表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

222/325

213.真ん中分けの男の新たな使命

 大型アップデート日である、11月10日、日曜日。

 その日の昼を食べたら皆で集まり、新しい層を攻略する約束をした。

 時間は13時で、クランホームに集合という事にした。


 一方その頃、運営の1人である真ん中分けの男はというと……。


「んふーふふふふ」


 ニヤニヤとしながらキーボードをカタカタさせていた。

 なぜニヤニヤしているのか?

 それは上司から呼び出された際に、とある事を命じられたからである。

 その時の出来事が以下の通りだ。


『おお! 来てくれたな!』


 緑髪オールバックで紫スーツのタバコを吸っている40代くらいの上司に呼び出された。


『はい……』

『どうした? 浮かない顔をして』

『いえ……自分が何かミスをしたのかと思いまして考えていたのですが、どうも思い付きませんでして……あっ! もしやこの前有給休暇を取ったからですか……?』

『お、落ち着きたまえ! 有給休暇を取るのは別に構わない。それに今回呼び出したのは別に君がミスをしたからではない』

『えっ!? 違うんですか!?』

『違うよ。君に頼みたい事があって呼び出したんだ。おそらく、君が一番適任だと思ってね』

『自分が……適任?』

『ああそうさ。何と言っても君は真面目だ。まぁ、真面目なだけの社員は沢山いる、それに君より有能な社員も沢山いる。だが、私が見ている限り君はGWOというゲームを誰よりも愛していると感じ取れた。それに、プレイヤーの為に日々仕事を頑張っているのも知っている』

『えっ!? ……ま、まぁ……』


 褒められ慣れていない真ん中分けの男は照れながら答えた。


『そんな君に頼みがある。休日が削られてしまうのは申し訳ないのだが、当然その分の給料は払う』

『休日?……一体何をすればいいのですか……?』


 真ん中分けの男は不安になる。

 一体何を頼まれるというのだろうか?


 上司はタバコをオフィスの真っ白な壁に擦り付け、火を消すと、答える。


『君に、GWOのプレイヤーになって貰いたい』


 真ん中分けの男は驚き、目を見開いた。


『お、俺が……!? え、い、いいんですか!?』


 GWO運営は一般プレイヤーとしてのアカウントを取得する事は本来許可されていない。

 デバッグ用の共用アバターが用意されているので、普段はそれを使用していたりする。


『ああ! 今回の大型アップデートはかなりの大改装になる。だから1プレイヤーとして、遊びやすく楽しいゲームになっているのかを調査してもらいたい。後……そこまでGWOを愛している君に純粋にプレイを楽しんで貰い、次のアイデアに繋げて欲しいという目的もあるのだよ』

『……分かりました。是非やらせてください!! 給料も要らないくらいです!!』

『それは駄目だ。だったら君には頼めない』


 上司は厳しそうな表情で答えた。


『申し訳ございません。給料もしっかり頂いて頑張ります!』

『ああ、期待しているぞ』


 このようなやり取りがあったのだ。

 それからはというものの、ログインした際の事を妄想してニヤニヤとしているのだ。

 一体どんなアバターになるのか?

 どんなプレイヤーとの出会いがあるのか?

 それを妄想するとニヤニヤが止まらなかった。







 そしてアップデート日当日。

 アップデートは当日の10時から適応される。

 ちなみに前日は丸1日メンテ中でログインができなかった。


「ここがアプデ後の世界か……」


 集合時間は13時だが、別にそれ以前にログインしても良いとの事だったので、アルカは11時にログインを行った。

 ログイン場所は、はじまりの街の噴水広場であった。


「相変わらずの噴水広場だな。とりあえず、いつも以上に人が多いってのは確かだが……」


 次々と噴水広場へと出現するプレイヤー達。

 皆アップデートを楽しみにしていたらしい。


「あっ! アルカさん!」

「キメラちゃん!」


 アルカを見つけたキメラが駆け寄る。


「アルカさんも集合時間前にログインしてたんですね! やっぱり我慢できませんよね!」

「まぁ、暇だったってのもあるんだけど……」

「そういう事言わないでください! でも、ありがとうございます! ゲーマーとして嬉しく思います! ちなみに今から何かする予定はありますか?」

「とりあえず何が変わったのかを調査しようと思ってな」

「私と同じですね! アップデートしたばかりで情報も少ないですからね!」


 大まかな事はお知らせに書いてあるが、そこに書いてあることが全てでは無い。


「私は既にある程度掲示板等で情報収集を行いましたので、共有しませんか?」

「おお! 是非!」


 キメラが得意げな表情で説明を開始する。


「えーとですね。まず一番びっくりな情報からです! 何と、今までの層をひとまとめにして【第1層】として生まれ変わりました」


 今までの層が全て、一つの層にまとめられたようだ。


「ボリューム満点だな」

「そうですね。とは言ってもストーリーが薄いので、レベルさえ上げればそこまでのボリュームは感じられませんけどね……」

「まぁ、そこは……」

「今回のアプデで期待ですね♪ どんなストーリーなのか気になりますが……13時まで我慢です!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ