表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

158/325

156.沸いてこない

「って言ってもどうやって温めようか」

「炎属性の攻撃とかですかね?」

「それはちょっと暴力的だなぁ……いくらNPCでも心が痛むぜ!」


 特に手段が書かれていなかったので、2人は考え込んでしまった。


「熱いバトルを見せるっていうのはどうだ?」

「熱いバトル……?」

「そうだ。俺とミーナが戦う所を見せるんだ!」

「いやいや、私、生産職ですよ? 手に汗握る戦いは期待できないと思いますが……」

「極とはいい勝負してたじゃないか。パーティー対抗トーナメントの時だってそうだ」

「あれは、相手が私を初見だったからっていうのもありましてですね……。アルさんに真っ向勝負は無理ですよ」


 ミーナはアルカの案を却下した。

 ミーナは戦闘もできるが、職業は錬金術師。

 要するに生産職である。

 そんな生産職のミーナは、アルカといい勝負ができる自信が無かったのである。


「う~ん……あっ! そうだ!」


 ミーナが何かを閃いたようだ。


「お風呂とかどうですか!」

「風呂……?」

「そうです!」

「どうやってだ? 温泉でも掘り当てるのか?」

「違いますよ!」


 ミーナはメニュー画面を開き、とあるアイテムを召喚する。

 錬金窯がミーナの前に出現した。


「これをお風呂の代わりにします! アルさんが以前、お風呂と勘違いしたのを思い出しましたので!」


 ミーナは得意げにアルカに言った。


「それは名案だな! じゃ、早速……ってお湯が無いな」

「沸かせばいいんですよ」


 ミーナは、錬金窯の中の液体を捨てると、落ちている雪を釜に入れていく。


「アルさんも手伝ってください☆」

「OK!」


 アルカの巨体故、アルカが手伝った事により、すぐに釜の内部は雪で一杯になった。


「では、この雪を火属性スキルで溶かします! アルさんは火属性スキルって持ってましたっけ?」

「【爆炎】ならあるけど、あれ当たったら爆発するからな。この釜が吹っ飛んでしまうだろうな」

「それはいけませんね。では、ここは私がっ!」


 ミーナは両手を前に出す。


「【ファイア】!」


 誰でも覚えられそうな初級スキル、【ファイア】を使用すると、ミーナの両手から炎が出る。

 何回か使用をすると、ミーナは指を釜に入れる。


「駄目ですね。ぬるいです……」


 ミーナが頭を悩ませていると、アルカが何かを思い付いたようで、口を開く。


「1回雪に埋めるって言うのはどうだ?」

「えっ!? でもそれじゃ、逆に凍えてしまうのでは……?」

「そう! 一回限界まで体を冷やす事により、ぬるま湯だろうと温かく感じさせる作戦だ!」

「な、なるほど! それは思い付かなかったです!」


 アルカは、NPCに雪を被せる。

 作業が終わると、NPCの体は見えなくなっていた。


「これで少し様子を見るか! 一旦休憩にしようぜ!」

「はーい!」


 ミーナは机と椅子を召喚すると、それに座る。

 アルカもそれに座る。

 耐久性はあるので問題ない。


「はい! どうぞ!」

「おっ! 悪いな!」

「寒い時は、温かい物を飲むに限ります!」


 ミーナはコーンスープを2つ召喚する。

 アルカは別に寒さを感じていなかったが、それをありがたく飲む。


「どうですか?」

「これはいいね! 美味しい!」

「えへっ! それは良かったです!」

「もしかして、錬金術で作ったのか?」

「そうです! よく分かりましたね! 自信作ですよ!」


 ミーナは少し照れくさそうに、笑いながら、右手で頭の後ろをかいた。

 そんなミーナをアルカは見つめる。


「どうしたんですか?」

「いや」


 アルカにとって、正直一番素性が不明なクランメンバーがミーナである。

 分かっている情報は、学生でVtuberな事くらいである。


(とは言っても、あんまりリアルの事を聞くのはマナー違反だよな)


 という事で、アルカは無難な質問をする。


「ミーナは何で、錬金術師になったんだ?」

「錬金術が好きだからです!」

「シンプルな答えだな。何か他のゲームに影響でもされたのか?」

「えーと、簡単に言いますと、師匠の影響です!」

「師匠?」

「そうです! 師匠との出会いがきっかけで、私は錬金術師の道へと進んだのです!」


「師匠かぁ。ミーナも凄腕の錬金術師だからな。そんなミーナの師匠だ。きっと滅茶苦茶凄いんだろうなぁ」


「そうなんです! 師匠は凄いんです!!」


 ミーナが眉に力を込め、机に手をつき、体を前に突き出した。


「顔近い」

「あ、すみません」


 ミーナは少し照れると、着席した。


「でも、ミーナがそんなに言うと、何か俺も会ってみたくなっちまったな」


「そうですね……私も会いたいですよ」


 ミーナは少し、目をうるうるとさせた。


(喧嘩でもしたのかな?)


 あまり深く踏み込むのも悪いと思い、話題を変えようとすると、ミーナが話を続けた。


「【前世】って知ってますか? って、Vtuberの事詳しく無いんでしたね」


「詳しくは無いけど、それは知ってるぜ。Vtuberになる前に活動していた時の姿を言うんだよな?」


「大体合ってます! で、その前世の私が師匠の元で修行をしていたという感じです! だから今の私になってからは、師匠に会えてないのです! ごめんなさい☆」


「そうか……こっちこそ悪いな、変な事を聞いて……」


「いえ、いいんです! それにしても残念でしたね! 師匠の中身はかなりの年齢ですが、見た目はロリ何ですよねぇ。アルさん絶対気に入りそうな感じだったんですけどねぇ」


「いや、ミーナは、俺にどんなイメージを抱いてるの!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ