131.毬藻
イベント期間終了後、【ブレイドアロー社】、GWO運営支部では、会議室で再び会議が開かれていた。
「今回のイベントは中々良かったすね!」
強面緑アフロの新人、毬藻はペロペロキャンディを舐めながら発言した。
「だが、出会い目的のプレイヤーが問題となっているようだが?」
「それはオンラインゲームの宿命っすよwそれにそれはVRゲーム初心者だからどうって訳でもないっすよ。それよりまた次の企画を思い付いたんすけどぉ~(。◕ˇдˇ◕。)/」
「だが、黙って見ている訳にもいかないだろ!」
「真ん中分け先輩は熱いっすね。火傷しちゃうっすよ。じゃあ何すか? 何か予防方法あるんすか?」
「それは……」
真ん中分けの男は黙ってしまった。
こういった問題は、オンライン要素のあるゲームではどうしても起こってしまう。
それを防ぐという行為は、非常に難易度が高い。
ちなみに、ブレイドアロー社においても、注意喚起は促している。
「ないっすよね~。ま、注意喚起を強化するくらいっすかね」
そこでベテランスキンヘッドが発言する。
「では、もし被害にあっている人がいたらどうするのかね?」
「トロッコ問題っす」
「トロッコ問題?」
「そうっす。例えばこのゲームを楽しんでいる人、そして被害にあっている人……比率でいったら楽しんでいる人の方が圧倒的に多いんすよ。このゲームで救われた、中には生きがいとしている人多くいると聞いているっす。何でもGWOと出会い、死ぬのを思いとどまった人もいたとか? そんな大勢のプレイヤーの為なら、少しの犠牲(^^♪少しの犠牲((+_+))っすよ。それにブレイドアロー社くらいの馬鹿でかい会社で問題があったら、もみ消すのとか余裕っすよ」
「しかしだね……」
そんな中、真ん中分けの男は拳を静かに握りしめる。
「(まぁりもぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!)」
真ん中分けの男は、心の中で叫んだ。
会議中に大人げなく叫ぶわけにもいかず、心の中で毬藻に対し、怒りをぶつけているのだ。
「まっ、でもそういう考えは良くないっすよね。反省するっす! で、次の企画っすけど~」
毬藻はおもちゃの剣を取り出し、振り回す。
「魔剣を実装するのはどうっすか?」
魔剣とは、魔剣【ダークカリバー】の事である。
パーティ対抗トーナメントで、一時的に実装されたが、本当は元ラスボスの装備である。
現在は層が解放されたので、そのボスと戦う事自体できなくなってしまったのだが、プレイヤーの生命エネルギーを奪い強化するといった特殊性から「欲しい!」といった声も多い。
「(まともな意見だな)」
熱さを抑え、まともな意見な事に安心する、真ん中分けの男であった。
「ほぅ、魔剣……確かプレイヤーをキルすればキルするだけ強くなるという、あれですな」
オールバック社員は、うんうんを頷いた。
「後、実装する際には当然ユニークにするっすよ。2本は駄目っすね。エクスカリバーとか独占されちまいましたから。それに元ラスボスの装備っすからね。後、キルした際の上昇幅を抑える必要もあるっすね」
「ほぅ、無双しない為の良い配慮ですな」
オールバックは肯定的のようだが、真ん中分けの男が、立ち上がり発言する。
「ユニーク化には反対です。あれだけ欲しい人がいたんです。ここは確率を低くしても誰でも入手できる権限を与えるべきです!」
「なぁ~に熱くなってるんすか、張り合ってるんすか? それじゃ特別性が薄いじゃないっすか。それにこの武器はある意味で、皆平等っす」
「どういう事だ?」
「この武器は無料配布するっす! 完全ランダムで1名にっすよ」
「ランダム!?」
「そうっす。課金させずに、誰にでも平等な権利を……っすよ!」
真ん中分けの男は考え込む。
「分かった。やってみようか。不満があまり多いようだったらもう一度配布しようじゃないか」
「おっ! 真ん中分け先輩も小生の意見に賛成してくれて嬉しいっす! 炎上の心配はいらないっす。炎上してもブレイドアロー社の力でどうにかなるっす」
(やはり気に食わんな)
真ん中分けの男は着席するのであった。
「だが、それだと儲からないぞ?」
ベテランスキンヘッドが毬藻に言った。
「もう1つ考えてるっす! これっす!」
その企画とは、ユニーク衣装を作り高値で課金させる事であった。
どれもこれも可愛い衣装であり、これらの装備には今の装備のステータスに変更できるシステムが備わっている。
要するに外見だけ変更できるというものだ。
だが、これらの装備が出る確率は高いが、このガチャ何と、1回10万円。
おまけにゲーム内マネーは一切使用できず、リアルマネーのみでの支払いだ。
「た、高くないかね?」
「特別感を味わえるかもしれない……これを持っていると注目の的になるかもしれない! そう考えたプレイヤーは課金するっすよ! ほら、カードゲームとかでもあるじゃないっすか! あれと同じっす! それによ~~~~~~~~~~~く! 注意喚起を書き込んでおくっす! よ~~~~~~~~~~~~くね!(。◕ˇдˇ◕。)/」
「そういうものかね? 確かにネットではたまにそういった商品は見かけるが……」
結果、毬藻の意見が押し通された。
そして、デスクの方に真ん中分けの男が戻る。
「次の企画が決まった……」
「だ、大丈夫ですか? 何か疲れてそうですが……」
「立川、お前は心配するな」
真ん中分けの男は、今回の会議で毬藻の事が嫌いになった。
「先輩……あっ! そうだ! 今日のお昼、一緒に食べませんか? お昼奢ります!」
「そうか。では、お言葉に甘えようか」
大切な部下の為、頑張ろうと思える真ん中分けの男であった。




