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209.もう一度その手を繋げるかな

「勝負あったね!」


 バトルモードが解除される。

 ユミリンも立ち上がり、ミーナを見る。


「本当に……負けたのか? この俺がミーナに……」


 現実を受け止められないような表情を浮かべた。


「うん。私の勝ちだよ」

「何でだよ!! クソッタレが!! もういい、こうなったら!!」


 ユミリンは頭を下げた。


「勝敗何て関係ない!! 戦ってる俺、格好良かっただろ!? なぁ!? だから……俺に惚れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 頭を下げているのだが、態度はデカかった。


「却下」

「なっ!!?? どおしてだよおおおおおおおおおおおお!!」


 ぷいっと却下されてしまった。


「教えてくれよおおおおおおおおおお!! お、俺の何が悪かったんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


「理由は簡単。私は今のジュウヤが嫌いだから!」

「俺のどこが駄目なんだ!? 見ただろ!? 俺のファンの数を!? 何であんなに頑張れたか分かるか!? あざとく演技できたか知ってるか!? 同じ土俵に立ち、それでトップになり、お前に惚れてもらう為だよ!! 分かってんのか!?」

「何でそれで惚れると思ってたの? 馬鹿じゃないの?」

「なっ!? 俺に向かって馬鹿だと!?」

「馬鹿だと思う。というか、何で今のジュウヤの事嫌いなのか教えてあげるよ」


 ミーナは呆れたような表情をする。


「まず、前の世界で私に悪ふざけで矢を放った。まぁ、それだけだったらまだ許せたよ」

「許せただと……?」

「うん。当然それも最低だけど、それよりもその後逃げたのがもっと最低!」

「罪人になるのが……怖かったんだよ!!」

「正直だねぇ。ま、でも……もっともっと最低なのが……」


 ミーナは大きく息を吸い込む。


「再開した後、決して私に謝ろうとしなかった事!!!!! それが今のジュウヤの事が大っ嫌いな一番の原因だよ! 馬鹿!!」


 そう、ユミリンは決してミーナに謝ろうとしなかった。

 それ所か惚れて貰う事ばかり考えていた。


 ドガッ! と音が鳴り響く。


「ぐっ!!」


 ミーナがユミリンをぶん殴った音であった。

 ユミリンは地面に転がる。

 そして、立っているミーナを見る。


「謝らなかった……? それが……惚れてくれなかった一番の原因……?」


「そう! そんな男、女の子が好きになると思う!? 悪いことをしたらまず謝る!! お母さんに教わらなかったの!?」


「わ、分かった……悪かった……」


 ミーナに怒られ、涙目になるユミリン。

 まるで親や教師に説教を食らっている子供のようだ。


 ペチン! と音が鳴り響く。

 ミーナがビンタをした音だ。


「違うでしょ……?」


「な、何が違うんだ……!?」


「もういい。じゃあね。もう私の前に現れないで。お金なら沢山持ってるんでしょ? 他の女の子と幸せにでもなれば?」


 ミーナはユミリンに背を向け、去っていく。


「何が……何が違うんだ……よ」


 ミーナに捨てられ、涙を流すユミリン。


 そして、ユミリンの脳内に走馬灯のようにミーナとの思い出が蘇ってくる。


(そうか……俺は今も現実逃避していたんだ……。悪いのは俺だって言うのに、今になっても……罪を認めるのを怖がっていたんだ……)


 ユミリンは泣きながら叫ぶ。


「ご、ごめんなさあああああああああああああい!!」


 地面に手をつく。


「ごめんなさい……」


 地面に涙が零れる。


 そして。


「はい! 良くできました!」


 ユミリンが顔をあげると、ニッコリと笑ったミーナがいた。


「どうして……?」


 なぜ、戻ってきたのか。


「悪い事した時は、“ごめんなさい” そうだよね?」


 ミーナは手を差し伸べる。


「全く、本当に気が付くのが遅いんだから、色々と」


 ミーナは呆れが混ざった笑顔を浮かべる。


「ゆ、許してくれるのか……?」

「許さない! 正直、ゲームらしく言うと好感度は0!!」


 ミーナはユミリンの手を取り、立たせる。


「ははっ……まぁ、そうだよな……」


 ユミリンは乾いた笑いをする。


「せいぜい、かっこよくて強い人間になれるように頑張るんだね!」


「そ、それって……?」


 再びチャンスが与えられたという事なのかもしれない。


(はぁ、私って甘いなぁ……)


「分かった……もっとかっこよくて強くなる!」


「……もっと元気に! それだと弱いぞ! ほら、いつもの!」


 ユミリンは頷く。


「いつかお前は惚れろ!! 分かったな!!」


「それでこそ、ジュウヤだよ」


 ミーナはユミリンの頭を撫でた。


「なっ!?」

「よしよし」

「動物じゃねぇんだぞ!!」

「あはっ! うんうん。それでこそジュウヤだねー!」


 ミーナはどこかスッキリしたかのように笑った。


「……頼みがある」

「何?」

「もう一発……俺を殴ってくれ!!」

「何で!?」

「頼む!!」


 GWOはある程度の痛みは再現されているので、そこそこ痛い。

 だが、それでも頼む。


「分かった……」


 ユミリンなりのケジメなのかもしれない。


「ていやーーーーーーーーーーーーっ!!」

「ぬはっ!!」


 体を回転させ、ユミリンは吹き飛ぶ。


「ふはっ! いいね……!!」


 フラフラしながら、ゆっくりと立ち上がる。


「思い出す……最初にミーナを好きになった時の事を……!!」


「え?」


「昔、ミーナを怒らせ、本気でぶん殴られた時……俺はお前の事が好きで好きでたまらなくなった……。だから、再出発の意味も込め……この痛み……忘れない!!」


 こうして、長きに渡る、ミーナとジュウヤの因縁に終止符を打った。


 また0から、ミーナの幼馴染のジュウヤ・ミレニアムではなく佐藤十矢として、ミーナに惚れて貰えるような男になろうと誓うのであった。

 主人公が行方不明になりそうですが、次回はしっかり登場します。

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