187.Vクライシス
誤字脱字&2件も評価ありがとうございます!
時は流れ10月2日。
イベント開催の初日だ。
開催前に開会式が開かれる。
今回は開会式にはコラボ対象のVtuberが登場するという事もあり、かなりの数のプレイヤーが第一層のはじまりの街の噴水広場へと集まっている。
「皆、こんにちはリン!」
GWOのマスコットキャラクターである白色の小型ドラゴン、ドラリンが現れた。
噴水の前を翼を使用し、浮遊している。
声は可愛らしいが、真ん中分けの男がボイチェンで声優を担当している。
最初の頃は放送事故もあったが、最近は無事にマスコットキャラクターを演じられているようで一安心だ。
「今回はVtuberコラボイベント、Vクライシスの開会式に集まっていただき、ありがとうございますだリン!」
Vクライシス。
これが今回のイベントの名前らしい。
「ではでは! 皆さまお待ちかねのコラボVtuberの登場だリン!」
ドラリンがおもちゃのようなステッキをどこからか取り出すと、それを振りかざす。
すると地面が光り、そこには13名のVtuberが登場した。
コラボVtuberは元が全員女の子キャラなので、全員が元の姿と違和感の無いアバターで登場した。
アバターはランダム生成なので、完全再現とまではいかないが、服装や髪型などを変更し、かなり近い見た目となっている。
ミーナなど、元からGWOをプレイしているVtuberはそのままのアバターを使用している。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
興奮し、大勢のプレイヤーが叫んだ。
「ミーナ殿がいるでござるな!」
「ミーナもコラボVtuberだからな。いやー、それにしてもVtuberって凄い人気だな」
アルカはVtuberの人気さに驚いた。
「ではでは! 1人ずつ簡単な自己紹介をしていただくリン!」
13人のVtuberは自己紹介を始めた。
そして、6人目、ミーナの番が回って来た。
ミーナは前に出る。
少し緊張気味の様子ではあるが、普段の生配信で慣れているのか、すぐに笑顔で話し始めた。
「えーと! こんにちは! そしてはじめましての方は、はじめまして! 錬金術師のミーナです! 他のコラボVtuberの皆さんはどの方も凄い方ですが、是非私にVコインを投げ銭してくれると嬉しいです! どうか宜しくお願いします!」
ミーナは軽く頭を下げ、その後ニコリと笑顔を振りまいた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ファン達が叫んだ。
「す、凄いでござるな」
「ああ、もはや芸能人だな」
と、その時。
「お゛い゛! 錬金術師! 調子に乗ってんじゃねぇぞ!! お゛い゛!!!!」
金髪ロングヘアで黒いカチューシャを付け、葉巻をくわえたプレイヤーが物凄い声量で叫んだ。
「神ゴッドさん……!?」
マナーの悪いことで有名なプレイヤー、神ゴッドである。
小学生が付けたかのようなアバター名だが、リアルはタンクトップ筋肉ムキムキの金髪スポーツ狩りで強面のサングラスをかけた48歳の男だ。
リアルでは葉巻を愛するあまり、両耳の穴にも葉巻を突っ込んでいる程である。
「お゛い゛! 私もなぁ゛! 本当はそこに立ってたんだぞボケ! お゛い゛!」
「えーと……」
ミーナは目を逸らす。
(最初にこのゲームで会った時から、何故か私の事を前から知ってるような感じ何だよね……。私は覚えが無いんだけどなぁ)
「お゛い゛! 聴いてんのか! 錬金術師!!」
「あ、はい! 何かごめんなさい」
ここでファン達が叫ぶ。
「ミーナちゃんをいじめるな!」
「お゛い゛! いじめてねぇぞ! お゛い゛! ただなぁ゛! 何で私をコラボVtuberに選ばなかったんだって事だ!! お゛い゛!」
ちなみに神ゴッドの【ヴァーチャル☆ちゅぅぶ】のアカウントはBANされている。
「ミーナちゃんが怖がってるだろ!! 俺達が相手だ!!」
「お゛い゛! 私を倒す気か? お゛い゛!!!! や゛っ゛て゛み゛ろ゛!!!!」
神ゴッドとミーナのファンはどこかへと去っていった。
「い、色々あったでリンが次のVtuberの挨拶と行こうリン!」
続けて、残りのVtuberの挨拶が終了した。
「これで全員の挨拶が終了したリンね! では、ここで……ドラリンアドバーイス!!」
「ドラリンアドバイス……?」
「そうだリン! イベントを有利に! そして推しのVtuberを1位に導く為のアドバイスだリン!! えーと、レベルは上げておこうだリン! 特にコラボイベント目当てで始めた人はレベル上げをしておくか強い人を仲間にしておくのがお勧めだリン! そして、もしかすると、途中でルール変更があるかもしれないリン!」
「ルール変更?」
「あっ! もしかするとって事だリン! もしかすると……もしかすると……そんな感じだリン」
会場がざわつく。
「考察班! 頼んだぞ!」
「SNSで拡散だぁ!!」
「誰かレベル上げ手伝って!」
アルカは腕を組み考える。
(この流れは……)
察する。
アルカもこのゲームを始め、そこそこ経つ。
何となく、GWOというゲームの本質が見抜けるようになってきたようだ。
「何か物騒でござるね。あっそうでござる!」
極はアルカの体を登り、頭のてっぺんに立つと手を挙げる。
「ちょっといいでござるか!?」
「何だリン?」
「もし、ルール変更があったとして、プレイヤー同士がVコインを奪えるようになったりはしないでござるか?」
「前回のイベントを反省し、ファン同士ではVコインをあげたり奪ったりはできないようになっているリン!」
「なるほど! ありがとうでござる!」
極はアルカの体から降りる。
「という事でござる」
「俺の言いたい事をいってくれてありがとな」
「どういたしましてでござる!」
ドラリンが言う。
「ではでは! 皆、これから10日間! イベント攻略を頑張ってくれだリン!」
ドラリンとコラボVtuberは姿を消し、イベントがスタートするのであった。




