140.クロノスピア
関連話数
・109話
・111話
実験スタート!
用意するものは、錬金窯! と、プレイヤー2人以上!
「という事で、入ってください」
「クロー殿、最初にどうぞでござる!」
極は不安なのか、最初にクローに入るように勧めた。
「いやよ! あんたが先入りなさいよ!」
「で、では! 一緒に入るでござる!」
「それならまぁ……」
という事で、2人は台に登る。
目の前には錬金釜がある。
中にはファンタジーな色の液体が入っているのが見える。
「「せーのっ!」」
ドボン。
2人は、錬金釜にダイブした。
「あっっっつ!!」
「そうでござるか?」
大体体感温度50℃くらいである。
「いきますよ! 錬金!!」
ミーナが合図をすると、上空に魔法陣が現れる。
釜の内部はグルグルと回転し、そこに魔法陣が舞い降りる。
「あ、あれ?」
黄色い稲妻がバチバチとしている。
「どうした? ミーナ?」
ミーナの様子が変だと感じたアルカは、彼女に尋ねた。
「いつもはこんなにバチバチ言わないんですけど……」
稲妻の色が赤に変わる。
それを見たミーナは自らのカンで何となく察した。
「アルさん!! 部屋から出てください!!」
「え!?」
「いいから来てください!!」
ミーナは急いでアルカを連れ、部屋から出る。
すると、その直後。
ババババーン☆
物凄い爆発が巻き起こった。
「うおっ!?」
部屋の外にまで爆風はおよび、アルカとミーナは思いきり吹き飛ばされてしまった。
「いてて、酷ぇ目あったぜ……」
「部屋の外に居たのにダメージ食らいましたよ。攻撃としてはいいかもしれません……が、これは駄目ですね。調合失敗です」
ミーナは両手の人指し指を使い、バッテンを作る。
「失敗か……ごめんな、変な事考えて」
「いや、いいんです。何事も挑戦が大事です。それに、条件次第ではもしくは……」
部屋に戻ろうと、部屋を開けると、錬金釜以外何も無かった。
「全部ぶっ壊れたのか!? 凄いな!! ……ってあれ?」
「どうしたんですか?」
「極とクローがいないぞ!!」
「た、大変です!!」
2人が焦っていると。
「ふざけんじゃないわよ!」
クローと極が戻って来た。
「2人とも無事だったか!」
「どこをどう見たらそう言えるのかしら!? 戦闘不能扱いになってリスポーンよ!」
「ご、ごめん。極もごめん。マジでごめん」
「別にお金もアイテムも預けてたからいいけど、利用された感がムカつくわ!」
「あ、そうだ! クランに入る気にはなったか?」
「何話題そらそうとしてるのよ! いやまぁ、入るけど」
クローは腕を組み、ジト目でアルカを不機嫌そうに睨んだ。
「じゃあ、入団祝いにプレゼントをあげよう!」
「機嫌取り?」
「ち、違う! 俺じゃ使えないから、渡しておこうと思って!」
アルカはメニューを開くと、武器から【クロノスピア】を選択。
時計の針をモチーフにした槍である。
それをクローに渡す。
「これは、槍?」
「ああ。ユニーク武器何だけど……俺じゃ装備できないみたいだから。是非、有効活用してくれ」
「え? え? 本当にいいの? え?」
さっきの態度からは一変。
本当に貰っていいのか迷う。
GWO初心者のクローであったが、レア物だろうという事は何となく分かった。
「この前のイベントの槍のユニーク武器持ってたのってアルさんだったんですね。掲示板で噂になってましたよ。誰が入手したのかって」
「そうなのか? ま、いいや。貰ってくれ頼む。売る事も捨てる事も出来ないからストレージを圧迫してるんだ」
預ける事は出来るが、クローが遠慮してしまうので、あえてそれは言わなかった。
「そ、そこまで言うなら。ありがとう、大切にするわ」
「“あんただと思って大切にするわ……♡” とか、思ってるでござるな?」
「は?」
「じょ、冗談でござるよ! ……怖いでござるな……」
アルカは極に「ごめん」のポーズを取る。
「極には無いんだ。爆発させておいて悪いな」
「別に良いでござるよ。ただで爆発したと思ってるでござるか?」
極は片目をつむりながら、ドヤ顔をして見せた。
「何かを掴んだのか?」
「ま、そんな所でござるな♪」
こうして、【アルカのクラン】に新メンバー、【クロー】が加入した。
☆
「凄いわ! この武器! スキルが内臓されてるわ!!」
クローは【マイホーム】に戻った後、クロノスピアの能力を確認していた。
結果、スキルが内臓されている事が判明した。
これはアルカも知っていたが、装備が出来なければ、使用することもできないので、使えなかったのだ。
「何これ!! 滅茶苦茶強いじゃない!!」
その内臓スキルだが、かなり強力な性能を秘めていた。
一言で言い表すならば、『時間停止』能力である。
色々と制約は付いているものの、現時点でこのような真似ができるのは、この武器だけである。
「だけど、無敵という訳ではないのね」
そう。制約が色々と厳しいのだ。
まず、24時間に一度しか使用できない。
この時点で割と痛手だ。
そして、これを発動している間、発動したプレイヤーも自由に動く事ができなくなる。
だが、発動者に限っては、全く動けなくなるわけではない。
「【タイムサプレッション】!!」
内臓スキルを発動させる。
【マイホーム】内なので、敵もいないが、発動には成功した。
時計型の魔法陣が一定の領域に広まる。
「【乱れ突き】!!」
無事にスキルが発動。
【乱れ突き】の動作が行われた。
どうやら、スキルで決まっている動きに関しては、発動者側は動く事が可能のようだ。
「なるほど。こうすれば私も動けるのね」
そして、制限時間の60秒が過ぎる。
「ふふ、本当に良い武器だわ! 特にパーティー戦で大活躍する事間違い無しね♪」
ご機嫌なクローであった。




