19:勇者と呼ばれるトッププレイヤー
【オメガトルネード】:
(正式名称;エクシードトルネード)
巨大な竜巻を発生させ、一度でも接触した相手を麻痺、混乱状態にする。
このスキルは、1分間持続する。
このスキルによるダメージは、受けたプレイヤー、又はモンスターの最大HPの8分の1の数値分のダメージ(毎秒)となる。
※エクシードゴブリン専用スキル。
アルカは、飛翔したまま、下を見下ろす。
「大分倒したな……倒したプレイヤーの数、783人か……初心者にしては、かなり奮闘したんじゃないか?」
トッププレイヤーでも、開始早々ここまで倒せている者は居なかった。
それはそうだ。オメガトルネードは、アルカ以外のプレイヤーにとって、初見技、おまけに一発でも食らえば死へ直行するスキルである。
そんなアルカは、多くのプレイヤーに警戒された。
実際には、アルカのスキルでは無いのだが、そんなもの本人以外知る訳が無いので、警戒する他無かった。
「皆! さっきのスキルを食らえば死ぬぞ! 即死耐性スキルを持った友達もやられた! 油断するな!」
すっかり警戒している。
とりあえず、空に居ると集中砲火を食らいそうなので、アルカは地面へと降りた。
(皆、やりあってるな。だが、俺の事を狙ってる奴も多い。とりあえず一発で死なないように【第一の瞳】で、プレイヤーを装備しておくか)
アルカが、その辺のプレイヤーを装備し終えた瞬間とほぼ同時であった。
アルカに、襲い掛かる二刀流の剣士が居た。
「なっ……!?」
あまりの素早さに、アルカは十字に攻撃されてしまう。
だが、驚いたのはアルカだけでは無かった。
「ダメージが無い……?」
「やるな、危うく死ぬ所だった……」
装備中のプレイヤーは、防御力中心の育成をしていた為、装備されているプレイヤーもまだ元気だ。
「まさか、ボクの2刀流を食らっても平気だとは、驚きました」
「君は……?」
周りのプレイヤーは、ざわつく。
「勇者様が来たわ!」
「勇者様だ!!」
勇者と呼ばれているのは、アルカの目の前に居る、2刀流のプレイヤーであった。
右手に、金色の西洋剣、左手に金色のレイピアを携え、金色のマントに、金色の鎧、そして金髪のロングヘアの少女だ。
「噂のドラゴンプレイヤーさん、是非一度、手合わせをしてみたいと思っていました」
金髪少女は、右手の剣をアルカに向ける。
アルカは、スキル、【超音波】を発動させる。
(他のプレイヤーとは、明らかに動きが違う……とりあえず、ここは相手を状態異常にさせる)
「【超音波】ですか……厄介なスキルをお持ちですね」
金髪少女は、アルカのスキルを見抜いていた。
おそらく、かなりのベテランだという事が分かる。
「ですが、回避するのは容易です……はぁっ!!」
レイピアの連続突きがアルカを襲う。
「くそっ! 俺の装備……持ってくれよ!」
いくら防御力が高いプレイヤーといえど、攻撃を受け続けては、耐えられる筈が無い。
「なぜ体力が削れないんですか!?」
「俺のスキルには秘密があってね!」
【第一の瞳】、【第二の瞳】はユニークスキルだ。
よって、このスキルの詳細を知る者は少ない。
「【咆哮】!!」
スキル、【咆哮】を発動させる。
「くっ……中々やりますね。ですが! おそらく貴方のステータスでは、ボクに満足なダメージは与えられません!」
アルカは反撃を貰う。
剣とレイピアでの連続攻撃だ。
(やばい! ……装備が!!)
連続攻撃を食らい、装備されていたプレイヤーのHPは、0となってしまった。
(ここまでか……)
こんな事を思っているが、あれだけの数を倒せれば、コンテストステージには間違いなく行ける。
アルカはそう思っては居ないのだが。
アルカがピンチになったその時である。
一人の侍が、走り、金髪少女の背中に奇襲を仕掛けたのだった。
「その首……貰ったあああああああああああああああああ!!」
目を見開き、勝ち誇った表情をした極であった。
「!?」
金髪少女は完全に油断していた。
周りのプレイヤーは空気を読み、二人の勝負には介入しておらず、金髪少女も襲われるとは思っていなかったのである。
普段であれば、気付けたのだが、アルカとの戦いに熱中し過ぎたのである。
極の刀が、金髪少女の背中を貫いた。
「ボクとした事が……!! ですが、これはゲームです。刺されたとしてもダメージが低ければ問題ありません!」
「そ、そんな……」
確かにダメージは少なかったが、隙を作るという意味では充分であった。
「それはどうかな? 極!! 良くやった!!」
「こ、これは!?」
アルカは、すかさず、【第一の瞳】を使用し、金髪少女を装備する。
金髪少女は、触手に襲われ、アルカの装備品となる。
「た、助かった……」
思わず勝負に見入っていたプレイヤーは後退る。
「ゆ、勇者様が……」
「負けた……?」
厳密に言えば、負けた訳では無いのだが、周りのプレイヤーはそう思っていた。
「力が……溢れて来る!!」
アルカの身体は金色のオーラで包まれる。
「負ける気がしねぇ!!」
アルカは、また一歩、前進する。
「ひっ……」
「皆!! 逃げろー!!」
「食われるぞ!!」
無双ゲームのように、プレイヤーを蹴散らしていくアルカ。
金髪少女のプレイングまでは、得られないが、能力値もかなり高く、特に素早さと攻撃は、かなりのものであった。
「拙者も助太刀するでござる!! 先程のプレイヤーにダメージを与えた時、拙者は新たなるスキルを得たのでござる!! それがこれでござる……【流星群】!!」
極が刀を振るうと、流星が辺りに襲い掛かる。
「何だこのスキル……!?」
「見たこと無いぞ!!」
負けまくっている極が、最強クラスのプレイヤーに一撃を入れられたからこそ、得られたスキルである。
「やるな! 俺も、もっと暴れる!」
制限時間が来るまで、アルカは暴れ続けたのであった。




