137.炎上しそうなモンスター現る
「何だったのよ……」
クローがエクレア達の後ろ姿を見て呟いた。
「でも良かったな。クエストが中断にならなくて」
「本当にそうよ! 折角こんな所まで来たのよ! ここまで来て戻されたくはないわ!」
当然である。
おまけにリスポーンすると、ゲーム内の所持金の半分を失い、更にはランダムでいくつかのアイテムを失ってしまう。
所持金に関しては課金した分は失わない上に、装備や武器は失わないとはいえ、リスポーンされないに越したことはなかった。
ちなみに、基本的に所持金に関しては冒険前に銀行に預けているユーザーが大半なので、基本的にリスクとはなっていない。
もっとも、このエリアまで来るのはそこそこ面倒だったので、やり直しはあまりしたくないというのが、クローの意見であった。
「というか、クロー殿。ジルコ殿を倒したのでござるな」
「そうね。向こうも油断してたみたいだし」
「容赦ないでござるな……」
「まぁ、向こうが仕掛けてきた勝負だし」
確かに。と、アルカと極は頷いた。
アルカ達は気を取り直し、ダンジョンを進んでいく。
モンスターは現れるが、特別な仕掛けも無く、無事にボス部屋前に辿り着く事ができた。
「いよいよここまで来たわね! 私もレベルがちょっと上がったし、協力できるといいわね」
クローのレベルは、36から38にまで上がっていた。
本当は積極的に戦闘を行い、もっとレベルを上げる事も出来たが、クエストのクリア条件の1つに【レベル40以下のプレイヤーをパーティーに入れる事】とあるので、あえて2レベルしか上げていない。
「確かに、クロー殿の回避能力はかなり高いでござるからな。期待できるかもしれないでござる。あっ、それはそうとこれを!」
「何よこれ」
「次のボス戦で経験値が入らなくなるアイテムでござる」
「あー……確かレベル40以下じゃないと駄目だったとか言ってたわね」
折角のボス戦なのに、何か勿体無いと感じながらもクローはそのアイテムを使用する。
「よし! 2人共行くぞ!!」
アルカは合図と共に、ボス部屋へと乗り込む。
「ヘリメンジャリッチョエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
ボスモンスター【クレイジーフィッシュ】の咆哮が部屋に響いた。
外見は巨大なチョウチンアンコウの化物に足と手を生やした感じである。
ボス部屋には湖も設置されている。
水陸両用といった感じだ。
「結構デカいわね!」
「アルカ殿くらいでござるね」
ドシンドシンと足音を立て、3人に襲い掛かる。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
極とクローは、回避する。
アルカは、敵の両手と自らの両手を握り合い、押し合いをしていた。
「ヘリリリリリ」
「やるなぁ!」
互いに一歩も引かない。
そこに極とクローが攻撃を仕掛ける。
「【乱れ突き】!!」
「【流星群】!!」
2人のスキル攻撃が無防備な敵の背中に襲い掛かる。
「ヘリメンンンンンンンン!?」
敵はその場に倒れる。
アルカは【破壊道】を発動させる。
倒れている敵は回避できず、その攻撃をモロに受けた。
「よし! 意外と簡単だな! いくらレベルが高かろうと、第1層のモンスターに違いは無かったって事だな!」
安心していると、体制を立て直した敵が口から水のレーザーを放ってくる。
「うわっ!」
かわしたは良いが、それが当たった壁を見ると、かなりの威力だという事が分かった。
「ヘリリリリリ」
敵は湖に身を潜める。
「どこから来るでござるか!?」
皆が周囲を警戒していると、伸びた敵の腕がクローを掴む。
「ひっ!?」
どうやら、伸縮性があるようで、水の中から腕だけを伸ばしているようだ。
このままではクローが水の中に引き込まれてしまい、危険だ。
「「!!」」
アルカと極は慌ててクローを掴む。
「湖に引き込まれたらアウトだぜ……!」
敵との綱引きが始まった。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「いたたた! 痛いわね!」
「我慢しろ……!!」
結果、アルカと極に引っ張られ、湖の外に敵は引きずり出される。
「ヘリメンヘリリッリ」
「今だ! 攻撃を叩き込むぞ!!」
皆で一斉に攻撃をしようと考えたが、突然、敵の目が深い青に染まる。
そして。
「ヘリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
その叫びと共に、ボス部屋が水で満たされる。
「水中フィールドだと!?」
アルカの最も苦手とするフィールド、【水中】が展開されてしまった。
「くっ、上手く動けない」
「ヘリョリョリョリョ!!」
どうやら、水の中で本領が発揮されるようで、先程よりもかなりのスピードで水中を移動する。
そして、アルカに水のレーザーを放つ。
「くっ!」
「アルカ殿!!」
モロに攻撃を受けてしまった。
このままでは、まずい。
「今度は私が助ける番よ! 【乱れ突き】!!」
クローがスキルでの攻撃を行うと、ヘイトがクローに向けられる。
「しまっ……!」
クローは、敵の腕にガシッと掴まれる。
「ヘリョリョリョリョリョ!!」
「「!?」」
アルカと極は目を見開く。
ミョミョミョという音と共に、クローの頭上に表示されているレベルが減っているではないか。
「クロー殿を放すでござる!!」
極が敵を連続で斬り付けると、クローが解放される。
「おい、やばいぞ。あのモンスター。レベルを下げて来る攻撃を仕掛けて来る」
クローの頭上のレベル27という表記がそれを証明していた。




