158.怪獣
「困っている事ですか……こうして成体になれただけでも十分だよ。と言いたい所だけど……」
パラサイトリザードマンは、困ったような表情をしたと思うと、下を向いた。
「最近出るらしいんだ……」
「出る?」
「うん。パラサイトリザードマンは、成体になると寒い所で生活するんだ。それで、この場所はとってもいい所何だけど、出るらしいんだ。“怪獣”が」
「怪獣……?」
パラサイトリザードマンは、同族が発する特殊な脳波で、情報を共有できる。
仲間のパラサイトリザードマンから、そのような情報を受け取っていたようで、酷く不安なようだ。
「突然姿を現したかと思えば、そこに生息しているモンスターを襲うんだ。私達の仲間も相当やられているらしいんだ」
パラサイトリザードマンがそう言うと、アルカとミーナの目の前に依頼内容が表示される。
依頼;怪獣を討伐し、パラサイトリザードマンを安心させてあげよう!
「アルさん! これって!!」
「ああ、やるしかないようだな」
パラサイトリザードマンは、表情を明るくした。
「えっ!? どういう事ですか?」
「俺達、【聖なる漆黒】が怪獣を倒してやるって事だ!」
「そ、そんな事が可能なの!?」
「ああ、任せておけ!!」
アルカは割と自信を持ってそう言った。
「さて、そうと決まれば、パラサイトリザードマンちゃん。その怪獣はどこに出るんですか?」
「ここよりもっと奥に行くとたまに出て来るよ。後、私の名前は【ミラクル】。そう呼んで貰えると嬉しいかな」
「うん! 分かりました! 私の事はミーナって呼んでください!」
続けて、アルカもミーナに続いて自らの名を名乗った。
「では、アルカさん、ミーナさん。危ないかもしれないけど、宜しくね」
ミラクルはそう言うと、奥へと案内した。
「ますます寒いですね」
「ああ。それに……」
奥地にはダイヤモンドダストが発生していた。
ミーナのスキルがあれば、天候を上書きできるが、綺麗だったのでそれをしなかった。
「綺麗だ」
「本当ですねぇ」
こんな綺麗な所に怪獣が現れるのだろうか?
思わず、2人はそう思うのだった。
「あ……あぁ……!!」
「ど、どうしたんだ?」
ミラクルが指を指した一帯が、猛吹雪となる。
30秒程、それが続くと、止んだ所には“怪獣”が居た。
「で、デカイ!!」
「お、大きい!!」
想像していたよりも、遥かに大きかった。
ビルくらいの大きさはあるだろう。
外見はデカい水色の二足歩行の、特撮で出て来る怪獣のような感じだ。
「倒せるのか……?」
「やるかないですよ!」
アルカはスキル【爆炎】を使用する。
怪獣の動きはのろく、ヒットする。
「やったぞ! 連続でスキルを当てて、倒してやるぜ!」
「ちょっと待ってください!」
ミーナが怪獣のHPゲージを指差した。
ほとんど減っていない事が分かる。
「おかしいだろ!? だって今の当たっただろ!!」
「減ってはいるみたいです。ですが、あまりにもダメージが低すぎます」
ミーナはアイテムのダイナマイトを投げるが、それに至っては1ダメージも与えられていなかった。
「こうなったら、アルさんのスキル攻撃を当て続けて、倒すしかないです! MPを回復するアイテムは沢山作って来ています!」
「いつまでかかるんだ……?」
「分かりません……。時間がかかりすぎてしまうのであれば、いっその事、依頼を放棄するってのも有かと思います」
そんな感じで話していると、怪獣がアルカ達を発見したようで、叫び声をあげる。
「ヘヌウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」
その叫びと共に、無数の隕石が降り注ぐ。
「避けきれるのか!?」
「頑張って避けるしかないですよ!!」
ミラクルは戦闘が開始した時点で、遠くに逃げたので大丈夫だ。
アルカとミーナは必死にそれを避ける。
「アルさん! ここで“あれ”を消費する事を覚悟した方がいいかもしれません!」
「そうだな! 倒されたら元も子もないからな!」
怪獣の叫び声が終わると、隕石は降りやむ。
辺りはクレーターだらけだ。
2人は避けきった事に安心しているが、まだまだ怪獣の攻撃は終わらない。
怪獣は右拳を地面に叩き付ける。
すると、衝撃波がこの辺り一帯に広がる。
「ミーナ!!」
アルカは、ミーナを掴むと、急いで飛翔する。
「ありがとうございます! って……」
ミーナは思わずポカーンとしてしまう。
無理もない。
その衝撃波により、この辺り一帯が更地になってしまったのだ。
木も山も破壊され、元から何も無かったかのように砕け散ったのだ。
「あれ食らってたらやばかったですね」
「ああ、俺の耐久でもやばかったかもな」
しかし、それでも追撃は終わらない。
「ヘヌウウウウウウウ!!」
怪獣が両手を使い、グルグルと渦を作る。
「今度は何だ!?」
1つの黒い渦が完成した。
それは物凄い吸引力を秘めていた。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
必死にそれと逆方向に飛ぶが、それでもその渦にアルカとミーナは引き寄せられてしまう。
「アルさん頑張ってください!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
アルカはそれに引き寄せられないように、必死に抵抗するが、抵抗する力が無くなったのか、2人してその渦の中に飲み込まれてしまった。




