182.最強!! 最初で最後!? 究極のアバター!! アルティメットレギオン!!!!
「何をするかと思えば、合体か。錬金窯を使えばそんな事もできるんだね。それはちょっと驚いたけど……私に勝てるようなステータスなのかな?」
「いや、全然届かないな」
アルカが命名した、アルティメットレギオン、以下アルレギは正直に答えた。
『何正直に答えてるのよ!』
『聞かれたからな! それにセイに比べたら弱いステータスなのは戦っていればバレる』
心の中で会話をするクローとアルカ。
そう、アルレギは高いステータスを持っている。
ステータス的にもかなりの強キャラと言える。
だが、今回は相手が悪い。
『アルカ君、クロー君。喧嘩はよしたまえ。この勝負、勝つよ』
『当然だぜ!』
ステータスの数値の高さは、アルレギの強さの本質ではない。
アルレギになった事により、3人のスキルは一時的に消滅し、代わりに2つのスキルを得た。
その2つのスキルこそが、この戦いを勝利に導くチート級のスキルであった。
「正直だねぇ」
セイは杖を槍のように扱い、それをアルレギに突き刺す。
だが、手ごたえが無い。
「どういう事だ……?」
「合体した事により、俺達は2つのスキルを得た。その内の1つのスキルを使用した」
「はっ! たった2つかい?」
アルカはまたしても正直に話した。
そうでなければフェアではないと考えたからである。
「スキル【ウォッチングマイスキル】。今まで発動した事、見た事のあるスキルをMP消費無しで発動できる!」
「言っちゃって良かったのかな? でもそれなら対処は簡単だ。GWOに存在するスキルじゃきっと私は倒せない。仮に倒せるスキルがあったとしても、この素早さでかわせるからね」
「それはどうかな?」
アルカは確かに強いステータスを持っている。
それに、ゲームが下手なアルカでさえも、勝てるほどのスキルも持っている。
だが、今まで戦って来た相手もそんなアルカを追い詰める程に強かった。
そう、実際に経験したのだから分かる。
今まで見てきたスキルを使えば、勝てる、と。
「ちなみに今のスキルは【すり抜け】。1分間あらゆる攻撃、スキルをすり抜けるスキルだ」
「そんなスキルがあったのか……!?」
「研究不足だ。あるんだよ。運営が過去に特定のプレイヤーに託した激強スキルがなぁ!!」
パーティ対抗トーナメントで、【エレメンタル☆シスターズ】に運営が託したスキルの内の1つ、【すり抜け】。
他のスキルとの同時使用が可能な上、1分後に再度使用すれば事実上、永久的にすり抜け状態だ。
実は、攻撃時に一瞬だけ、すり抜け状態が解除されるという弱点がある。
ちなみに同時使用不可能だったとしても関係が無い。
合体した事により、同時使用不可能なスキルを同時使用可能に、そして同じスキルを重複して発動できるようになる、【マルチスキル】というスキルも得ているからだ。
「どうせ、弱点があるスキルでしょ?」
「ああ、ある」
アルレギは攻撃の体勢に入る。
「特別性、【破壊道】!!」
「何が特別性なのかな?」
先程までの癖でセイは攻撃を食らう。
「あまりダメージは無いなぁ」
セイはつまらなそうにする。
「結局は防御面が強くなっただけか……」
「いや、特別性だと言った筈だ」
【破壊道】は口から光線を発するスキルだ。
そんなスキルに別なスキルを上乗せした。
「レベルを見てみるんだな!」
「レベル……? 何っ!?」
セイは自身のレベルを確認すると、【1】になっていた。
アルレギは、クレイジーフィッシュの【レベルドレイン】を【破壊道】に上乗せしたのだ。
ちなみに、敵モンスターだったので、アルカ達はスキル名をここで初めて知った。
「くっ! こんな効果があるとは知らず食らいまくってしまった」
「この戦いが終わったら、ミーナのアイテムで元に戻すから心配無用だ」
「はっは! 優しいね。でも、私のレベルを下げても、スキルにより能力値が底上げされてるんだ。大した影響は無いさ」
セイは少し焦ったが、すぐに余裕そうにする。
「そうか……」
『どうやら、この合体に時間制限も無いみたいだな。これじゃあまりにもチートだ。少し待とう』
『え!? トドメをささないの!?』
『ああ。頼む10分だけ時間をくれ』
アルカはクローに、お願いをする。
『アルカ君。君は本当に面白いね。いいだろう。ただし、10分だけだよ』
『カノンまで!? もう! 仕方がないわね!』
『2人共、ありがとう!』
アルレギは動きを止める。
「10分だ」
「?」
「10分だけチャンスだ。その間、俺は攻撃をしない」
「何を言い出すかと思えば……随分と偉そうだね」
アルレギはすり抜けを解除する。
「随分となめてるね。ファイアボール!!」
腹部にヒット。
辺りが煙で包まれる。
「何がしたかったんだろうね?」
セイが呆れていると、煙が晴れる。
「何っ!?」
そこに居たのは、HPが減っていないアルレギであった。
「スキル【無敵化】を発動させておいた。これにより、俺の状態異常は【無敵状態】へと変化する。よって、全ダメージ無効」
「何それ……、もうただのチートじゃん……」
これは、変身ベルトでヒーローに変身した際に一時的に得たスキルだ。
最も、変身ベルトがすぐに壊れてしまった為、アルカとキメラ以外誰も知らないスキルであった。
「だったら……ファイアボール!! ファイアボール!! 時間制限が来るまで攻撃を連発してあげるんだから!」
次々に反則級の威力を持った火球がアルレギの体に叩き付けられる。
だが、ダメージは0。
「悪いな。【無敵化】に時間制限は無いんだ」
「はぁ!?」
おそらく、変身ベルトがすぐに壊れてしまったのも、このスキルにより、ゲームバランスが崩壊しないようにだろう。
だが、今は関係ない。
「ハッタリに決まってる!! ファイボール!!」
次々に火球を打ち込むが、相変わらずHPが減る気配は無い。
『アルカ君。時間だよ』
『アルカ! 絶対に決めるわよ! 別にゲーム何だから遠慮くなくやっちゃっていいのよ!』
『ああ! 約束は約束だ! それに……優勝するってカノンちゃんに約束したからな!!』
アルレギは、戦闘態勢を取る。
「悪いな。時間だ」
「そうだね。時間だね。でもさでもさ。このイベントのルールってポイントが一番高いクランが優勝するんだよ? 私が倒されない限り、いくら君達がゾンビでも優勝はできないよ?」
「知ってる。だから今、君を倒す」
「今度こそ、ハッタリ……?」
「違う。残念だけど、君を倒せるスキルは備わっている。それも特殊勝利何かじゃなく、ステータスでHPを削り切れるスキルをね」
「ふーん。どっちでもいいや。もう相手してられないや」
セイが逃走しようとしている。
アルレギはすぐさま、ウインドのスキル【増殖】を発動させる。
自身を10体へと増殖させ、街の出口で待ち伏せさせた。
これでダメージが入らない街の中へは逃げられない。
「ぐっ! 邪魔!」
「悪いな。そして、チートなこのスキルを更にチート化させてやろう」
【マルチスキル】の効果で、同じスキルを複数重ねて発動出来る。
それを利用する。
「【増殖】に【増殖】を重ねる! そしてそれを更に【増殖】!! これを繰り返す!!」
「へ!?」
セイの周囲には信じられない光景が広がっていた。
「さあ! 決着を付けようか!」x1万
1万体へと増殖したアルレギが声を揃えた。
空、地面、あらゆる所にアルレギがいる。
「どええええええええええええええ!?」
グリフォン好きには天国のような光景だろう。
だが、セイは違うらしく、目を見開いて驚いた。
「手数でHPを削ろうって作戦……? で、でもそんな少量のダメージを受けてもすぐに回復するんだから!!」
「それはどうかな?」x1万
「え……?」
「スキル発動! 【Heelアタック】!! 次の攻撃を行う際、相手の攻撃力を参照する!!」x1万
神ゴッドのスキルだ。
「ふぇ!? 私の攻撃力をぉ!?」
「更に念には念を入れ、【ゴッド・オーラ】発動!! 1分間、攻撃力を100倍にする!!」x1万
「何……何でそんな変なスキルばっかり!!」
アルカは、フレイムの【ゴッド・オーラ】を発動させる。
「はああああああああああああああああああああああああああ!!」x1万
アルレギ達が、【ゴッド・オーラ】を発動した証拠に、赤いオーラを身に纏った。
「私は……この大会に優勝して……目立ちたかった……。でも、もう無理なんだね……」
アルレギ達は、体をドリルのように回転させると、全員が次々にセイに襲い掛かった。
「いっけえええええええええええええええええええええええええええ!!」x1万
全員が物凄い勢いで突っ込み、辺りが砂煙で包まれた。
そして……。
「ぐっ……!」
仰向けに倒れ、空を見つめるセイ。
HPは既に0。
粒子として消滅し始める。
アルレギは、増殖を解除し、続けて合体を解除する。
「私の負けか……残念だなぁ」
「いや、1対1なら俺が負けてたよ」
「でもスキルでステータスを底上げしてただけだよ……? どうせ、素のステータスでは君の方が上だったよ」
「そういうスキルを見つけるのもゲームの醍醐味だし実力だって、昔キメラちゃんが言ってた」
「そう……」
「ああ。というかそれを言ったら、俺達も大分ズルいだろ」
「あはっ……確かにそうだね!」
「後、君はこの世の主人公になるって言ってたけど……人は皆」
「人生の主人公だって言うんでしょ?」
「そうだ!」
「君の仲間も同じ事を言ってたよ。でも私は目立つことが主人公の条件だと思う。皆からの人気者で知名度も高いのがね……。だから、同じ考えにはなれないよ」
「おお! いいね! だったら、それを目指してみようぜ!」
「目指してたら阻止されたんだけどな……」
「うっ、いやでも、うん」
何も言えないアルカであった。
「あはっ、面白いね、君。じゃあ、そろそろ時間みたいだから」
「あっ、そういえば、何で消えるスピード遅いんだ?」
「処理落ち的な何かかもね。でももう消えるみたい。最後に一言いいかな?」
「何だ?」
「さっきの増殖した君達、中々に怖かったよ」
彼女はニコリと笑うと、消滅した。




