138.アクアフォルム
「折角上げたレベルが!!」
クローは悔しそうに敵を睨み付けた。
(後でミーナにレベル上げに必要なアイテムを用意してもらうか)
アルカは、申し訳無さもあり、そう思うのであった。
「アルカ殿! やっぱり上手く動けないでござるか?」
「ああ、やっぱりこの体は水中には不向きなようだ」
クローは低いレベルを更に下げられ、アルカは水中戦が大の苦手。
「やばいでござるな……」
だが、敵は待ってくれない。
「しまった!?」
「ヘリョリョリョリョリョ」
捕まってしまう。
すると、クローの時と同じように、アルカのレベルがどんどん下がっていく。
一定以上下がると、敵はアルカを思いきり蹴り飛ばした。
そのまま壁に叩き付けられ、めり込む。
「くっ……かなり持っていかれたぜ」
レベル53。
アルカの頭上にはそう表示されていた。
元が70なので、17レベルも持っていかれた計算となる。
「何なのよこいつ!!」
「クロー殿! 焦っては駄目でござる!」
水の球体を手の平に生成し、それを極とクローに投げる。
ある程度追尾するようで、避ける事に専念する。
攻撃する隙があまり無い。
「これは……?」
そんな状況の中、アルカは壁にめり込みながら、とあるアナウンスを受ける。
そのアナウンスとは、レベルが10以上下がった為、ユニークスキルを1つ解放するというものであった。
(他にそんな状況あるのかよ……俺ってかなり幸運なのかもしれねぇ)
アルカは叫ぶ。
「ここは俺に任せてくれ! 勝てるかもしれない!」
「壁にめり込みながら何言ってるのよ!!」
「新スキルを入手した! 俺専用のスキルだ!」
「え!? 今!?」
「今だ!」
めり込んだ壁からアルカは抜け出す。
そして、スキルを確認し、それを発動させる。
「【アクアフォルム】!!」
アルカの体が青い光に包まれ、やがて形態を変化させる。
「変身した!?」
クローは小学生並の感想と共に、驚きの表情を見せた。
【プレストフォルム】を見た事が無かったので、アルカの形態変化を見たのはこれが初だった。
翼が4つに分かれ、尻尾も魚のものに近くなっている。
雰囲気的には、どこかトビウオを連想させるような感じとなっているが、ちゃんとした2足歩行もできる龍である。
「一気に行くぜ!」
先程のもっさりとした動きが嘘のように、水中内を4つの翼を使い、自由自在に動きまわる。
「【トルネード】!!」
【トルネード】を4回発動し、3つは避けられたが、1つは見事ヒットし、怯む。
小型の竜巻なので、これ自体はあまりダメージソースにはならない。
だが、その隙が命取りだ。
アルカは【メタルウイング】を使用すると、その翼を用い、連続で敵を斬り付ける。
「ヘリメリイイイイイイイイイイイイイイイイ」
「【破壊道】!!」
敵は、アルカの光線の衝撃も合わさり、壁にめり込む。
先程とは状況が逆である。
だが、そこはボスモンスター。
壁からすぐに抜け出すと、伸縮する両手を伸ばし、アルカを捕らえようとしてくる。
これに捕まってしまうと、今以上にレベルがダウンしてしまう。
「!?」
捕まらないのが分かると、戦法を変えてきた。
敵は両掌をグーにすると、その拳をかなりの速度で振るう。
「ヘリョリョリョリョリョ!!」
無造作に殴るので、その辺の壁がボコボコだ。
ネタっぽい攻撃だが、その攻撃力は確かで、クレーターが幾つか出来ていた。
「危ないでござるな!」
更に、泳ぎながら無造作に拳を振るい続ける。
「絶対食らいたくないわ!」
「【超音波】!!」
アルカは相手を混乱させようと、スキルを発動させる。
無事、ヒットするがそのランダムな動きが逆に危険なものとなっていた。
「ちょっ! 怖いんだけど!」
が、力加減を誤ったのか、敵の拳は壁に大きくめり込み、抜けなくなってしまっていた。
「よし! 皆で攻撃を叩き込むぞ!」
極は、【デッキリカバリー】を発動し、【流星群】を再び使用可の状態にする。
「破壊道!!」
「流星群!!」
「ブラックスピア!!」
3人が放ったスキルは、的確に相手にヒットする。
「ヒョリョオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
先程からも攻撃を食らっていた敵のHPは、決して多いものでなかった。
よって、この攻撃により、HPが0となり消滅するのであった。
「よしっ……!」
同時にアルカの【アクアフォルム】も解除される。
「勝ったわ! いえーい!!」
【水中】ではなくなったフィールドで、クローは飛び跳ねて喜ぶ。
「ぬおっ!?」
クローがジャンプしながら抱きついたせいで、極はバランスを崩し、倒れてしまう。
「すっかり仲が良さそうで安心したぜ」
協力プレイは人と人の仲をも深める。
それを実感したアルカであった。
「よしっ! じゃあそろそろ戻るか! あそこのワープパネルから戻れそうだぜ」
ボスを撃破後、奥にワープパネルが設置された。
ここに乗れば、はじまりの街の噴水広場に戻れるようだ。
「そうね! 戻りましょう!」
「やっと解放されたでござる。まっ、テンション上がるのも分かるでござるがな。今回の敵は色々と強敵でござったからな」
3人はワープパネルに乗り、はじまりの街へと戻るのであった。




