?」
「え? 何が?」
「そのダンジョンに入る条件とかはありませんの?」
「条件……?」
土のダンジョンには普通に入れたので、アルカは困惑した。
「もしかして、電気のダンジョンには入る為の条件があるっていうのか?」
「むしろ土のダンジョンには無いんですの?」
「ああ。普通に入れたな」
「むむっ……分かりましたわ!」
ジルコは最初、少し疑ったかのような表情をしたが、最終的に納得したような表情へと変わった。
「ちなみに電気のダンジョンに入るにはどんな条件があるんだ?」
「簡単に言いますと、新要素を獲得していれば入れますわ!」
「新要素……?」
「ええ。その名も【トランススキル】ですわ!」
アルカとジルコは、女神を討伐した際にトランスゲージが溜まると発動が可能な、【女神モード】をいうスキルを得ている。
おそらく大型アップデートに先駆け、実装されたのだろう。
そんな2人しか使用できないシステムであったが、今回の大型アップデートにて正式に実装されたようだ。
「あれか! でも、女神モードが使用できるのって俺とジルコちゃんくらいじゃないのか?」
「別に女神モードじゃなくてもいいんですわ! 今回のアプデで他のプレイヤーもトランススキルが使えるようになっていますわ! とは言っても、それ用のスキルが無いとお話にはなりませんけどね」
「それじゃあ電気のダンジョンに入れるプレイヤーはまだそんなにいなそうだな」
「そうでもありませんわ」
「どういう事だ?」
トランススキルを簡単に入手する方法があるというのだろうか?
「実はケモノタウンでトランススキルについてのチュートリアルを受けますと【イケイケモード】が手に入りますの。とは言っても効果自体は10秒間攻撃力を1.1倍するだけのものですので対人戦ではあまり役に立ちそうもありませんわ」
どうやら本当にチュートリアルのおまけのようだ。
対人戦所かボス戦でもあまり活躍の見込みが無さそうなスキルに思える。
「確かにあまり強くはないな。どっちにしろ、トランススキルを持っていれば入れるんだろ?」
「そうですわね。アルカさんでしたら心配は要らないかと。所で……」
ジルコはキメラに視線を向ける。
「確かキメラさんは変身するスキルを持っていましたわよね。あれに関しては仕様変更とか無いんですの?」
魔法少女に変身するスキル【マジカルチェンジ】の事を言っているのだろう。
「今の所は普通のスキルしか覚えていませんね。そもそも今回のアプデでトランススキルというものが実装された事自体知りませんでした」
「ふむふむ。仕様変更はありませんのね」
「はい。むしろ変に仕様変更されるよりはありがたいです」
トランススキルを使用する為のトランスゲージを溜めるには条件がある。
戦闘の度にトランスゲージを溜めていてはキメラの場合まともに戦闘ができなくなってしまうので、仕様変更となっていた場合かなりの弱体化を強いられていた事だろう。
「でもトランススキルですか……私も欲しいですね」
「チュートリアルを受けて来たらどうだ?」
「う~ん。折角なんでもうちょっと強そうなのが欲しいですね」
新要素についての話が一区切りつくと、ジルコは電気のダンジョンの場所をアルカに示す。
「あそこをああやってああ行きますと……」
「なるほど」
何やら雲の様子が良くない所に電気のダンジョンはあるらしい。
「でもそこの場所雷なってないか?」
「電気のダンジョンですからね。分かりやすくて丁度いいと思いますわ」
ジルコの言う通り、確かに丁度いい目印なのかもしれない。
「じゃあ、早速出発しましょう! ジルコさん、ありがとうございました!」
「いいって事ですわ! ご健闘を祈りますわ」
キメラはジルコにお礼を言った。
「俺からもありがとう。お互い頑張ろうぜ!」
「そうですわね。負けないでくださいよ?」
「ああ! クリアしてやるぜ!」
ジルコに別れを告げると、アルカはキメラとカノンを乗せて飛翔した。
「雷雲が凄いですね……」
飛翔しているので、このまま進むと雷雲に触れそうである。
「アルカ君。この辺りで下に降りようではないか」
「そうだな。ダメージを食らう危険性がある」
アルカは地面へと降りた。
そしてしばらく進むと……。
「ここが電気のダンジョンか」
電気のダンジョンの入口へと到着した。
しかし、ダンジョンの入り口には見えない壁があった。




