176.圧倒的なステータス
アルカ達が会議室でジルコ達と話をしている時の事である。
公式チートスキル、【お助け☆サポート】を得たセイは、今もプレイヤーからポイントを奪っていた。
とは言え、セイが危険なプレイヤーという事は多くの人が分かっているので、街にこもっているプレイヤーも多い。街の外でキルをされてしまえば、ポイントが奪われてしまうからだ。
街の中でもバトルモードで敗北をしてしまえば、ポイントを奪われてしまう。
なので、セイからバトルモードでの戦闘を挑まれても、それを受理しないように注意を呼び掛けている親切なプレイヤーもいるようだ。
そんな中、勇敢にもセイに勝負を挑もうとするプレイヤーが2人居た。
「ウェイ!!」
ペストマスクを装着し、黒いローブに身を包んだ不審なプレイヤー、【リアジュー】。
競馬では、極とジルコに襲い掛かったプレイヤーだ。
「皆の為に、ルミ頑張っちゃうぞ☆」
アイドル衣装に身を包んだ新人Vtuberプレイヤー、【ルミ】。
女神イベントの際に、アルカ達の前で女神にボコボコにされていたプレイヤーだ。
「いいのかな? 今の私に挑んでも」
実に余裕そうに問いかける。
だが、2人は怯む様子は見せない。
「ウェイ!!」
「皆の為に、負ける気はないよ!」
武器を取り、戦闘態勢に入った。
「凄い勇気だね。でもいいよ。私も全力で相手をしてあげる」
セイは杖を取り出すと片手で構える。
上部が白い龍の顔を模した形になっている。
「ウェイ!!」
最初に攻撃に出たのは、リアジュー。
フレンドがいればいる程攻撃力の上がる銃剣、ブラザーガンソードを装備している。
上限の100人をフレンドにしているリアジューが使用すれば、かなり凶悪な武器だ。
「ウェイ!!」
見事にヒットした。
避けようともせず、棒立ちだったのだから当然だ。
「いくよ!! 【トルネード】!!」
ルミも棒立ちのセイにスキルでの攻撃を仕掛ける。
小型の竜巻が多段ヒットする。
「エンジョイ勢だからって甘く見ないでよね! 普段の配信でリスナーさんに助言をたっぷり貰ってるんだから!!」
「そうなんだ」
「え……?」
セイのHPゲージは、ほとんど減っていなかった。
正直、ルミのアバターの能力、レベルは共に低い。
まともに食らっても大きなダメージにはならないプレイヤーも少なくはない。
「ルミさん。レベルが足らないし、ステータスが足らないよ」
その通りであった。
だが、それ以上に驚いていたのはリアジューであった。
「ウェイ……?」
「その仮面で表情は見えないけど、驚いているみたいだね」
フレンド上限&ブラザーガンソードのコンボで数々のプレイヤーを今まで倒してきた。
競馬の時もそうだ。
だが、そんなリアジューの攻撃を受けても、ほとんどHPゲージが減っていないのだ。
まるで、レベル1のプレイヤーがレベル70のプレイヤーに攻撃したかのようだ。
「驚いているようだね。残念だけど今の私のステータスはチート級。でも勘違いしないでね。これは立派なスキルで得たステータスだから」
お助けポイントに777をかけた数値が全てのステータスに加えられている。
今回のイベント限定とはいえ、チート級であった。
「ウェイ!!」
だが、リアジューは諦めない。
2本目のブラザーガンソードを左手に握り、二刀流を披露する。
「火力を上げる作戦か」
相変わらず余裕そうなセイ。
「はあああああああああ!! 【ハイトルネード】!!」
中サイズの竜巻を放つスキルで、ルミも追撃をする。
「ウェイ!!」
リアジューもスキル【Tハイパースラッシュ】を発動させる。
左右の武器が黄色に光り、一撃を加え、更にもう一撃をもう片方の武器で加える。
最近実装された二刀流専用スキルである。
「さっきより、ほんの少しだけ効いたね」
「ウェイッ!?」
よく見ないと分からない程である。
いや、よく見ても分からないかもしれない。
それ程までにも、HPゲージが削れていない。
「【ヒール】」
そして、そのダメージすらも秒で回復されてしまう。
「嘘でしょ……?」
「ウェイ……」
流石の2人も、諦めかけていた。
これではいくら攻撃しようとも、すぐに回復されて終わりだ。
「ごめんね。これが今の私なんだ」
悪気無さそうな表情で言った。
「今の私のステータスなら……そうだね。軽く殴るだけで2人のHPは削れてしまう。けど、それだとあまりにもかわいそうだ。だから、私の自慢のスキルでトドメをさしてあげる」
セイは深呼吸をし、スキルを使用する。
「【白龍化】」
セイの体に光が流れ込むと、体が粒子となり、それが再構築される。
そして、姿を変える。
「こんなネタスキルでも、今のステータスだと映えるねぇ」
真っ白な翼を生やした、純白の龍が出現した。
「飛べるようになるのはいいんだけど、毎秒MPがゴリゴリ削られていくし、体が大きくなる分、当たり判定も大きくなるからあんまり使わなかったんだ。けど、今の私ならMPもチート級にあるし、いくら当たっても問題ない」
その風格は、まるでラスボスのようであった。
「【ホーリーブラスト】」
「は、速い」
素早さも上がっているセイは、一瞬で2人の近くに移動し、口から真っ白な光線を放った。
2人のHPは一瞬にして0となった。




