139.クランランクが上がりました
ギルドへクエスト達成の報告をしたアルカ達は、クランホームへと戻っていた。
「クリアしたんだね。おめでとう」
カノンだけが、その場にいた。
休日という事もあり、皆ログアウトしていったのだろうか?
「クランランクも上がったぜ。これで10人まで、このクランのメンバーになれるようになったみたいだ」
Dランクとなった、【アルカのクラン】。
Dランクに昇進した場合、クランメンバーの最大人数が増えるだけで、他に特典などは無かったようだ。
「で、これがその新しい機体を作るのに必要なアイテムだな?」
アルカは、アイテム【古の針金】を渡した。
「おお! 助かる! ありがとう! これぞ、私の求めていたものだ!!」
普段クールなカノンであったが、純粋な笑みを浮かべるとそれをストレージへと収納する。
「さてと、礼だが、何がいいかな?」
「いや、今回の戦いでは、得るものが大きかったからな。礼はいいよ」
「ほう、その割にはレベルが下がっているようだが」
「ちょっと今回のボスにやられてな。あっ、そうだ! ミーナいるか?」
「ミーナ君ならば、工房に居ると思うよ」
「工房?」
「クランホームに新しく増設したエリアだよ」
最初は学校を模したクランホームであったが、各プレイヤーがゲーム内マネーを多量に持っている事から、個人個人で増設に増設を重ね、めちゃくちゃになっていた。
学校だったはずのそれは、機械の城のようになり、煙突からは体に悪そうな黒い煙がモクモクと出ていた。
「よし、じゃあミーナに会いに行くか!」
「ミーナ? あの錬金術師ね! 何で?」
「いや、今回クローのレベルが下がってしまったからな。経験値を稼ぎやすくするアイテムでも貰おうかなと」
「あんたも下がってるじゃない」
「そうだな。俺も貰いたいな。在庫があればだけど」
そして、アルカ、極、クローは工房へと向かった。
「ここがミーナの工房か」
女の子らしいと言うのだろうか?
ピンクや赤の壁に囲われており、非常に可愛らしい。
「ミーナ殿。お邪魔するでござるよ~」
「あ、いらっしゃい!」
ミーナは椅子に座り、本を読んでいた。
提携している別サイトから購入したものをGWO内に取り込んで読んでいるようだ。
電子書籍のような扱いだ。
「ミーナ、ちょっと頼みがある」
「何ですか?」
「訳あって、ボスにレベルを吸われた。ここに居るクローも同じくだ」
「それは大変!」
「だろ? で、後で何か礼をするから経験値稼ぎやすくなるアイテムが欲しい。ほら、前使ってた奴」
ミーナは首を傾げると、ちょっと困った顔で言う。
「今在庫を切らしてまして……あっ、でも下がったレベルを元に戻すアイテムでしたらありますよ!」
「それだ! それが欲しい!」
「では、代金として魂と貴方の一番大切なものをいただきます♪」
「え」
「冗談です☆」
ミーナはからかうように言ったのであった。
「こちらです。【レベルリターン】! ささっ、どうぞ!」
「あ、ありがと」
クローはちょっと照れくさそうに貰うのであった。
アルカも続いて貰った。
早速、2人はそれを使用する。
「おお! 戻ったぞー!」
「やったわ! これで苦労が報われるわ!!」
ミーナは嬉しそうにニコリと笑う。
「いやぁ、良かったです! これからもドンドン頼ってくださいね!」
「ああ、本当に頼りにしているぜ」
一件落着である。
「そういえばミーナ殿、あの巨大な釜は何でござるか?」
極が巨大な釜を指差して、ミーナに質問を投げかけた。
「風呂に決まってるだろ」
「なるほどでござる!」
だが、ミーナの代わりにアルカがその問いに答えた。
「へぇ、私入ってみたいわ!」
クローも、風呂に興味があるようであった。
「いやいやいやいや、違いますよ。錬金釜ですよ」
「何だそれ?」
「錬金術をするのに使います。素材を入れて調合するんです」
「? いつもそんなの使わずに錬金してなかったか?」
「そうですね。私には必要無かったのですが……増設した際にセットで付いてまして。本来でしたら私みたいな真似は難しいでしょう!」
「ミーナって結構凄かったんだな」
「えへへ。まぁ、そうですね!!」
ミーナは照れ臭そうに肯定した。
「ですが、錬金釜には独自の機能が備わっています」
その機能とは、レシピに無い素材同士の調合が可能というものである。
一見何の関連性もないアイテム同士でも、AIが判断し、アイテムを生成してくれるのだ。勿論失敗する確率は高い。
だが、それで生まれるアイテムは既存の物の他に、全く新しい物が生成される可能性も秘めているのだ。
「じゃ、その中にプレイヤーを入れたらどうなるんだ?」
「え?」
「どうなるんだ?」
「……」
ミーナは錬金釜と3人を交互に見る。
「……?」
「?」
「どうなるんでしょうか……?」
ミーナですら知らなかった。
「分からないのか?」
「普通はそういう使い方しませんからね」
「やってみるか!」
「多分失敗するだけかと思いますが……」
という事で、調合素材としてプレイヤーを突っ込んでみる事にした。
「いや、何で私達なのよ」
「俺じゃ入りきらないからさぁ」
アルカは、申し訳無さそうに苦笑いをした。
「ちょっと怖いでござるな」
「何が起こるか分からないので、アイテムと金銭を預けといてください。準備が出来たら、実験を始めましょうか」




