144.クラン対抗イベント開催決定
「クラン対抗イベント……?」
「出ませんか!?」
9月の平日夜、アルカはキメラに呼び出され、クランホームに来ていた。
そこでは次期イベントとして、クラン対抗イベントが開催されるので、自クランでも参加しませんか? という事であった。
「クラン対抗イベントって事は滅茶苦茶強い、Sランククランとかも参加してくるんだろ? Dランククランの俺達で何とかなるのか?」
戦闘能力と言う分では、【アルカのクラン】は強い。
生産系職業のプレイヤーが2名居るが、戦闘要員であるアルカと極とキメラが非常に強力な能力を持っている為、クランとしては弱くない。
だが、人数が少ない。
「確かに、人数は少ないですが……優勝できる可能性は0じゃないです!」
今回のイベントは、生産職やエンジョイ勢でも上位を狙えるようなシステムとなっている。
「どんなルール何だ?」
「えーとですね! こんな感じです!」
キメラは運営からのお知らせをそのまま開く。
☆
クラン対抗イベント、【お助け☆ガールズ】開催決定!!
GWO内に困っているNPCが沢山出現するので、その人達を助けてあげましょう!
イベント中は、何と! 全エリア、全層をクリア状況に関わらずに移動可能!
更にモンスターも強いモンスターは出現しません!
ルールは簡単!
困っているNPCを助けると、【お助けポイント】が手に入ります!
そのポイントを集めて、ランキング1位を目指しましょう!
☆
「どうですか?」
「確かにこれなら……」
アルカ達は全員第6層へ到達している。
という事は、大体のエリアを把握しているという事となる。
これは大きなアドバンテージだ。
おまけに、今回のイベントはNPCを助けるのがポイントを得る条件だ。
その中には、「あのアイテムが欲しい!」、「あのアイテムが欲しい!」といった依頼もある可能性が高い。
優秀な生産職プレイヤーが居るのも非常に有利な点だとアルカは考えた。
「いいかもな。戦闘ばかりじゃないのも悪くない」
「ですよね。生産職や、ただ女の子だらけの世界に飛び込みたい想いでGWOを始めた方にもイベントを楽しんで欲しいという、運営さんの考えなのでしょう!」
キメラは得意げに腕を組み、言った。
「俺はいいけど、他のメンバーは大丈夫なのか? 特に今回のイベント内容的に、カノンちゃんとミーナの助けは必須になるからな」
「そこは大丈夫です! 昨日メッセージを送りましたが、参加OKとの事でした。アルカさんは一応リーダーなので、直接お話しようかと!」
「なるほど、ちなみに日程はどんな感じ何だ?」
今回の日程は、3時間をゲーム内で3日に加速して行われる。
相変わらずの謎技術だが、ブレイドアロー社なので仕方がない。
「三日か。でもゲーム内で時間が加速されてるなら問題ないな!」
「現実世界で、リアルタイムにSNSで実況とかはできませんけどね」
「そうだな」
脳味噌をフル回転させ、現実をスローモーションのように見る事ができる人間なら可能かもしれない。
「とりあえず! これで参加出来ますね! 参加資格もありませんし、ゆるく行きましょう! 目指すは優勝です!」
「優勝狙うのに、ゆるくて大丈夫なのか?」
「では、程ほどにゆるく行きましょう!」
という事で、クラン対抗イベントに初参加となった【アルカのクラン】であった。
「で、優勝したらどうなるんだ? 俺はリアルの世界でハンバーガー無料券とかがいいな」
「確かにそれもあったら嬉しいですが、それは小さすぎますよ。もっと大きなことです!」
「大きな事……?」
キメラはドヤ顔で発言する。
「何と、GWO運営の方とお話できます!!」
「えー……」
「えーって何ですか! あのGWOの運営とお話できるんですよ! これは凄い事ですよ! ゲーマーとしてワクワクが止まりません!!」
「他にはないの?」
「シークレットな商品はあるみたいです。後ゲーム内で使用できるお金とか、レア装備とレア武器とか!」
「無難だな」
「誰でも参加できますからね」
「そのシークレットが気になるんだよなぁ……」
「でしょうね。今ネットでは考察が溢れてます。考察クランも大忙しです」
「考察クラン……? 何だそれ」
「その名の通り、色々と考察するクランです」
「へー。そんなクランがあるのか」
「とは言っても、今は情報が無さすぎるのですが……。でもそういう中、予想するのも楽しいですよ」
「なるほど、俺も予想してみるかな。ずばり、ラーメン無料券。キメラちゃんは何味が良い? 俺は味噌」
「いや、だから何で夢が無いんですか! 私は醤油です」
そんな感じで話をしていると、極とクローがクランホームへと突如出現した。
「おっ! こんばんは!」
「こんばんはでござる!」
「今日はどうしたんだ?」
「今日もクロー殿のレベル上げやってたでござるよ」
アルカはクローの頭上を注視する。
すると、頭上にはレベル53と表示されていた。
「どう? 私かなり強くなったわよ!」
「凄いな。この短期間で」
アルカもまさかここまで上がっているとは想像していなかった。
「これは本当にライバルになるな」
「ふふーん♪」
クローは得意げに無い胸を張った。
「拙者の活躍もあっての事でござるがな。おかげで寝不足でござる」
「光栄に思いなさいよね!」
「まぁ、楽しかったでござるが……ってひゃっ!」
クローが極を突然くすぐりはじめる。
「光栄だと言いなさい♪」
「ちょっ、ひゃっ、本当にやめひぇっ!」
と、仲良くじゃれ合う。
極もまんざらでも無さそうだ。
「よせェ!」
アルカは叫ぶと、極とクローのじゃれ合いの中、2人の間に割って入る。
「「うわああああああああああ!!」」
その巨体故、極とクローは衝撃で吹っ飛ばされる。
「2人共、仲良く行こうぜ! 次はクラン対抗イベント! チームワークが大事だ!」




