21:勝ちたい少女
「では、今から戦闘用のフィールドを展開します」
司会者が指パッチンをすると、コロシアムのようなフィールドが現れ、その内部にアルカとミサキが召喚された。観客席には、プレイヤーが居るが、全プレイヤーでは無い。収まらなかったプレイヤーは、先程のステージで、電光掲示板から試合を観戦する事となる。
「楽しい勝負にしよう。まさか、ここまで早く、ミサキちゃんと再戦する事になるとは、思わなかったよ」
「私、頑張ります!」
ミサキは、表情をキリッとさせ、剣を構える。
剣の種類は片手剣である。初心者から上級者まで、様々なプレイヤーに愛されている武器である。
左手には、盾が装備されている。バランス型の装備である。
司会者が合図をすると、カウントダウンが二人の視界に映る。やがて、カウントは0になり、試合開始のホイッスルが鳴る。
「行きます! ハイドロレーザー!」
ミサキは、スキル【ハイドロレーザー】を使用する。
水のレーザーがアルカを襲う。
「残念だ。その技は、一度見た」
アルカは、ハイドロレーザーを見たことがあったので、完全にかわす事が出来ると思っていた。
しかし、完全にかわす事は出来ず、HPの半分を持っていかれてしまった。
「やるな!」
アルカはニヤリとした表情をすると、スキル【咆哮】を発動させる。
「きゃっ……!」
ミサキは、咆哮を食らい、吹っ飛ばされる。
幸いにも、盾でガードしていたので、ダメージ量は、あまり無い。
それにミサキはバランス良く、ステータスを振っている。しかも、ミサキの現在のレベルは【43】だ。アルカのアバターが強くとも、中々手強い相手である。
「強いですね」
「その割には、残りHPは余裕そうだけどね」
ミサキの頭上に表示されているHPゲージを見て、アルカは言った。
アルカは、飛翔をすると、上空から【咆哮】を放つ。
「食らえ! 上からの咆哮!」
「スキル発動!【ガード】!」
ガードは、一時的に防御力、特殊防御力を上げるスキルだ。これにより、【咆哮】によるダメージは、先程より入らなかった。
アルカは、地面に降りると、武器を装備をする。
エクシードゴブリンを倒した際に手に入れた【クリスタルブレード】を装備すると、左手が剣になる。
「食らえ!」
アルカは、突進し、クリスタルブレードをミサキに突き刺そうとしたが、盾で防がれてしまう。
だが、盾にヒビが入り、砕け散る。そして、ミサキにダメージが入る。【ガード】を使用していた為、大量のダメージは入らなかったが、盾は破壊され、【ガード】の時間も切れる。今の状態だと、アルカの方が有利である。
(嫌だ……)
ミサキは、目を見開き、下を向く。
(いつもいつも……何事にも負けてばかり……それでもいいと思っていた……ただ……ファーストステージで味わった勝利の味……圧倒的、強者の味……もっと味わいたい!)
「私は、頂点に立ちます……それには、貴方という名の生贄が必要です」
「!?」
ミサキは、アルカと距離を取る。
「これを使わせてもらいます! 勝つ為の私のあがきだ!!」
ミサキは、アイテムボックスから、手の平サイズの宝箱を取り出す。
このアイテムは、ファンから貰った【ランダムスキルボックス】である。
どんなアイテムかと言うと、その名の通り、ランダムでスキルが手に入るアイテムである。
これは、ファンから貰ったアイテムであり、配信の際に使用を予定していたアイテムであった。
ミサキは、宝箱を空中に放り投げ、剣で切る。
光の球体がミサキの体内に入る。
「来たか」
ミサキはニヤリとする。
「何が始まるんだ!?」
「何でしょうね? せっかくです。教えてあげましょう。ユニークスキル発動!【デス・リワード】!」
空中に多くの剣が召喚される。
アルカは、クリスタルブレードで弾こうと、左手を構える。
しかし、それらの剣は、アルカには向かわず、ミサキの体目掛け、飛んでいく。そして、それらの剣がミサキに全て突き刺さる。
「ハハハハ!! 来たぁ!!」
「自爆スキルか……?」
ミサキのHPが恐ろしい勢いで、減っていき、HPも残り1となってしまった。
「【デス・リワード】の効果……自らのMPを0に、HPを1残すように削り、次の攻撃系スキルの必要MP、発動条件を無視して使用し、即死効果を付ける! これで終わりにしてあげます!」
ミサキは、片手剣を投げ捨て、右手をアルカに向ける。
「残念でしたね! 私の勝ちです! 【トラッキングウォーター】!」
トラッキングウォーターとは、そこそこの速さと、追尾機能を持ったスキルである。ダメージ量は少ないが、即死効果が乗せられているので、そこは問題無しである。
【デス・リワード】を使用した事により、黒いオーラをまとった水が発射される。
これでミサキの勝利である……アルカが【第二の瞳】を発動させていなければの話ではあるが。
「馬鹿な……!? 確かに即死効果が上乗せされていた筈……」
「悪いな、俺もユニークスキルを持って居るんだ。1つは知ってるかもしれないけど、もう1つは、知らなかったみたいだね。現在のHPの半分を削り、ミサキちゃんのスキルを吸収させてもらった」
「嫌だ! 私は、勝つ!! はああああああああああああ!!」
ミサキは、落ちている片手剣を拾い、アルカに向けて走る。
そして剣が突き刺さる。
「ミサキちゃん。今回は、俺の勝ちだけど、また勝負しようぜ!」
クリスタルブレードが、ミサキにカウンターの突きを食らわせ、HPを0にした。
ミサキは、リスポーンする事なく、その場にとどまる。公式イベントなので、特殊なようだ。
「……今度は私が勝ちます。勝利の味を味わう為に」
試合が終わった後、観戦していたプレイヤー達が拍手をした。
「素晴らしい勝負でした! アルカ選手、おめでとうございます。貴方こそが、現時点で最も美少女なプレイヤーとなりました!」
(そ、そうなの……?)
アルカは、困惑した。あくまで美少女コンテストだというのに、自分が優勝して良かったのかと。
(ま、いっか! 楽しかったし)
「では、優勝賞品をお受け取りください! 優勝賞品のレアアイテム!【ランダムスキルボックス】です!」
「おお! ミサキちゃんが使ってた奴か! でもハズレスキルだったら……」
「安心してください! 実は、この【ランダムスキルボックス】……確定でユニークスキルです!!」
「マジか!! やったー!!」
アルカは、喜んだ。ようやく【咆哮】以外の攻撃系スキルが手に入りそうだからだ。
「そして……サプライズで準優勝者にも商品があります! ミサキ選手! 受け取ってください。ユニーク武器です。何と、今までに無い大鎌をモチーフとした武器になります」
巨大な鎌がミサキに渡されると、ストレージへと収納される。
「ありがとうございます。これで私はもっと強くなります!」
ミサキは、拳を握りしめ、宣言したのであった。
「そして……何ともう1つサプライズ……今度から職業システムが追加されます!!」
(職業!? 極とかの無職はどうするんだ!?)
失礼にも、極の事を勝手に無職だと思い、そして職業システムを誤解していたアルカであった。
「うおおおおおおおおお!!」
「職業システム来たあああああああああ!!」
観客席に居たプレイヤーは、叫んでいた。
そして、ようやく職業システムの想像がついた。
(職業システムってあれか、職業【剣士】とかいう奴か)
【デス・リワード】:
自分のMPを0に、HPを1にするように削る。
次に使用する攻撃系スキルの発動条件、消費MPを無視し、発動出来る。そのスキルに即死効果を付与する。




