203.vsサイバーゴーレム
203話にして、初のレイドバトルです。
レイドバトルが始まる2時間前となった。
運営からのお知らせがプレイヤーにメッセージ機能を通して行き届く。
ジルコの得た情報の通りの条件でレイドバトルが開始されるようだ。
だが、1つ条件が付けくわえられていた。
それは、このメッセージを受け取るまでにVコインを1枚でも投げ銭したプレイヤーのみ参加できるという条件であった。
そして時は流れ18時少し前。
イベントエリアにはプレイヤーが集まっていた。
「来ましたわね!」
参加プレイヤー1、ジルコ。
「やってやるでござる!」
参加プレイヤー2、極。
「ああ! 皆、頑張ろう!」
そしてアルカ。
この3人以外は10人程のプレイヤーが参戦しているが、知った顔はいなかった。
「ふふふ!」
「どうした?」
「あそこの10名の投げ銭が消える事を考えると自然と口角が上がってしまいますわ!」
「おいおい……」
「心配しないでくださいですわ! ワタクシは大切な仲間相手に手を下したりませんわ! 自然とボスに倒されるのを祈っているだけですわ!」
「……」
近くにいたアルカと極にしか聴こえないように言っているようだが、仮に他のプレイヤーに聴かれていたら先に始末されかれない。
「ま、そんな事はどうでもいいのですわ! どちらにしろ、ワタクシの新たな力を解放するには丁度いいですわ!」
ジルコは大袈裟なアクションを用いてメニュー画面を操作する。
「輝きなさいですわ! ワタクシの装備!!」
そしてそのままの流れで装備を変更する。
「うわっ!」
アルカは驚いてしまった。
「派手でござるな……」
極もジト目で新ジルコを見つめる。
無理もない事だ。
ドレスのような形状なのだが、布が見えない。
宝石がドレスの布の部位全てに装着されているからだ。
宝石人間のようだ。
「見とれてしまいました?」
「いや、動きにくそうだと思って」
アルカは素直な感想述べた。
「派手だな」
モブプレイヤーの1人がジルコを見てポツリと呟いたのであった。
『時間になりました。レイドバトルを開始します』
アナウンスが鳴り響いた。
全員がレイドバトル専用の荒野のようなフィールドへと転送された。
「ギョロオオオオオオオオオオオオオオ!!」
巨大なモンスターが現れる。
モンスター名は、【サイバーゴーレム】。
要するに機械のゴーレムだ。
サイバーゴーレムはドラミングで威嚇をする。
「今まで会った中で一番デカいな! 流石はレイドボス!」
龍の体という事で、他のプレイヤーよりは体が大きなアルカであったが、そんなアルカにとっても巨人と思えるほどにサイバーゴーレムは大きかった。
「う~ん」
「どうしたジルコちゃん」
「あんなのに勝てるのかしら?」
「ちょっ! ここまで来てそれはないぞ!」
「ふふっ、冗談ですわ!」
と話している間に、モブプレイヤーの1人が勇敢にもボスに立ち向かっていった。
「ギョロオオオオオオオオ!!」
ゴーレムは突っ込んできたモブ1を捕まえようとする。
「あまいなっ! 俺はお前に勝ってユミリンに投げ銭をするって目的があるっ! それを阻止はさせない!」
モブ1はゴーレムの手を避け、腕から駆け上がっていく。
「食らえよ! 【ハイパースラッシュ】!!」
剣によるスキル攻撃が放たれた。
「ギョロオオオ!!」
サイバーゴーレムの巨大な1つ目玉がモブ1を見ると、そこからレーザーが発射された。
「ぐあああああああああああああああ!!」
大ダメージを食らい、地面へと落下し、サイバーゴーレムの足でそのまま踏み潰される。
「これで1人減りましたわ!! 非常に残念ですわ!! 犠牲を無駄にしない為にも慎重に行きますわよ!!」
モブ1はそのまま粒子となり消滅した。
「攻撃力が高いだけでなく、スキルでの特殊攻撃も放ってくるのか……とりあえず攻撃を食らわないように注意して行こう。俺は空から攻撃する!」
アルカは飛翔し、上空から【爆炎】を複数放つ。
敵のHPは少しずつだが削られている。
「ワタクシ達も行きますわよ!!」
「承知!!」
「ギョッ!」
サイバーゴーレムがジルコに狙いを定める。
「レーザー攻撃でござる! 避けるでござる!」
「その必要はありませんわ!」
ジルコにレーザーがヒットする。
「ジルコ殿―!! ってあれ?」
「そんな攻撃効きませんわ!」
全然HPが減っていない。
「どういう事だ……?」
上空から、攻撃をモロに食らっているジルコを見て首を傾げるアルカ。
「これぞ! ユニーク装備、【ジュエルアーマー】の効果ですわ!」
ジュエルアーマー。
その効果はあらゆる特殊攻撃を無効化するというものであった。
「ほんのり温かく、気持ちいくらいですわ~!!」
隙ができた。
ジルコがレーザーを引き付けている間に、全プレイヤーが次々とサイバーゴーレムに攻撃を放つ。
「ギョロオオオ!!」
次々とスキル攻撃を浴びせられていく。
「皆様流石ですわー!!」
ジルコが余裕そうに、レーザー攻撃を食らいながら無邪気な笑みを浮かべて勝ち誇っていた。
しかし……。
「ノブッ!!」
勝ち誇り過ぎて油断していた。
サイバーゴーレムの右手から放たれたグーパンを食らい、近くの大岩へと叩き付けられた。
「ジルコちゃん!!」
「ジルコ殿!!」
ジルコは大岩にめり込んでいたようで、2人は思わず叫んでしまう。
「くっ……何という破壊力……!」
ジルコは生きていた。
HPバーも満タンであった。
だが、代償はあったようで……。
「砕けてしまいましたわ」
胸元の宝石以外、全てが砕け散っていた。




