169.眠れない時は……
誤字脱字ありがとうございます。
【聖なる漆黒】の面々は、カノンの提案により、眠りにつく事に決めた。
各メンバーが自室を持っており、それぞれそこで眠る準備を整えていた。
「ゲームの中で眠るだ何て、何だか不思議な気分だな」
アルカはベッドに横になり、考えていた。
「思えば、ゲームの中でこうやって横になってゆっくりするのも、数える程だな」
GWOでは、アルカは主に戦闘行為を行っていた。
その為、GWO内でこうやってゆっくり横になったのは数えるほどしかない。
そして、しばらく経ち。
「眠れないぞ」
アルカは眠れないでいた。
現実世界のカケル状態であれば、10分も経たずに眠れるのだが、ゲーム内ではそうもいかなかった。
そして、眠れないのはアルカだけではなかった。
コンコンとノックが鳴り響く。
「アルカ殿~」
「極……?」
クランメンバーである、極がアルカの部屋を訪ねた。
ちなみに、アルカと極以外は無事に眠れたようだ。
「ちょっと眠れないでござる」
「奇遇だな。俺もだ」
アルカは極を自室へと招き入れた。
「さて、キメラ殿ではないでござるが、眠くなるまで何かしないでござるか?」
「いきなりだな。じゃあ、やるか?」
アルカはメニュー画面を開き、バトルモードをタップし、戦闘に移行しようとしていた。
「ちょっ! 皆の迷惑になるでござるよ!」
極がそれを阻止する。
「やらないのか?」
「いや、皆寝てるでござるから」
「そっか。じゃあ、ラーメンでも食べるか?」
「それもちょっと……」
「じゃああれか? 枕投げとかするか?」
「戦闘になりそうで心配でござる……あっ! そうでござる!」
極は何かを思い付いたようだ。
「アルカ殿のリアルのお話を聞きたいでござる!」
「俺のか?」
本来であれば、リアルの事を聞くのはマナー違反だが、GWOを始める前から仲良くしていたので、思い切って聞いてみたようだ。
「そうでござる。アルカ殿ってぶっちゃけ謎が多すぎでござる」
「そうか? 普通の人間だぞ?」
「いや、それは分かるでござるが、何というかアルカ殿とは結構お話しているのに、リアルの事はあんまり聞いた事ないなと思ってでござるな」
「それを言ったら、俺も極のリアル事情を聞いたのは割と最近だぞ?」
「話さなかったでござるからな。で、それはそれとして……アルカ殿のリアルの情報を聞きたいでござる!」
「別にいいけど、つまらないと思うぞ? っていうか何を聞きたいんだ?」
「性別、年齢、趣味、なぜGWOを始めたのかを教えてくださいでござる」
「面接かっ!」
アルカは思わずノリ突っ込みを入れ、本棚を拳で粉砕した。
「うおっ! びっくりするでござるな」
「年齢以外は知ってるだろ!」
「確かに!」
性別は話している内に何となくバレ、趣味もGWOを始める前に携帯ゲームを少しやるくらいだと、話した事がある。
GWOを始めた理由は、そもそも極に誘われたからである。
「ちなみに年齢はだな……」
「ちょーっと待つでござる!!!!」
「な、何だよ。急に大声出すなよ。びっくりするし、皆眠ってても起きるだろ」
「年齢当てクイズ」
「?」
「アルカ殿の年齢を今から当てるでござる」
極は顔に手を当て、口角を上げ、考える。
「働いているのは分かっているでござるから……21歳でござるな?」
「惜しい」
「22?」
「惜しい」
「う~。これ以上は運ゲー過ぎて卑怯でござるからな。ギブアップでござる」
「じゃあ、正解は……28歳だ」
「嘘だぁ!?」
極は驚く。
特にオーバーに驚いた訳ではない。
予想外過ぎてびっくりしたのである。
「何でそこまで驚く!?」
「えーだって……何か、精神年齢と不一致なような、そうでないような……。後思ったより年齢離れてるでござるな……これは敬意を払わなくてはならないでござるか?」
「別に敬意は払わなくて構わない。というかその発言で既に敬意を払ってないからな」
「失礼したでござる。いやぁ、まさか拙者の年齢x2だとは思わなかったでござる」
「そういえば、極は中二だったな。だが心配は要らない! 年齢は飾りだ。現実世界の大人もほとんどは自分が想像する“大人”という生物になりきるロールプレイをしているだけだからな。中身はきっと皆、子供の頃から大きくは変わっていない筈だ。少なくとも俺はな」
「アルカ殿が言うと説得力あるでござるな」
「だろ? 何てったって、俺の精神年齢は14歳くらいだろうからな」
アルカはドヤ顔で言い放った。
「じゃあ、これまで通り接するでござるな!」
「そうしてもらえると助かる」
2人はベッドに横になり、会話を続けた。
しばらく経つと、眠くなってくる。
「俺も学生に戻りたいなぁ~……」
「じゃあ、私が魔法使いになったら若返らせてあげるよ~……」
2人共、瞼が半開きで、意識が朦朧としていた。
極も侍口調が抜けている程である。
「せめて才の授かりで当たりの才を引けてればなぁ~……」
「何それ~……」
「何って、生まれた後に病院で……」
言い終える前に、眠気が限界に達し2人は眠りについた。
すやすやと気持ちよさそうに眠っている。
そして、文字通り、夢の世界に案内されるのであった。




