159.巨大化バトル
黒い渦、ブラックホールとでも呼べそうなそれに吸い込まれ、姿を消す2人。
2人のＨＰゲージが0になると、ブラックホールは消滅した。
即死攻撃と呼ばれる類のものだったらしい。
怪獣は勝利のオタケビをあげる。
「ヘヌウウウウウウウウウッッッ！！」
だが、勝負は終わっていなかった。
「そんなヘナチョコな攻撃、効かないねぇ」
何と、ＨＰゲージが半分にはなっているが、2人共生きているではないか。
倒れた筈の2人が怪獣の目の前に再び現れた。
驚いている怪獣に対し、アルカは少し意地悪そうな笑みを怪獣に向けた。
「リスナーの皆さん、何で平気なのか？ 疑問ですね？ 説明しましょう☆」
ミーナはVtuberとして配信者をやっているので、癖で説明を始めた。
「私が錬金したアイテム、【復活の果実】の効果！ HPが満タンから0になった時、それを所持している場合、オートで発動！ HPが半分の状態で再び復活する事ができます！」
ほとんどのイベントや対戦では禁止されている上、レア素材を使用する必要がある。
おまけに1人につき、1つしかアイテムストレージに入れておく事ができない。
アルカとミーナが言っていた、“あれ”とは、これの事であった。
「流石配信者。慣れてるな。だが、今は残念ながら配信中じゃない」
「あっ、そうでした☆ ってどうするんですか？ もう後が無いですよ？」
「そうだな。とりあえず、ブラックホールを使わせないようにするか」
「さっきは、発動するまで見てましたからね」
即死攻撃という事もあり、反動があるのだろう。
怪獣はグッタリとして、動けなくなっている。
「とりあえず、今の内に攻撃だ！ ミーナも頼むぞ！！」
「はい！！」
2人が張り切っている所に、何者かが走って来る。
「2人共！ 普通の攻撃じゃ、あいつにはほとんどダメージが通らないよ！」
「は？」
逃げていた、ミラクルであった。
ダメージが通らないとは、どういう事であろうか？
「これを！ 【巨大化の種】！」
「巨大化の種……？」
「うん。これを食べると、怪獣と同じくらいに大きくなれるんだ！ 他のパラサイトリザードマンから急いで貰って来たんだよ！ １つしか無い秘伝の種だから、どっちか片方が食べてね！」
（んなもんあるなら、最初から言っとけ！！）
アルカは心の中でそう思った。
実際は怪獣との戦闘が開始してから、一定時間が経ったため、勝利へと繋がるイベントが発生したというだけである。
「アルさん、頼みます！」
「おう！ 戦闘は任せとけ！」
巨大化の種は、種とはいうものの、くるみのような大きさである。
ミーナは中身を取り出し、アルカに渡す。
「ゴミはこっちで処理しておきますね。では、これが中身です。どうぞ！ お食べ！」
ミーナは実を空中に放り投げると、アルカは飛翔し、パクリとそれを食す。
「よっしゃああああああああああああ！！」
アルカの体が発光し、怪獣と同等の大きさへと姿を変えていく。
アルカはドシンと、着地した。
「ヘヌウゥ！！」
「これで対等だぜ！ 来い！」
漆黒の龍と怪獣が向き合う。
「おりゃっ！」
「ヘヌッ！？」
反動で動けなかった怪獣の頬に、アルカの右拳がヒットした。
通常攻撃なので、ＨＰゲージは少量しか減らなかったが、先程とは違い、パッと見で減ったのが確認できる。
要するに通常のボス戦くらいのダメージが通るようになったのだ。
「大怪獣バトルだ！ うわっ！ 凄い！ スクショスクショ！！」
ミーナはテンションが上がっていた。
今までのＧＷＯでは見られない光景なので、仕方が無いのかもしれない。
「ヘヌウウウウウウウウウウ！！」
怪獣は、再び両手をグルグルと回転させる。
「ブラックホールか？ 残念ながら、その技は一度見た！」
アルカはスキル【メタルウイング】を発動させ、怪獣に鋼の翼を切りつけた。
それにより、ブラックホールの発動は容易に阻止する事ができた。
そして、再び怪獣が叫ぶと、いくつもの隕石が降り注ぐ。
今のアルカの大きさでは、先程よりも、隕石の回避が困難だ。
「かわす必要は無い！」
アルカは構える。
「全て破壊してやる！」
アルカはニヤリと笑うと、次々と隕石をその拳で破壊していく。
拳が間に合わなそうな時は、【爆炎】等のスキルを用いて破壊した。
「ヘヌウウウウウウウウウウウウウウ！！」
次は一直線の極太光線を放ってきた。
「かわすのは容易だ」
アルカは光線を回避し、言う。
「今こそ、新たな力を試す時！！」
アルカは、ＴＧが満タンな事を確認すると、メニュー画面を開き、スキルを発動させる。
「刮目せよ！ スキル発動！ 【女神モード】！！」
女神討伐により手に入れた新たな力を発動させる。
目は金色、翼は純白となり、純白のアーマーが体中に装着される。
「変身完了だぜ！」
女神モードとなった後、ＴＧが徐々に減っていく。
完全に消費されるまで、約30秒。
だが、それだけあれば十分だ。
「ヘヌッ！？」
「ふっ」
怪獣はアルカを殴る。
だが、女神モード時にのみ、発動されるスキルがある。
その名も【メガミオーラα】。
攻撃時以外、ダメージを無効化する効果を持つ。
弱点属性を食らえば貫通して攻撃を食らう為、女神が使っていた【メガミオーラ】よりも劣化してはいるが、それでも十分すぎる程強力であった。
「トルネード！ 爆炎！ トルネード！ 爆炎！」
女神モード時は、ＭＰの消費無しでスキルを発動できる。
小型の炎の竜巻が、次々と怪獣にヒットする。
回避能力は無いに等しいので、多段ヒットした。
女神モード時は、全ステータスが1.5倍となるので、大ダメージである。
「悪いな、30秒しか時間が無いんだ」
アルカは、飛翔すると、トルネードを大量に放つ。
怪獣は怯む。
そして、その隙を狙い……。
「【破壊道】！！！！」
アルカの口から、光線が発射されるスキルが発動された。
「ヘヌウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ！！？？」
やったかと思われたが、怪獣のＨＰがほんの少し残った。
アルカは怪獣の目の前に移動し、トドメにアッパー攻撃を食らわす。
怪獣が天高くへ吹き飛び、同時にＨＰが0となった。
「ヌウウウウウウウウウ！！！！！！！！」
天高い場所で、怪獣は爆発した。
アルカの女神モードも同時に解除されるのだった。
2022年8月15日追記
メガミオーラαの効果を変更致しました。
