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150.女神の強さ

「ここが、例の場所か」


 アルカ達は、第1層の海岸エリアへ来ていた。

 この前は、ここを潜って海底洞窟へ向かったが、今回は違う。


「せっせのせっと! ここですわ!」

「何とこんな所に」


 ジルコは四つん這いになると、砂浜の砂を素手で犬のように掘る。

 すると、謎のスイッチが露出した。


「このスイッチを押すと、隠しエリアが出現するとお聞きしましたわ!」


 女神イベントが発生した場合、女神の居る場所は通常のエリア、又はイベント時限定の隠しエリアに居る2パターンがある。

 こちらは後者なのだが、砂浜の下のスイッチはかなり見つけにくい部類だ。

 情報屋に頼らなければ、見つける事は出来なかった可能性が高い。


「隠しエリアへのゲートだね」


 エクレアがワープホールを指差し、言った。


「どけぇ!」

「うわっ!」


 ワープホールを覗いていたエクレアを突き飛ばし、ジルコは一足先に隠しエリアへと向かった。


「野蛮だね。ボク達も行こうか?」

「そうだな」


 アルカとエクレアもジルコに続いた。

 パーティー全員のエリア移動が完了すると、ワープホールは閉じた。


「ちょっと君、急ぎ過ぎだよ」

「先客がいたらどうするんですの!」


 ジルコは軽くキレた。

 折角情報屋から情報を買ったというのに、誰かに先を越されては無駄金となってしまう。


「でも大丈夫だよ。そんな時には、とっておきのボクの秘策がある」

「おっ! どんな秘策だ!?」

「特別に聞かせてあげよう」


 エクレアは自慢の銃を構えながら、ドヤ顔で話し始める。


「まず先客を見つける」

「うん」

「そしたら」

「ふむ」

「背後から遠距離攻撃を食らわせ、何もさせないまま倒す」

「えっ?」


 要するに不意打ちだ。


「エクレアは不意打ちとかあんまり好きじゃないんじゃなかったっけ?」

「目的達成の為に多少の犠牲はつきものだよ。後よく考えてみなよ。それが出来るって事は、禁止行為じゃ無いって事だよ。ルールの範囲内であれば何をやっても問題ないさ」

「そういえば……最初に会った時も不意打ちを仕掛けて来たな……」


 そう、エクレアは最初、極を狙撃し倒したのだ。

 少し前の事なので、アルカもすっかりと忘れていた。


「それにしても、天国みたいだな、ここ」


 雲の上のようなステージが続く。

 女神の為に用意されたステージという事もあり、神秘的な雰囲気だ。


「女神を狩るのに丁度いいステージですわ!」


 ジルコは、ダークカリバーを、子供が玩具を振り回すように振るった。


「待てっ!」


 エクレアが合図をすると、アルカは歩みを止めた。


「いや、待ってよ」

「ぬふっ! 引っ張らないでくださいまし!」

「だって、待ってくれないから」


 ジルコが勝手に進むので、エクレアは服を掴み、強引に止めた。


「エクレア、どうしたんだ一体」

「少し先に誰かが居る。あそこの影だ。とりあえず狙撃してみるよ」


 エクレアのアバターは非常に目が良いので、遠くを見る事が得意だ。

 それ故に、遠くのプレイヤーに気が付くことができた。


「ほぅ」

「どうしたんだ?」


 エネルギー弾を発射する、SFチックなスナイパーライフルを構え、エクレアは言った。


「激レアな相手だ。腕が鳴るね」

「あらあら、随分と嬉しそうですわね! ワタクシも激レアなのですわよ? 何て言ったって魔剣持ってますからね!」


 ジルコがドヤ顔でダークカリバーを自慢したが、眼中に無いようだ。

 エクレアの瞳はスコープ越しに遠くのプレイヤーに向けられていた。

 だが、次の瞬間、武器を構えるのをやめた。


「遅かったようだね」

「遅かったって……」

「既に女神と戦闘をしているよ。あのプレイヤー」


 ボスモンスター殿戦闘が始まると、戦闘開始時に近くにいたプレイヤー、パーティーメンバー以外は、一定範囲内に近寄る事も出来なくなる。

 勿論、遠くからの攻撃も不可能であった。


「な、なんですって!! だ、誰何ですの!!」


 ジルコは走った。

 アルカとエクレアも続く。


「てやぁ!」


 戦闘を繰り広げていたのは、最近人気急上昇中の新人Vtuberであった。

 アイドルのような衣装に身を包んでいるエンジョイ勢のような装備だが、ファンの助言により、戦闘に関してもなかなかの実力を発揮している。


「こ、このままだと、ワタクシのお金が無駄に……どうにかならないんですの!?」

「どうにもならないね。彼女が負けてくれれば、ボク達も挑戦できるけど」

「だったら今すぐ女神に加勢して、あのプレイヤーを倒してくださいな!!」


 ジルコはエクレアの胸倉を掴み、がくがくと揺さぶっている。

 エクレアは迷惑そうな表情をしている。


「ちょっ、ジルコちゃん」

「アルカさんは、先を越されて悔しく無いんですの!?」

「いや、でもエクレアが悪い訳じゃ無いしさ……ってそうじゃない! あれを見るんだ!」

「?」


 ジルコは、手を離すと、アルカが指差した方を見る。


 その指先には、HPが4分の1となった、アイドルが居た。


 流石のジルコも驚きを隠せなかった。


「ななななななななっ! もうHPがあそこまで削られてますの!?」


 女神の攻撃は一撃一撃が重い物であった。

 エフェクト的にはとても綺麗で、見入ってしまいそうなものだが、威力は馬鹿にできない。


 そして、驚くべき事に、女神のHPは全然削られていなかった。


「なるほど、そういう事ね」


 エクレアは腕を組み、1人でうんうんと頷いていた。


「何1人で納得してるんですの!?」

「あれを見なよ」


 女神の体からは、黄色を薄めたオーラが発せられている。

 それが全ての攻撃を無力化しているようだった。

 だが、そのオーラが消えるタイミングがある。


 女神が攻撃を仕掛けてから5秒間。

 それが女神に正攻法でダメージを与えられる、唯一のチャンスであった。


「くっ! 【トルネード】!」

「何ですか? そんなの私には効きませんよ?」


 アイドルは風属性のスキルでバリアを吹き飛ばせると、ファンのガセネタを真に受け、実行した。

 そして、その隙に女神の翼で体を貫かれ倒されてしまい、粒子となり消えた。

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