207.届け!俺の恋心!!
『ミーナちゃん! ユミリンだよ~☆ えへっ♪ 何だか照れちゃうねっ! えへへ☆』
次の日の日曜日。
ミーナの元へユミリンから動画が送り付けられて来た。
『あ、あのね!! 私……ミーナちゃんと会いたいな……って思っちゃって……今日暇かな? 会えない……? 出来れば2人きりで……ね? だ、だって私ミーナちゃんの事、す、好きだから/// っていや~ん☆ 私ったら告ちゃった~!? 恥ずかしい/// って事で今からここに来てね!! 約束だよ~☆』
「何だこの動画」
「私が聞きたいですよ!」
クランホームのミーナの部屋で、送られてきた動画をアルカと見ていた。
1人で見るのが怖かった為だ。
「ジュウヤがこれ言ってるの想像すると鳥肌が立ちますね……」
「まぁ、どんな言葉づかいでも自由だけど……いきなりどうした、ユミリンよ」
いつも以上のハイテンションさに少し驚く。
「で、行くのか?」
「……はい」
「そうか。厳しい戦いになりそうだな。俺も付いてくか?」
「これは男と女の戦いです。サシで堂々と決着をつけます」
「男と男の戦いみたいに言うんだな」
「性別何て関係ありません!! って事で!! 行ってきます!!」
ミーナは1人きりで指定の場所に向かった。
(ここにジュウヤが)
プレイヤーが誰もいない廃墟のようなエリアだ。
イベントエリアではない。
「やぁ! ミーナちゃん☆ 来てくれたんだね☆」
「ユミリン……さん」
ユミリンが姿を現した。
人違いだと仕方が無いので、念の為さん付けをした。
「もぅ! さん付け何かしなくていいのに☆」
ユミリンがニコニコと、普段リスナーに見せているかのような笑みを見せる。
「……ユミリンちゃん」
「それもいいけど……もっとあるでしょ? ね?」
次第に悪そうな笑みへと変わっていく。
「ジュウヤ……」
「また会えて嬉しいぜ!! ミーナ!!」
ユミリンは挨拶代わりに弓矢を飛ばす。
「おお! やるな!!」
ミーナは矢を右手で受け止める。
「はあああああああああ!!」
ミーナが右手に持った矢でユミリンを突き刺そうとするが、それを弓本体を使い防ぐ。
火花がバチバチと散る。
「元気で可愛いな!」
「何でジュウヤがここにいるのっ!!」
「ここってGWOの事かぁ!?」
「違うっ!! この世界の事!!」
「この世界……? そういう事か!! 答えるのは簡単!! 俺は元々こっちの世界の人間何だよ!! お前とは違ってなぁ!!」
互いに大きく後ろにジャンプして離れる。
「なぁ、俺ここまですげぇVtuberになったんだぜ? どうだ? 俺に惚れる気になったか? 今の俺は大量のウルトラチャットでかなりの金を持っている。お前を養う事くらい簡単だ。どうだ?」
ユミリンは得意げな表情で言った。
「……ジュウヤが元々こっちの世界に住んでいても、お金をどれだけ持っていても構わない。けど……私が今言えるのはただ1つ。今のジュウヤには絶対に惚れない! 昔の方がまだ良かった!」
「それは王子だったからってか? クソッタレが!!」
「違う……そうじゃない。まぁ、どっちにしろもう惚れない」
「もう? まるで前は惚れてたみたいな言い方だな」
「……そうかもね」
「コンチクショウ!! 嘘言いやがって!! いい加減にしやがれ!!」
ユミリンは軽くキレかけた。
「どっちでもいいけど、私は決着をつけに来たの。Vコインを全部賭けて私と勝負して」
「はぁ!? お前が惚れてくれるならこんなコインくれてやる!! けど、お前がそこまで本気な目で言うんだったら……お前はVコイン以外の物を賭けろ!!」
「どういう事?」
「俺はVコインを全て賭ける。代わりにお前はお前自身を賭けろ!!」
「ど、どういう事?」
「俺が勝ったらお前は俺に惚れろ!! 要するに……俺の彼女になれって事だ!!」
「嫌に決まってるよ! 大体そんなので付き合えて嬉しいの!?」
「ああ! 俺は手段は選ばない!! 一緒に幸せな家庭を築こう!! さぁ! マイエンジェル、提案を飲むんだ!! さぁ!!」
ユミリンは目を輝かせ手を差し出す。
「はぁ……」
ミーナはため息をつく。
「くだらない」
「は?」
「くだらないって言ってんの!」
ミーナはユミリンの手をパチンとぶっ叩く。
「このっ!!」
「けど、その賭けは乗った。別に負ける事考えて無いし、私が負けた場合の条件何てどうでもいいよ」
「乗ったか……そうか乗ったか!! やっと……やっと夢が叶う!! そういえばミーナもVtuberだったね! しかも人気だよな! 2人の貯金を合わせれば色々買えるな! 家はまだ早いけど……あっ! けど、婚姻届は書きかけだからとりあえず結婚が先かぁ!? ってこっちの世界でのミーナの本名知らないな! 俺とした事がしくった……。あっ、でも俺はログアウトした後もミーナって呼ぶからな! 特別な関係っぽくていいだろ!! いいか? いいよな!?」
ユミリンは涎を垂らし、目をキラキラとさせながら上を向く。
両手を合わせ、妄想も止まらない。
「えーと、それってジュウヤが勝った場合だよね?」
「え? だって、錬金術師って生産職だろ? 俺の勝ち確定じゃん!!」
「それは大きな誤りだよ。そういえばあっちの世界でも錬金術の事を甘く見てたよね」
「だって生産職だろ? 回復薬何て店売りので十分だ」
「そう……残念だよ」
ミーナはニヤリとすると、いつもの元気な笑顔に戻る。
「何だよその顔は!! 何だよ!! 俺と付き合えた事でも妄想してるのか!?」
「違うよ! 安心したんだ。これならやっぱり私が勝つってね!!」
実は少し不安だった。
けど、それも無くなった。
「何だと?」
「死にかけの私を置いて逃げた元王子が付き合えと言ってくる。錬金術師を甘く見たばかりに勝てる勝負も勝てませんでした。条件を変えてくれって言っても今更遅いよ?」
ミーナは意地悪そうな笑みをユミリンに向けた。
「今更遅いのはそっちだ!! 覚悟しやがれ!!」




