175.聖女
「野蛮だね」
「全くですわ!」
【白く染まる闇】が見つからなかったので数時間、情報収集を行った。
その後、【聖なる漆黒】のクランハウスの会議室に集合し、得た情報をまとめていた。
クランメンバーのいつもの6人以外に、別クランメンバーである、ジルコとエクレアが椅子に座っている。
情報収集をしている中、この2人と出会い、事情を説明した所、会議に参加したいと言い出したのだ。
「まさか、ジルコちゃん達が協力してくれる何てな」
「本来ならアルカさん達は敵ですが、どこの誰かも分からない連中に優勝は譲りたくありませんわ」
「確かに、俺も悔しい思いはある。チートでは無かったものの、このイベントの趣旨とは大きく外れているからな」
アルカ達が聞き込み調査を行った結果、【白く染まる闇】の被害にあったプレイヤーに何人か出会えた。
「それにしても、運営さんは何を考えているのでしょうか?」
キメラが困った顔をしながら、口元に手を当てた。
「分からないね。ただ、逆転要素としては面白いかもね。それ以外のプレイヤーにとってはたまったもんじゃないけどね」
カノンが「やれやれ」とでも言いたげな表情で言った。
「とにかくですわ! どうにかして止めないといけませんわ! ああああああああああああああああああああああ!! ムカつきますわ! イライラしますわあああああああああああああああああああああああ!!」
ジルコはメニュー画面のランキングを見ていると、イライラが限界に達したのか、立ち上がり、叫びながらメニュー画面をぶん殴った。
メニュー画面は凄い音と共に吹っ飛び、地面に落ち、砕け散る。
「ちょっ! ジルコちゃん落ち着いて!」
「はぁぁぁ……はぁ……ふぅ、ちょっとすっきりしましたわ」
アルカは少し引きながら、落ち着くように促す。
エクレアは「相変わらず野蛮だね」と呆れる。
「ともかくだ。大量にポイントを獲得できた理由が判明した今、それを止める為には【白く染まる闇】と戦うしかない」
被害者から得た情報によれば、【白く染まる闇】のリーダーと戦闘を行い、その勝負に負けると全お助けポイントが消失していたらしい。
そして、鑑定系のスキルを持った被害者から得た情報により、その理由が判明した。
スキルに秘密があったのだ。
★スキル名
お助け☆サポート
★効果
イベント【お助け☆ガールズ】限定スキル。イベントが終了し次第、このスキルは消失する。
プレイヤーをキル。又はバトルモードで勝利した際に発動する。
●倒したプレイヤーの所属クランのお助けポイントを全て自クランのお助けポイントに加える。負けた場合はこのスキルを持つプレイヤーが所持しているクランのお助けポイントを全て、相手プレイヤーの所持クランに加える。
●このスキルを持つプレイヤーのステータスの値は全てに、所持お助けポイントに777をかけた数値が加えられる。この効果はイベント終了時まで持続される。
「だけど、こんな野蛮なスキルを持ってるんだよ? 勝機はあるの?」
エクレアの言う事はもっともである。
相手のステータスは凄まじく、負けると全てのポイントを奪われる。
戦闘を挑むだけでも大きなリスクである。
「分からない。けど、ここでやらないと駄目な気がするんだ」
「熱いね」
プレイヤーの多くはこの現状に納得がいってない。
バトルモードならデスペナが無いと思い、勝負の申し出を受け、全てのポイントを失ったプレイヤーもいる。
「キメラ君。そのスキルを所持しているプレイヤーのデータはまとめ終わったかな?」
「はい。こちらです」
メニュー画面のメモ帳機能を使用し、皆にそれを見せる。
★プレイヤーネーム
セイ
★職業
聖女
★レベル
70
「分かっているのはこれだけです」
「聖女? 聞いたことない職業だな。ユニーク職業か?」
「珍しい職業ですが、ユニーク職業ではありません。一言で言い表すのでしたら、魔法使いとヒーラーのいい所取りみたいな感じですね」
高ステータスから、遠距離系スキルをぶっ放されてはたまったものではない。
「強敵だな。おまけにヒーラー要素もあるって事は、回復力も半端ないって事だろ?」
「そうですね……」
非常に強力な相手のようだ。
「だけど、幸いなのはスキルの効果が及んでいるのがセイ君だけという点だね」
他のメンバーは普通のステータスのようだ。
「本当に不幸中の幸いだな。本当は1対1で倒したかったんだが、そうも言ってられなさそうだな」
「何かあれみたいでござるな……そう! レイドバトルでござる!」
「相手は一般プレイヤーだけどな」
所持ポイントの777倍の値が全ステータスに加えられている。
正直、レイドボスよりもよっぽど強力だろう。
「正直、これ以上、犠牲者は出したくない。ここは俺達だけで何とかしよう!」
「おお! アルカ殿が少年漫画の主人公みたいな言動を!」
「勝てば全ポイントを奪えるんだ。そしたら、俺達の優勝は決まりだ!」
「なるほどでござる!」
2人の会話を聴いたジルコは叫ぶ。
「ポイントは私達のものですわ!!」
「悪いけど、大事な仲間が優勝したがってるから……ごめんな?」
「だったら! どっちが先に倒せるか勝負ですわ!」
「そうだな。早い者勝ちだぜ!」




