190.勉強の成果
次の瞬間、アルカと極は椅子に座っておらず、平原エリアに飛ばされていた。
「ここは……?」
2人がキョロキョロしていると、GWO内で見た事のないモンスターが現れた。
名前は麒麟でレベルはカンストの70だ。
このゲームを始めたばかりのプレイヤーはまず勝てないだろう。
そもそもこれはクイズなのだろうか?
「さ、行くか! 【爆炎】!!」
アルカはスキル【爆炎】を発動しようとした。
だが、なぜか発動しない。
「何でだ!?」
アルカが慌てていると、極が言う。
「ここは拙者に任せてくれでござる! 進化を遂げた拙者の姿を見せるでござる!!」
「進化!?」
見た目は変わっていない。
何が変わったのだろうか?
「転職したでござる!!」
「マジで!? 職業進化はともかく、転職って面倒なんじゃ無かったか?」
「この前のイベントで5位以内に入った時、【転職チケット】を貰ったのでござるよ!」
前回のイベントで5位以内に入ったクランのメンバーは、【転職チケット】か【ステータスポイント振り直し券】どちらかを選んで、それを貰う事ができた。
「そういえばそんなのあったな」
「更に、ちょっとした裏技があってでござるな。ユニーク職業を持ったプレイヤーが転職する場合、一気に上位職業に転職できるのでござる!」
別に裏技といった程でもない。
ユニーク職業自体が珍しく、更にはそういったプレイヤーはレア職業を消したくないので転職していないだけだ。
「ユニーク職業を生贄にだと!?」
「拙者の戦術を活かすにはこっちの方が良かったのでござるよ!!」
「で、何になったんだ?」
「【魔法剣士】でござる!!」
職業【魔法剣士】。
本来であれば、【剣士】の進化先である職業だ。
だが、ユニーク職業を犠牲にした極はワープ転職できた。
極の以前の職業【カードゲーマー】と違い、スキルを使用する際にMPを消費するが、攻撃、特殊攻撃、素早さの値に補正がかかる。
極は剣撃などの物理攻撃の他、スキルを用いた特殊攻撃も使用する。
他にも理由としては【カードゲーマー】には、致命的な弱点があったからだ。
前回のイベント時に判明したのだが、それで極は転職を決意したのだ。
「えらく普通の職業になったな」
「ふふっ。火力は今まで以上でござるよ」
極は走り出す。
麒麟は素早い動きを見せる。
極はあえて追わない。
極は大きく飛び上がると、刀を振りかざす。
「【流星群】!!」
地面へと流星群が降り注ぐ。
麒麟は精一杯かわす。
「少しかすっただけでござるか!」
極は地面に着地する。
麒麟は動きながら電撃を広範囲に飛ばす。
「【トルネード】!!」
極は小型の竜巻を放つスキルを使用した。
麒麟の攻撃と相殺するつもりだったが、向こうの方が強かったようだ。
「【マジックサーキュラー】!!」
極は自らの体を回転させながら、刀を持ってない方の腕を回した。
それは極と同じくらいのサイズの魔法の輪となり、それを麒麟に向け投げ飛ばす。
(これで麒麟はこっちに逃げる筈でござる!)
極は先程の麒麟の動きから、ある程度、次の動きを予測した。
あらかじめ、麒麟が逃げる方向へと走り出す。
「ふふっ! 当たりでござる!!」
極は刀を振るい、麒麟を斬り付ける。
「連続でござる! さらに……!!」
麒麟を回転しながら斬り付け、更にその勢いで上空へと飛ぶ。
「コンボでござる! 【エンチャントレインボー】!! 【流星群】!!」
【エンチャントレインボー】の効果により、次のスキル攻撃に全属性が付与される。
おまけに苦手の属性と有利な属性で通常ダメージという事もなく、相手に対して有利な属性が優先されるという効果が備わっている。
七色となった流星群が怯んだ麒麟へと襲い掛かり、トドメの一撃として、極が刀を落下しながらぶん投げた。
「アウッ!!」
麒麟に突き刺さり、その叫びと共に、HPは0となった。
「っと!」
極は受け身を取り、最小限の落下ダメージでとどめる。
「おお!!」
アルカは小さな手でパチパチと拍手をした。
『おめでとうございます』
次の瞬間、元のクイズ番組のようなステージの椅子へと座っていた。
「展開速いな」
『先程のは外れ問題です』
「そうなのか!?」
『はい。では、第2問です。【切り抜き動画】とは、何でしょう?』
極は口元に手を当て悩む。
「何でござろうか? アルカ殿は分かるでござるか?」
「ああ、少しは勉強したからな!」
アルカはドヤ顔で答える。
「生配信の動画の見所のみを短い動画にまとめたものだ!」
『正解です』
「よぉぉぉぉぉし!!」
何がそんなに嬉しいのかは不明だが、まるで学校の苦手教科のテストで90点くらいを取ったかのような表情をしていた。
「やったでござるな! アルカ殿!!」
「ああ! 今の俺は無敵だ!!」
次の問題が出題される。
『第3問です。今回のイベントのコラボVtuberでもある、ミーナさんがGWO内で所属しているクランの名前は何でしょう?』
「【聖なる漆黒】!!」
『正解です』
「よしっ!」
運が良かったようだ。
クランリーダーをしておいて、流石にそのクラン名を答えられなくては終わりだろう。
「第4問です。では、そのクランのリーダーはカゲでプレイヤー達に何と呼ばれているでしょうか? 複数ありますので、1つでかまいません」
「えっ?」
予想外の事態に固まってしまった。
確かVtuberのクイズだった筈なのだが、何かがおかしかった。
「俺陰口叩かれてるの? えっ!?」
「漆黒の破壊龍」
極が答えた。
『正解です』
「えっ!? 俺そんな風に言われてるの!?」
「前、キメラ殿に聞いたでござるが、何かどっかの掲示板に書かれたみたいでござる」
「そうなのか!? まぁ、別にいいけど」
思った程悪い感じで無かったので、よしとした。
『第5問です。【てぇてぇ】とは、どのような意味でしょうか?』
「えっ?」
悩んでいるアルカに極は言う。
「あれ? 勉強は……」
「何だったかな……ちょっと今調べるわ!」
アルカがメニュー画面から、ネットワークにアクセスする。
すると、ビービー! と警報が鳴った。
『反則行為です!! よって不正解です』
若干キレているかのような声でアナウンスされた。
その後、アルカと極の乗っている椅子が爆破され、2人は吹き飛ばされる。




