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217.ケモノタウン

 クランメンバー全員が階層ボスを倒すと、第2層の冒険者ギルドへ各々向かった。

 集合場所として決めておいたようだ。


「皆無事ボスを倒せたみたいだな」

「当然よ! 相手にもならなかったわ!」


 この中で一番プレイを開始したのが遅いクローですら楽々倒せたようであった。

 倒さないと第2層へ行けないという事もあり、あまり強すぎないようにしてあるのだろう。


「見た目のインパクトは中々だったでござる」

「下半身が芋虫に似ていたわ!」


 ブラッディレオといった名前はかっこいいのだが、外見はあまり良いものでは無かった。


「でも皆さんがここまで来られて良かったです! 会長とミーナちゃんも!」


 生産職であるカノンとミーナも協力し、ブラッディレオを倒す事ができたようであった。


「あれなら1人で挑んでも良かったかもしれませんね!」

「そうかな? 私はミーナ君とのタッグが楽しかったから良かったけどね」


 アルカ、極、キメラ、クローは初見かつソロで階層ボスを倒したので、この街の石板に名前が刻まれた。

 カノンとミーナは2人で挑んだので名前は刻まれなかったが、2人共あまり興味ないようで、気にもしていなかった。


「それにしても……」


 アルカは辺りをキョロキョロと見渡す。


「ケモ耳と尻尾着けてる人多くないか?」


 ギルドを見渡すと、ケモ耳と尻尾が目立つNPCが大勢いた。

 中にはプレイヤーもだ。


「それはこの街に秘密があります!」


 キメラが腕を組み、得意げに言った。


「どういう事だ?」

「この街……【ケモノタウン】は獣人の街で、住んでいるNPCの90%が獣人なんです!」

「第1層にはそういうNPCはいなかったな。勿論プレイヤーも……」

「それに関しましてはどうやら新要素らしく、ある程度をストーリーを進めるとケモ耳と尻尾を生やし、アバターを獣人仕様にできるみたいです」

「それによって強さは変わるのか?」

「掲示板の情報によりますと、どうやら強さは変わらないようです。コスプレみたいなものですね。まぁ、ファンタジー世界に獣人ってのは定番ですから獣人アバターにしたいって要望も多かったんじゃないんですか?」

「確かにそれはあるかもしれないな。何でそういうアバターは生成されないんだろうか」


 ランダム生成されるアバターであったが、獣人アバターは見た事が無かった。

 アルカを除いては全員が人間の女性であった。


「不思議ですよね~。あっ、ちなみに獣人になりたいって人いますか?」


 キメラは何となく聞いてみた。


「拙者は侍故却下」

「私も別に今のままでいいわよ? 強くなるなら別だけど」


 なりたい人はいなかった。


「あ、あれ?」


 予想外の反応であった。


「皆さん、あまり乗り気じゃないですね……」

「そういうキメラ君はどうなのかな?」

「私も別に」

「はっはっは! 自分で言っておいてそれだ」


 カノンは爆笑した。


「えーと。とりあえず今からやる事決めないか?」


 アルカは気を取り直して、今日の活動の詳細を決めようとする。


「あっ、そうでした! 時間を無駄にはできませんからね!」


 と、張り切っていると……。


「ちょっといいか?」


 クランの皆にスマイルを向けるプレイヤーが1人いた。

 黒髪ロングで背が高い少女であった。


「え、えーと……」


 キメラはおどおどしてしまう。


「あ、すまない。この姿では初めてだったな。俺はGWOの運営だ。名前は……」


 リアルの名前を名乗ろうとした瞬間、キメラが口を挟む。


「あああああああ!! あの時の真ん中分けの男性ですね!! えっ!? まさかの再開!?」

「ああ、そうだ! よく覚えていてくれたな」


 真ん中分けの男のアバターのようだ。


「本当は贔屓するのも良くないと思って話しかけるか迷ったんだが、あまりにも楽しそうに話しているのを聴いていたら我慢ができなくなった。楽しんでくれて何よりだ」


 とても嬉しそうだ。


「今回のアップデートはかなり頑張ったからな。これで苦労が報われる」

「はい! 運営の方々の頑張りが伝わってきます! これからの冒険が楽しみです!」

「ああ! 楽しんでくれ。敵の強さはおそらく君達が満足するレベルに達していないかもしれないが許してくれ。後ケモノタウンでのお勧め施設はケモ耳喫茶だ。是非行ってみてくれ」

「あ、はい……!」


 なぜ急にお勧めしてきたのかは不明だが、とりあえず返事をしておいた。


「俺はそろそろ行く。これも仕事なんでな」

「お仕事……ですか」

「ああ。じゃあ、また会ったら宜しく頼む」


 そう言うと、去っていった。


「キメラちゃん、また運営の人と話せて良かったな! それにしてもケモ耳喫茶か……。どうする?」


 本来であればフィールドに出てストーリーを進めるべきだが、運営のお勧めだ。

 何かがある……のかもしれない。


「想像するにきっとリアルが男性なプレイヤー向けのお店だわ!」

「そういうのものか?」

「きっとそうよ!」


 クローは勝手に決め付け、少し顔を赤らめた。

 何を想像しているのかは不明だが、あまり行く気はないようだ。


「何を想像しているか分からないけど、このゲームは18禁じゃない。多分普通の喫茶店だと思う」

「そういえばそうだったわね! あ~じゃあ行くわ! 運営のお勧めだったらもしかして強くなれるイベントが発生するかもしれないわ!」

「それはどうだろうか……」


 忘れがちだが、ガールズワールドオンラインはガッチガチの対人ゲーではない。

 そもそもアバターガチャが酷すぎて戦闘バランスが終わっている。

 その為、戦闘関係無しでただのお勧め施設として紹介した可能性も高い。


「ともかく! 行くわよ!」


 クローは立ち上がり皆に言った。


(獣人ですか~懐かしいですねー)


 ミーナはただ1人、獣人に懐かしさを感じていた。

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