212.大型アップデートの内容についての予想
漆歴2021年、10月下旬。
東京都内に存在するブレイドアロー社、GWO運営支部のオフィスでの出来事だ。
「ふぅ……これなら何とか間に合いそうだな」
運営の1人の真ん中分けの男は、右手で額の汗を拭う。
「お疲れ様です! 先輩、どうぞ!」
「すまないな、立川」
後輩の男、立川がエナジードリンク入りのティーカップを差し入れとして持って来る。
真ん中分けの男はニコリと笑うと、飲む。
モンスターな成分をゴクゴクと胃に入れる。
「それにしても、上の方々も大型アップデートだ何て思い切りましたよね」
「ああ。立川はどう思ってる?」
「いいと思いますよ! 特に先輩のこれです!」
立川の言う“これ”とは、アバターのカスタマイズ要素の事であった。
ステータスが変わる訳では無いのだが、動物の耳や尻尾を付けて、獣人の気分が味わえるようになった。
これは真ん中分けの男が提案したアイデアだ。
「そうだろそうだろ!」
笑顔で複数回頷く。
真ん中分けの男はかなり真面目な男だが、同時に大のエロゲ好きでもある。
特に好きな脚本家のエロゲが出た際には有給休暇を使うくらいだ。
そんなエロゲ最新作のケモ耳ロリにハマり、意見を出してみた所それが採用されたという訳だ。
「むしろ今まで何で無かったんでしょうかね」
「不思議なくらいだな。ファンタジー世界と言ったら獣人くらい居てもおかしくないからな。それはそうと立川」
「はい! 何でしょう!」
「獣人のコスプレをしたキャラを好きになるのはノーマルで良いと思うのだが、獣人キャラが好きでも異常性癖扱いされないのは何でだと思う?」
「え……?」
立川は回答に困った。
「ま、色々あるだろうな。すまない、変な事を聞いた」
本当に変な事であった。
「ともかく、大型アップデートは11月10日だ。決して遠くはない。この調子で頑張るぞ」
「はい! 先輩も体の方気を付けてください!」
「そっちもな」
立川は自分の席へと戻っていった。
「さて、プレイヤーの皆を喜ばせる為に……引き続き頑張るか!」
ピロン♪
「メールか」
真ん中分けの男はメールを確認する。
「呼び出し……!?」
心当たりがまるで無かった。
それなのに、上司に呼び出しをされてしまった。
一体何を言われるのだろうかと不安になる真ん中分けの男であった。
☆
時は流れ11月初旬。
アルカ達は予定されている大型アップデートについて話す為、クランホームに集まっていた。
「今月に入ってすぐに発表された大型アップデート! いやぁ~楽しみですね!」
ゲーマーのキメラは目を輝かせている。
「一体どんなアップデートがされるんだろうな」
「何でも、新システムとか新しい層とか新スキルとか……色々みたいです!」
「新しい層か。何だか久しぶりだな」
「そうですね。何だかずっと、プレイヤーと戦ってばっかりだった気がします」
「確かに!」
キメラの言う事は最もであった。
PvPだけが売りのゲームという訳では無いのだが、何だか他のプレイヤーと戦ってばかりな気がしてきた。
「新しい層での冒険に期待大です! 一体どんなストーリーが展開されるのか今からワクワクです!」
「ストーリーね……。そういえばこのゲームって魔王倒した後は特に何も無かったよな」
「そうですね。ストーリーが売りのゲームでは無いですから」
「じゃあ、次の層でもそこはあまり期待できそうもないな……」
「いえ! 運営の方が新たなストーリーも実装されると発表しています!」
「おお! どんなストーリーなのか気になるぜ!」
アルカはキメラが仕入れた情報を聞き、ストーリーについても楽しみになった。
「おいおいキメラ君。それはまだ表の情報じゃないじゃないか」
「そうなのか?」
カノンは少し呆れ顔でそう言った。
俗に言うリーク情報という奴であった。
最も肝心のストーリーの内容はリーク情報が無いのだが。
「す、すみません。掲示板で得た情報でした」
キメラは照れ笑いをしながら、右手で頭をかき謝罪をした。
「あっ! それはそうと! アップデートでスキルとかも変更されそうですよね! 私の魔法少女系のスキルも強化されてるといいですね! 会長はどんな強化を望んでいますか?」
話題を変えようと、キメラが言った。
「私はやっぱりロボットかな。ぶっちゃけこれゲームだから、ロボットも運営が用意しているパターンしか作れないからね。新しいのを期待したい所だよ」
「そういえば会長は要望を送ったんですよね?」
「ちょっとね。駄目元で送ってみたんだ」
あくまでこれはゲームなので、決められたパターンのロボットしか作れない。
だが、運営に言えば別だ。
理想のロボットを組み込んでくれる可能性がある。
とは言っても個人の頼みなので、スルーされる可能性はかなり高いのだが。
「皆色々やってるんだなぁ」
「で、ござるな。所でアルカ殿は何が楽しみでござるか?」
「俺はRPGが好きだから、やっぱりストーリーが気になるな。後はレベルの上限がどのくらいまで上がるのかも気になるな」
「今のレベル上限は70でござるからな。キリ良く100と予想するでござる!」
「100か……。じゃあ俺は200と予想する!」
アルカと極はレベル上限がどのくらいまでいくのかを予想し合った。
「何レベルでもいいじゃない! 私の進化した槍裁きの前じゃ、レベル何てただの飾りだわ!」
「クロー……復活おめでとう!」
クローはしばらくログイン出来ずにいた。
あまりにも成績が悪く、ゲームを禁止されていたのだ。
だが、条件付きで見事復活を遂げた。
「ありがとう! これで攻略トップバッターは間違い無しね!!」
ドヤ顔で槍を振り回し、ポーズを決める。
そして皆がクローの方を向くと、順番に「おめでとう」を送るのであった。
評価ありがとうございます!
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おまけに10倍すると10000ポイント超えますね!
夢がありますね!
皆様、ありがとうございます!




