214.GWOは優れたゲームである
アルカとキメラは立ち話もあれなので、はじまりの街の喫茶店へと向かった。
「現時点で私が知っている情報をお教えしますね!」
席に座ると、キメラは簡単に説明をする。
現時点でキメラが把握している要素は以下の通りだ。
・今までの層が第1層に全てまとめられた
・第2層では今回追加されたストーリーが楽しめる
・レベルは上限を100に引き上げ
・アバターをカスタマイズし、なんちゃって獣人になれる。ただし第2層のストーリーを途中まで進める必要あり。
・スキルのバランス調整
・新スキルの追加
・メニュー画面に物理的干渉が不可能となった
「こんな感じですね~」
「なるほど、こっちは情報提供できなくて悪いな」
「いえいえ! それでしたら尚の事、情報が共有できて良かったです♪」
キメラはご機嫌なようだ。
「楽しそうだな」
「それはもう! 私ゲーム大好きですから!」
キメラはゲーマーを自称している。
が、何かのゲームの廃人という訳でも、廃課金ユーザーという訳でもない。
正しく、ゲームが大好きな女の子、と言った所だろうか。
「アルカさんはゲーム好きじゃないんですか?」
「学生の頃は沢山やってたけど、今はあんまり……」
携帯ゲーム機でモンスターガールズをプレイするくらいである。
「働き始めるとゲームができなくなるって人の話、たまに聞きますからね……」
「けど、このGWOはいい! 最近はこのゲームのおかげでゲーム熱が復活しそうになってる」
「!! そうですよね!! 私も大好きですこのゲーム!! こう、アバターが身体に馴染むというか何と言うか……とにかく良いんです!!」
「俺は他のVRゲームをやったことが無いんだけど、そんなにいいのか?」
「ええそれはもう! ネットでも評判ですよ! まるで自分自身の身体みたいだって!」
VRゲームはゲーム内に入り込む事のできるゲームだ。
だが、入れると言っても現実世界とは違う体を使用するという事もあり、ゲーム内で体を動かす際にどうしても違和感を感じてしまう。
慣れれば気にならないレベルにはなるのだが、どうしてもゲームをやっている感を拭う事は難しい。
その点GWOは、その欠点を解消している。
リアルの性別に関係なく、GWOの場合、現実世界で自分の体を動かしているのとほぼ変わらない感覚でプレイすることができる。
仮に男性アバターを作成できようものであれば、プレイヤーはもっと多かったことであろう。
「俺の場合他のVRゲームと比較はできないけど、確かに現実世界と変わらないように動かせるな」
「アルカさんの場合はアバターが特殊ですけどね……」
「ドラゴンだからな……ってそうか」
「どうしたんですか?」
アルカはキメラとはじめて出会った時の事を思い出していた。
「最初会った時、他のVRゲームをやらないのには理由があったって言ってたな。もしかして、それが原因か?」
「はい……恥ずかしながら……。私、駄目何です……。他のVRゲームだとアバターが馴染まな過ぎて酔っちゃうんです……」
「酔う? そこまでひどくなるのか?」
「プレイできなくはないんですけど、とても集中できたものではありません。目が悪くないのに度付きの眼鏡をかけている感覚と言ったらいいのでしょうか? とにかく駄目何です……。ま、今はGWOがあるのでそこは助かってます」
「そういう人もいるのか……何かごめん」
「いえ、いいんです。正直アルカさんのクランに入ってからカッコ悪い姿を見せまくって来ましたから。それに比べれば別にどうって事ない秘密ですよ」
「た、確かに……!」
「いや、そこは納得しないでくださいよ!」
キメラは、冗談交じりの突っ込みを入れた。
「というか、正直もっと深刻な事情があるのかと思ってた」
「いやいや、何を想像してたんですか?」
「男性恐怖症だとか」
「えっ? 私ってそんなイメージですか?」
「最初会った時は気弱そうに感じたし。何か触ったら壊れそうなイメージだった」
「そ、そうでしたか?」
「けど、今は違うな。一緒にゲームをプレイしてきて印象が変わって来た! 良い方向に!」
「おお! そうですか! 何だか嬉しいです! やっぱりゲームには人と人の絆を繋げる力がありますね! 私も昔は今より内気だったんですけど、ゲームがきっかけで友達ができましたからね~♪」
しばらく話し、1時間が経過した。
「12時か……。お昼だな」
「あ、何注文します?」
「いや、リアルの話だぜ……」
「あっ! そういう事でしたか! ちなみにアルカさんはお昼何食べるんですか?」
「ホットケーキ」
アルカ達はログアウトをすると、昼食を食べ、再びログインする。
そして、集合場所である【聖なる漆黒】のクランホームへと向かった。
「一番乗り!」
アルカはクランに入った瞬間、そう宣言した。
が、既に何人かいた。
というか、キメラ以外全員いる。
「ごめん。遅くなった」
「はっはっは! まだ集合時間前だよ。気にしないでくれたまえ」
カノンは笑う。
確かにまだ集合時間前だ。
「あれ? キメラちゃんは一緒じゃないの?」
「別に同じ場所でログインしている訳じゃないからね。でも安心してくれたまえ、昔からキメラ君を知っている身から言わせて貰うと、遅刻はほぼした事が無い。夏休みの宿題も最終日に1日で仕上げた事があるくらいだ」
カノンが言うと、その後にキメラが現れた。
「皆さん早いですね! 何かごめんなさいです!」
「ねっ? キメラ君は時間を守るだろう?」




