221.キラキラロッド
ミーナの持っている杖、【キラキラロッド】。
この前のイベント、Vクライシスで入手したユニーク武器である。
この杖の内臓スキルが錬金術師であるミーナにピッタリな効果なのだ。
そのスキルの効果は、自らのストレージにあるアイテムを装填し、弾丸のように発射させる事ができるというものだ。
今回のように離れていても援護ができるので、非常に便利である。
ただ、狙いを定める必要がある為、扱いも難しい。
「へぇ、いいわね!」
「えへへ、ありがとうございます☆」
クローに褒められ、ミーナは照れながら喜んだ。
「これから先も頼んだぜ!」
「はい! 精一杯援護しますよ!」
ミーナのスキルの説明が終わると、アルカ達は奥へと進んでいく。
「そういえば、皆今の戦闘でレベルは上がったか?」
「拙者はまだでござるな」
どうやら経験値はあまり美味しく無かったらしい。
「今までがまるでRPGのようにレベルがポンポンと上がっていたからね。レベルを上げるのが難しくなっているのかもしれないね」
カノンが言った。
確かに、今まではレベルが簡単に上がっていた。
「レベル上げも楽しませてくれるって訳か……面白いじゃないか」
「アルカさんレベル上げとか好き何ですか?」
「あんまり好きじゃないけど……皆でゲームプレイをする口実になるからな」
「そんな口実無くても言ってくれればやりますよ?」
「俺はシャイなんだ」
キメラに対し、アルカはこう言ったが、実際は他にもう1つ理由があった。
(学生生活は貴重だからな)
学生、ゲーム以外にもやる事がある。
ゲームをやるとしてももっと一緒にやるべき人がいるだろう。
時間は戻らない。
だから、悔いの無いように時間を使って欲しいというおもいがある。
だが、それと同時に仲間やライバル達ともっと一緒に遊んでいたいとも考えている。
(口実があれば誘おうとしている何て、情けないぜ。俺もいつかは、皆から卒業しないとな)
「どうしたんですか?」
「いや、何か皆に助けられっぱなしだなと思ってな」
「そうですか? さっきの戦闘もアルカさん大活躍だったじゃないですか! あっ、勿論私も頑張りましたけどね!」
「まぁ、そうだな。けど、もっと強くならないとと思ってな、色々と」
「おお! これ以上強くなる気なんですね! 流石です!」
微妙にすれ違っているが、それっぽく話してこの話題を終わりにした。
「またモンスターか!!」
今度はスライムだ。
赤黒い少し大きめのスライムだ。
ブラッドスライムという名前のようだ。
「スラァ!!」
触手を勢いよく伸ばす。
「きゃっ!」
触手がキメラに襲い掛かる。
「させないぜ、【メタルウイング】!!」
だが、触手がキメラに触れる寸前で、アルカが触手を切断した。
「クロー殿!」
同時にクローにも触手が襲い掛かっていたが、刀を使用し極が切断した。
「危なかったでござるな!」
「助かったわ! 七我流!!」
「えーと、リアルネームは恥ずかしいかなって……」
「あっ、私とした事がっ! ごめん!」
クローはブラッドスライムを睨み付けた。
「あの触手野郎に動揺してしまったせいね! 【タイムサプレッション】!!」
スキルを発動させると、時計型の魔法陣が周囲に広がる。
「【ノヴァエクリプス】!!」
クローは黒きオーラを翼とし、空中へ浮遊する。
そして、クローが槍をブラッドスライムへと向けると、周囲が薄暗くなり、槍先が白銀に輝く。
まるで、周囲の光を食らったかのようだ。
「はああああああああああああああ!!」
そのままブラッドスライムの体を貫き、止まっていた時間が動き出すと、ブラッドスライムは爆発し、消滅した。
「ふぅ……まったく、女の子に触手なんて500億年早いのよ!!」
「その時間停止スキルって24時間に一度しか使えなかったような気がするんだけど、ここで使って良かったのか?」
「ええ、私そういうの気にしない主義だから。ゲームで1個しか使えないアイテムも惜しまず使うタイプだわ!」
「いや、そうじゃなくてボス戦とかあるだろ」
「確かにそうだけど、後悔はしてないわ! それに皆でかかればボス何て楽勝よ! さっきのモンスター達も雑魚だったでしょ?」
「確かに、あまり強くはなかったな」
クローはやられそうになったけどな。
とは、言わなかった。
「あれ? ボス部屋ですよ☆」
ミーナが指を指すと、丁寧にも看板にもこの先がボス部屋という意の事が書かれていた。
「推奨レベル80ね。アルカ君、どう思う?」
カノンが答えを分かり切ったかのような表情でアルカにたずねた。
「ここでレベル上げをするのも飽き飽きするぜ! 俺達のチームワークで勝ってやろうぜ!」
「はっはっは! そう言うと思ったよ。それにこのゲームで重要なのはレベルではないからね。アルカ君のアバタースペックと皆の鍛え上げられたプレイングスキルで攻略してやろうではないか」
他の皆も雑魚狩りをするつもりは無いらしく、ボス部屋へと足を踏み入れるのであった。
「何も無いな」
ドーム状の広い空間。
いつものボス部屋といった感じである。
「やぁ!」
真っ白な人間くらいの大きさの精霊が姿を現した。
「ボスか!?」
「うん。私は無属性の精霊ムーク。宜しくね! ここに来たって事は試練を受けるって事で良いんだよね?」
「試練……?」
「そう、試練。無属性の試練は……私とのバトルだよ。勿論、準備は良いよね?」
そう言うと、ムークの体は光り輝き、みるみる大きくなっていった。




