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219.覚えていてね

「へ?」


 てっきり戦闘イベントが起こると思っていた為、思わずポカンとしてしまう。


「だ、駄目ですか?」

「いや、いいけど……正直戦闘イベントが起こると思ってた……うん」

「ここではそういう事は起こりませんよ。安心してください」


 店員はアワアワしながら、戦闘イベントが起こらない事を伝えた。


「そうか。分かった。また来てくださいとか言われた事ないからな」


 非常に嬉しそうだ。

 そんなアルカにキメラがボソッと発言する。


「これ、そういう仕様だと思いますよ」

「分かってるよ」


 こうして、アルカ達はケモ耳喫茶をあとにした。

 その後、ケモノタウンを歩きながら話す。


「結構楽しかったな!」

「何? 女の子と話せて楽しかったの? 現実でもそういうお店行ってたり?」


 クローは意地悪そうな顔でアルカをからかうが。


「いや、俺そういう大人っぽいの何か苦手だし」

「あらそう? からかいがいが無いわね」

「俺はこう見えても書店とかの18禁コーナーにも入った事がない」

「ふぅーん。ま、どうでもいいわ」


 からかってもつまらなかったので、クローは話を切り上げた。


「アルカ君」

「どうした?」


 カノンがアルカに対し、何か言いたげだ。


「さっきの店員さんとの話だけど、何か違和感無かったかな?」

「違和感……? 特に感じなかったけど」

「ならいいけどね。私はちょっと違和感があってね」


 カノンは手を口元に当て考えた。

 一体どのあたりに違和感があったのだろうか?


「会長、考えすぎじゃないですか? ただのNPCですよ?」

「NPCね……キメラ君、このゲームのNPCには確か2通りのタイプがいたよね」

「はい!」


 GWOには2通りのNPCが存在する。

 1つはある程度のパターンが決まっている、某ドラゴンなクエストなどのRPGのようなNPC。


 そしてもう1つは、設定通りにこの世界の住人だと思い込んでいるタイプだ。

 例えば、旧第1層で戦闘した魔王幹部や魔王などがそれにあたる。

 プレイヤーの目的が達成された……即ち、倒された後はその際の記憶が抹消され再び自らの使命を果たそうとする。

 だが、このタイプのNPCはあまり多くない。


「って感じでしたよね!」

「そうだね。まぁ、有名だしね」

「で、それがどうしたんですか?」

「もしもだよ? もし、3パターン目があったのなら……?」

「3パターン目、ですか……。それってどんな……」


 質問の追撃を行おうとするキメラに対し、ツッコミ役の芸人のように頭をビシッと叩く。


「少しは自分で考えなよ、バカチンが」

「痛いですって/// もうっ! 酷いですよ!!」

「はっはっは! ま、考察を楽しむのもゲームの醍醐味ではないのかね?」

「あ、確かにそうですね」


 納得したようで、キメラは急に真顔になった。


「と、というかゲームの住人だと思い込んでいるって、そんなキャラを倒しちゃっていい訳!?」

「た、確かにゲームとはいえ、少し罪悪感があるでござるな」


 西暦組2人の世界にはそこまでのNPCは存在していなかったらしく、少し嫌そうな顔を浮かべた。


「それは心配要らないぞ」


 アルカがフォローに入る。


「そういったNPCには、一定より上の死の恐怖というものが組み込まれていないんだ。確か苦手な人に怒られるくらいの恐怖が最大値だって誰かが言ってたな。まぁゲームの敵キャラって事でダメージを受けた時のリアクションはオーバーに設定されていたりするキャラもいるけどな」

「そ、そうでござるか」

「それに感情に関しても人間と同じような感情を100%再現している訳じゃない。論理的な問題もあるしな」

「あくあまでゲームのキャラって扱いでござるな」

「そういう事だ。それにそういったキャラクターは極少数だ。あまり気にするな」


 極とクローは、ある程度は納得したようで、頷いた。


「色々あるのね……」

「そうでござるな……」


 西暦組に対し、カノンは「ん?」と疑問符を浮かべる。


「他のVRゲームでも実装されているのに知らないとは珍しいね。一時期はニュースにもなったというのに」

「そういえばそうですね。最近のゲームに疎いアルカさんでも知っているくらいですからね」

「何でだろうね?」

「ニュースとかあまり見ないんじゃないですか?」

「でもあれって、学校の授業でも取り上げられてなかったかな?」

「義務では無かったので、取り上げてない学校もあったのかもしれません。前2人は同じ学校に通ってるとか言ってませんでしたっけ? だとしたらその可能性もあるかと!」

「……ふっ! 確かにそうかもね」


 カノンは2人に流し目を向けると鼻で笑った。


「そ、そうなのよ!」

「そ、そうでござる! もっとそういうのは授業で取り上げて貰いたいものでござるな!」

「全くだわ!」


 2人は笑って誤魔化した。


(不味いな)


 アルカはカノンの表情を見て察した。

 極とクローは興味を持たれていると。

 普通にしていれば怪しまれなかったが、どうやら2人は顔に出やすいタイプらしい。


(まぁ、別世界から来たとか自分から話さなければバレないし大丈夫だとは思うけどな)


「あっ! 結構時間経っちゃいましたね! フィールドに出ましょうか!」


 キメラはメニュー画面から時間を確認すると皆に言った。

 全員で揃えるのはこれから先難しくなるかもしれないので、難しい話をするよりも、皆でゲームを楽しみたいと考えている為だ。

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