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148.マスコットキャラクター、ドラリン

「えーとですね。調査の結果ですが……」


 翌日、クランホームにて、再びクランメンバーが集まっていた。

 キメラはそこで、ジルコから得た情報を皆に話す。


「なるほど。クランを作るのに、後1人メンバーが足りないって事だな」

「そうみたいです。後、パーティ対抗トーナメントで瞬殺できたという理由もあり、そこまで、私は敵視されませんでした」

「そういえば、キメラちゃんはすぐに倒されてたな」

「恥ずかしながら……」


 パーティ対抗トーナメントで、ジルコ率いるチームに瞬殺されてしまったキメラ。

 そのおかげか、敵意は向けられなかったのだ。


「でも参加する気は満々みたいだし、誰かがメンバー入りする可能性は、かなり高そうだな」


 ジルコ達のパーティはアルカに一度でも負けているメンバーで構成されている。

 クランを作成する際も、同じような境遇のメンバー構成になる可能性が高い。

 となると、結構なプレイヤーが条件に当てはまりそうだが、アルカはある厄介そうなプレイヤーを頭に思い浮かべた。


「例えば、神ゴッドとか?」

「やだなぁ……」


 ミーナが嫌そうな顔をすると、カノンが「その可能性は低いだろう」と否定した。


「神ゴッド君は、そういう集団での集まりが苦手でね。今までいくつものクランを追放されている」

「そんな悲しい過去があったのか……」


 アルカは同情するが、カノンは、そんなアルカを不思議そうな表情で見る。


「ああ、追放と言っても、クランで暴れた結果だから心配要らないよ。おまけに本人は全く気にしていない。それ所か、他のクランに入る際に元居たクランの内部情報を餌にしている程だよ」

「な、なるほどな」


 アルカは神ゴッドを甘く見ていた。

 そこまでヤバい奴だったとは……。


 ちなみに、神ゴッドは、一部で“死神”と呼ばれていたりする。

 神ゴッドが原因で消えたクランがあった事が由来だ。


「パスタ殿とかは、どうでござる?」

「パスタさんかぁ、だとしたら厄介だな」


 とここで、様々な考察が繰り広げられていたが、あくまで予想の域を出ていなかった。

 そして、話が終わる。


「とりあえず……当日までは、この前話した通りで」


 結果、今考えてもどうしようも無いという事もあり、この前通り、各自レベル上げやアイテム作成等を行ってもらう事となった。

 開催は9月19日の日曜日だ。

 時間は一週間と少し、ある。


(今週の日曜日は、丸一日空いてるからな。探索でもするか。何か新しいスキルでも見つかるかもしれないからな)


 正直、アルカはそれくらいしかやる事が無かった。


 そして、その丸一日空いているという、9月12日が訪れた。


 アルカのリアルであるカケルは、10時から張り切ってログインする。


「とは言っても、戦闘系イベントじゃないからなぁ。俺に真に必要なのは情報かもしれない。何が人気なのかとか……」


 という事で、第1層のはじまりの街へと足を運ぶ。

 第1層のはじまりの街は、文字通り、ゲームを始めたばかりのプレイヤーが多く居る。

 だが、その他にもベテランのプレイヤーもよく足を運んでいる。

 ちょっとしたゲリライベント等があるからだ。

 そして、その日もそれは行われていた。


「かわいいー!」

「噛まないの?」

「スクショスクショ!」


 何やら噴水広場に人が集まっている。

 そこには、『GWO公式マスコットキャラ、“ドラリン”登場!!』と書かれた看板と共に、とあるキャラクターが浮遊していた。

 デフォルメされた、小さい白一色のドラゴンである。

 良く言えば、王道的なマスコットキャラだ。


 GWOには今までマスコットキャラが居なかったので、今回それを告知無しでお披露目していたのだ。

 今偶然にも、ここに来ているプレイヤーはラッキーだ。


「皆! はじめましてリン☆」


 ドラリンが可愛らしい声で、皆に挨拶をすると更に盛り上がった。


「な~にが『はじめましてリン』っすかw 似合ってないっすよ(。◕ˇдˇ◕。)/

他に空いてる人間が居なかったんだ。仕方ないだろう。さて、本番だ……黙って見てるんだな。

わりっす! って、もう既にマイクONっすよ(。◕ˇдˇ◕。)/

は……?」


「!?」


 なぜか急に、謎の一人芝居を始めたドラリン。

 最初の挨拶からの豹変っぷりに、一瞬、シーンとなる。

 声が全て一緒なので詳しくは分からないが、おそらくマイクの前に2人くらい居るのだろう。


「ちょっと、喉の調子が悪かったリン」

「なら仕方がないな」


 周囲のプレイヤーは、何となく事情を察したようで、先程の会話を聴かなかった事にした。


「今日ここに偶然来てくれたお友達にだけ、とーってもラッキーなお知らせがあるリン」


 何だ? とざわつく。


「ゲリライベント、【女神様を探せ!】を今日限定で実施するリン!」


 そのイベントの内容は、その名の通り単純であった。


 GWO内のどこかに、今日限定で女神様が30体現れるので、探そうというイベントだ。

 女神様というのに、なぜか30体いる。分身体的な設定なのだろうか。


(GWOは広いけど、30体居るんだったら、1人くらいと出会えそうだな)


「このイベントはたまに開催してるリンが、私が告知するのは、はじめてリン」


 実はこのイベント、たまに開催されている。

 大々的に告知はせずに、こんな感じでラッキーな人のみが知れるといった感じだ。

 もっとも、情報はすぐにネットで拡散されてしまうのだが。


「無事女神様と会うと良い事が起こるリン! 頑張ってリン!」

「良い事……?」

「スキルが貰えたり、レベルが上がったり、その他色々お楽しみだリン」


 どうやら、ランダム性があるらしい。


 こうして、マスコットキャラクター、ドラリンのお披露目と、ゲリライベントの告知が終了した。

 集まっていたプレイヤーは、女神様を探しに散った。


「俺もやってみるかな。暇だし」


 アルカも女神様を探しに出かけるのであった。

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