161.競馬
通話を終えた極はメニュー画面を閉じる。
「で、どうしろって?」
クローは極に尋ねる。
「単刀直入に言うと、『ここのカジノで一儲けして、何とかランキング1位に戻って欲しい』と言われたでござる」
「はぁ!? 無茶苦茶だわ!」
「拙者もそう思ったでござるが、先程大量に入ったポイントはアルカ殿とミーナ殿が入手したものらしいでござる。それもあるので、断るのも気が引けたでござる。ほら、拙者達、まだ依頼を見つける事もできてないでござるから……」
「よくもまぁ、あんなに大量にポイントを入手したものよね。きっと何か変な依頼でも見つけたに違いないわ。でも……確かにそうよね。これが私達にできる事であれば、やるしかないのかもしれないわね」
2人はカジノ場に入る。
「未成年もプレイしているゲームで堂々とカジノ何ていいのかしら?」
「拙者達の世界とは法律とか違うかもしれないでござるから。それにモンガルのミニゲームでも、スロットとかあるでござろう?」
「それもそうね。とは言ったものの、何から手を付ければいいのかしら?」
スロット、パチンコ、その他色々ある。
「パチンコはよく分からないでござるなぁ」
「私もよ。スロットなら何とか……あっ! あそこに行ってみない?」
クローが指を指したのは、競馬エリアである。
「ほら、極って動物好きでしょ?」
「好きでござるが……競馬詳しくないでござる」
「確か誰が一番になるかを予想するんでしょ? それならルールも簡単だわ!」
「そうでござろうか?」
クローが馬券売り場へと走り、機械を操作する。
食券機のような感じで購入できるようだ。
「とりあえず、500ポイント賭けようかしら?」
「500ポイント!?」
極は驚いてしまった。
約半分のポイントを賭けると言ったからだ。
「駄目?」
「初めてなのに賭けすぎでは……?」
「何言ってるの! カジノ場が設置されている時間は限られているわ! それなら、最初から大量に賭けるに限るわ! あっ、ほら! もうすぐ始まっちゃうわ!」
ピッピッピと、機械を操作すると、最後の決定ボタンに蹴りを入れ、決定した。
「不安でござるな。で、どの馬のを買ったでござる?」
「この馬よ!」
クローは競馬場の全身ミントグリーン色の馬を指差した。
名前は【最強】だ。
「最強って言うくらいだから速いに決まっているわ!」
「色が不健康そうでござるな」
他の馬は茶色や白、黒だが、最強だけはミントグリーンであった。
「とりあえず、始まるわ!! 応援するわよ!!」
「そうでござるな!! 頑張るでござる、最強!!」
時間になったので、馬がスタンバイを始める。
スタートの合図と共に、ゲートから馬が飛び出した。
『アアアアアアアアアアアアアアア!!』
最強は叫んだ。
最強は、その名の通りの実力を持っていた。
序盤から全力全開を出し、一気に前に出た。
「速いわ!!」
だが、他の馬も負けていない。
『ヒヒーン!!』
最強に追い付こうとした馬が居た。
『アアアアアアアアアアアアアアア!!!???????!!!!!』
最強は突然止まり、追い付こうとした馬の騎手を、本気の蹴りで吹き飛ばした。
『アアアアアアアアアアアアア』
『ぐおっ!?』
最強に蹴り飛ばされる騎手。
観客席まで飛ばされたようだ。
幸いにも意識は失われていない。
『おおおおおおおおおおおおおおっと!! これは痛そうだ!! 骨折したかぁ!? レースに復帰することはできるのでしょうか!?』
実況が言った。
『大丈夫だ……!! 我が命をかけてでも……優勝に導く覚悟だ……!!』
そんな実況の言葉に対し、強がる。
ボロボロになった騎手は、再び自らの馬の元へと急ぐ。
『ヒヒーン……』
『心配するな!! まだレースは終わっていない!!』
☆
「……ごめん」
「クロー殿のせいじゃないでござるよ……」
最強は、あの後取り押さえられ、退場となってしまった。
残念ながら、失格扱いだ。
ちなみに最強は、更生施設に入れられる事となった。
「まさか、あんなアクシデントがあるだ何て……」
「拙者も予想してなかったでござるよ……」
2人して、表情を暗くする。
「リアルでも、競馬に負けるってこんな気分なのかしら……?」
「そうかもしれないでござるな……うぅ、500ポイント……」
すっかり反省ムードである。
「貴方達、残念だったわね」
金髪ウェーブで、ちょっとアウトロー感を漂わせるお姉さんプレイヤーが極達に話しかけた。
「あんたは?」
「おっ! 気が強いね! 嫌いじゃないよ、そういうの。私の名前は【ギル】。クラン【デンジャラスギャンブラーズ】のリーダーをやってる」
「今ランキング1位の!?」
「そうだよ。えーと、極ちゃんにクローちゃんね。ちょっと騙されたつもりできいて欲しいんだけど……裏カジノ場に興味はない?」
「裏カジノ場?」
ギルはちょっと悪そうな笑みを浮かべる。
「ここより掛け金が何倍にもなるエリアさ。私もたまたま見つけてね。そこで荒稼ぎしたって訳さ」
「で、何で私達にそんないい情報を教えてくれるわけ? 何か企んでる」
「企んでると言えば企んでる」
「やっぱり……」
「とは言ってもハメるつもりはないよ。正直に言うと、私は見たいんだ。貴方達のギャンブルをね。さっきの賭け方といい、馬の選び方といい、貴方達は間違いなく持ってる。裏カジノではどんな戦いを見せてくれるのか……それに興味があるんだよ」




