210.イベントの締め
「そうか、決着がついたのか」
「はい! 無事に!」
ユミリンとの一件が終えた後、ミーナはアルカのマイホームへと来ていた。
「そして! ユミリンの全てのVコインが私のものになりました!! ユミリンのファンには悪いですけど……」
「ルールの範囲内なら問題ないだろう」
「ですね!」
こうなってしまえばミーナの優勝は決まったようなものだ。
「でも……これで俺は役目を終えた訳か」
「まだですよ?」
「どういう事だ?」
「今回のイベントは明日月曜日の20時で終了します。で、その時1位になったVtuberはVコインを最も多く投げ銭してくれたプレイヤーと戦わなくてはなりません。アルさんは個人で1万Vコイン以上を投げ銭していますからね。おそらく私とアルさんが戦う事となります!」
「マジか。って明日平日じゃないか。20時までに帰れればいいんだけどな」
「絶対来てください! そして、本気で向かって来てください!!」
「本気でか……。分かった。ミーナがそう言うんだったら受けて立つぜ!」
「やったー! そういえば、アルさんと戦った事無かったですよね! 初の戦いを皆に見られると思うと尚の事緊張します! そして同時にワクワクします!!」
「そういえばそうだったな。分かった。最高の試合にしよう」
そして次の日。
ミーナのVコインの数は凄まじく、あの後ミーナを追い抜くVtuberはいなかった。
『イベント終了まで、5、4、3、2、1……0!! イベント終了だリン!!』
マスコットキャラクター、ドラリンのアナウンスが鳴り響く。
『今から閉会式をやるリンから、コロシアムに集合だリン!!』
コラボVtuberはコロシアムへと強制的に転送された。
ユミリンはログアウトしたのか、姿が見えなかった。
イベント参加者は観客席だ。
人数が多すぎて、観客席が遥か天まで届いている。
「ではでは、表彰式だリン!」
ドラリンは3位から1位までの順位を読み上げた。
3位はスターダストサマー、2位はライドンスズキ。
そして、1位はミーナだ。
ユミリンはVコインを投げ銭してくれるプレイヤーが大勢いたので、最下位は免れたが、7位という結果で終わってしまっていた。
最も、今のユミリンにとってはどうでもいい事ではあったのだが。
「ではでは! これにてイベント終了! と行きたいでリンが……後1人戦わなくてはならない相手がいるリン!」
「どうも」
アルカは空から降って来ると、Vtuberや客席の皆に軽く頭を下げた。
「ここのアルカさんは個人で最も多くのVコインを投げ銭してくれたリン! 最後に1位となったミーナさんがアルカさんと華麗に戦って、このイベントを締めたいと思うリン!」
客席が盛り上がる。
「ミーナちゃんああああああああああああん!! やっちまええええええ!!」
凄まじく過激な応援も聴こえる。
「もう! 皆ったら! アルさん、ごめんね」
「いや、大丈夫だ。運営さん、こっちは準備OKです。いつでもはじめてください」
ドラリンは飛び回りながら「了解だリン」と言うと、コロシアムのフィールドにミーナとアルカだけを立たせる。
「ミーナ! 錬金術師の本気、見せてもらうぜ!!」
「分かりました!!」
電光掲示板のカウントダウンが始まり、それが0となると試合がスタートした。
「先手必勝!」
ミーナは生産職であり、攻撃手段はほぼアイテムだ。
そして、耐久面も決して高い数値ではない。
となれば、ミーナには悪いが火力で押し切るのが最適だとアルカは考えたようだ。
「ふふっ! 甘いですよ!」
ミーナはダイナマイトを地面に投げる。
すると、灰色の煙がプシューッと出、フィールドを包み込む。
「くっ!? 毒ガスか!?」
毒ガスでは無いが、視界が塞がり、焦ってしまう。
「今ですっ!」
ミーナはアルカの腹に平手を添える。
右手から薄ピンク色のオーラが放出される。
「しまった!? スキルか!?」
アルカは翼をバサバサすると、フィールドを包んでいた煙が吹き飛ばされる。
ミーナも慌てて距離を取る。
「そう、スキルです。特別に教えてあげましょう!」
ミーナはドヤ顔で目を瞑り、右人差し指を立てる。
「今のスキルはズバリ! 1時間の間だけ、無職に職を与えるスキルです!!」
「何だと!?」
「職業が無職のプレイヤーにしか使えないんですよ。残念ながら」
「くっ! 一体どんな職業になったんだ!?」
アルカは急いで確認すると、職業が【錬金術師】となっていた。
「ミーナと同じ職業だと!?」
「そうです! 無職のプレイヤーを自分と同じ職業にさせる効果を持ったスキルです!!」
ミーナはえっへん! と胸を張る。
「けど、俺を一時的に錬金術師にして何の意味があるんだ!?」
「意味ですか……意味は大いにあります! ハッキリ言って、まともに戦ってはアルさんには勝てませんからね。ちょっとズルい事をします!」
「チートか!?」
「ち、違いますよ!!」
「だったら一体……」
ミーナはストレージからアイテムを取り出す。
「ふっ!」
「何だそれは……? ミーナ、弓何て使ってたか?」
ミーナの手には黒い矢が握られていた。
「ちょっと落ちてたのを拾って再生させました。残念ながら、錬金術師の私じゃ、弓は装備できませんから。ですが……こうして矢を使用する事は可能です! さぁ! ここからが本当の戦いですよ……!!」




