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166.アンケート

誤字脱字報告、ありがとうございます。

「いやぁ、疲れたねぇ」


「そうですね……。現実世界で体を動かしている訳ではないですが、こうもずっと歩いていると疲れますね……」


 キメラとカノンは、アルカ達と別れた後、第3層を散策していた。

 魔王に支配されているという設定の層であり、つまづくプレイヤーも層で多いである。

 2人にとっては既に突破したエリア。

 物騒な雰囲気とは裏腹に、大して危険という訳でもなかった。


「何で依頼が見つからないんですかね」

「プレイヤーが多いからじゃないかな?」

「まぁ、そうですけど……何か悪いじゃないですか」

「何がだい?」

「見てくださいよこのポイント」


 キメラはメニュー画面を開くと、現在の獲得お助けポイントをカノンに見せる。


「クランメンバーの皆さんはこんなにポイントを入手しているんですよ? 私達だけ0ポイントって何か悪いような気がします」


「別にサボっていた訳ではないんだ。本当に君は真面目だね」


 休憩しようという事となり、木を背もたれ代わりとし、地面に座る。


「いい天気だね」

「滅茶苦茶暗いですけど」

「魔王に支配されているからね」


 カノンは紅茶とティーカップを召喚し、飲む。


「突然だけど質問だ。何か願いはないかい?」

「本当に突然ですね」


 キメラは突然の質問に驚きつつも、「願いですか、そうですね……」と真面目に考え、答える。


「このゲームがずっとサービス終了しなければいいなぁっていうのが願いですかね?」


 失恋してしまったキメラにとっての願いはこれくらいであった。


「初のVRゲームって事で思い入れもありますし、全プレイヤーが女の子の世界っていうのもまた面白いです。年をとってもこの世界でなら、ずっと若いままでいられますしね」


「そうか。ま、確かに悪くないね」

「というか、何で急にそんな事聞いたんですか?」

「いや、何となく願いを叶えたい気分になってね」

「何となくで願叶えるんですか……?」

「そう思ってたんだけど、君の願いは私ではどうにもできなさそうだ。運営次第だろうね」

「そうですね。あっ、じゃあ私が聞いちゃいます。会長の願いは何かありますか?」

「何だい、叶えてくれるのかい?」

「できることなら!」


 カノンは紅茶を飲み干すと、ティーカップを思いきりぶん投げ、答える。


「現実世界でロボットを操縦してみたい。激レアなプラモデルを組んでみたい。後は……」


 普通の学生のキメラには無理そうな願いであった。

 全てを言い終わる前に、キメラは口を開く。


「すみません。無理でした」


「やっぱりそうか。ここは無難にケーキが食べたいとか答えたらおごってくれてたのかな?」


「それくらいでしたら……。会長にはいつもお世話になってますしね」

「じゃあ、それにしようかな」


「じゃあ、このイベントが終わったら行きましょう! 確か最寄りの駅にケーキ屋さんができたんですよ!」


「分かったよ。楽しみに待ってるよ。あっ、そうだ」

「?」

「ちょっといいかな? さっき言いかけてたことなんだけど」

「また無茶なことでしょう?」


 キメラはちょっと困ったような表情をしつつも、一応聞くことにした。


「私の問いに答えて欲しい」

「問いに答えるだけですか……?」


「ああ。ちょっとしたアンケートだよ。あっ、でもこれは任意だからね。ケーキ奢りは無しにはならないよ」


「わ、分かりました」


 何だかハメられたような気をしつつも、“アンケート”に答える。


「何でこのゲームは炎上しないと思う?」

「え?」


 不満の声はあるが、炎上という程に大きな批判は起こっていない。


「GWOくらいなものだよ。初期のアバターが完全にランダムで、アバターによって能力値にも差があるゲームだなんて」


 全プレイヤーが女の子のVRゲームもこのゲームくらいなものであったが、カノンはそこには特に注目はしなかった。


「何でだと思う?」

「何でって言われましても……現実の世界もそんな感じだからじゃないですか?」


 キメラはシンプルに一言で答えた。


「ほう」


「現実だって、生まれた時点で能力値が決まっていますし、必ずしもなりたい職業になれる訳でもありませんから。ほら、VRゲームって普通のゲームと違って現実世界にいるかのようにプレイできるじゃないですか。だから現実と同じような理不尽さがあっても許されていると思うんです。流石にVRじゃないゲームでやったら炎上確実だと思いますけど」


 キメラは困り眉をし、軽く笑いながら言った。

 カノンは「うんうん」と、同じく笑いながら頷く。


「ありがとう。自称ゲーマーの貴重な意見が聞けて嬉しいよ」

「だから自称じゃありませんってば!」

「ははっ! ごめんごめん」


 と、その時。


「うぎゃああああああああああやああああああああああんんんんんぎょっ!!」

「ポイント寄こせ」


 プレイヤーの悲鳴と声が聴こえた。

 2人はそちらの方向へ少し歩くと、何やら揉めているようであった。

 1人のプレイヤーがもう1人のプレイヤーに対し、ポイントを請求していた。


「ポイント寄こせ」

「だ、だからそういうの困るって言ってるじゃないですか……」


 ポイントを請求されているプレイヤーは、戦闘向けとは言えないアバターをしていた。

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