表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/325

126.失恋

「当ててみましょう……ずばり、年下です!」

「!?」

「図星ですね?」


 9月の平日の夜、GWOのアルカのクランホームにいつものメンバーで集まっていた。

 なぜ急に集まる事になったのか?

 その理由はキメラにあった。

 時は1時間くらい前にさかのぼる。



「今日はキメラ君を慰める会に集まってくれてありがとう!」


 カノンは皆をクランホームに招集した。

 理由は簡単だ。キメラが落ち込んでいるからだ。


「……いや~、春ってすぐ過ぎるんですねぇ」


 キメラは椅子に座り、床を見つめていた。


「はっはっは! この通り、彼女はとても落ち込んでいる! 理由を言ってもいいかね?」


 カノンは後ろにいるキメラに確認を取る。


「別にいいですよ……というかたまにアルカさん達に言ってたじゃないですか……」

「つい、うっかりね! 私も君の悲しい顔を見ていると、とても心が痛む……皆、発表するから、慰めてあげてくれたまえ」


 カノンが皆の前で発表する。


「何と! キメラ君の愛しのケンヤ君が……転校してしまったんだ。私は恋とかしたことないから、気持ちが良く分からないが、とてもつらいと思う」

「別にいいんですよ……まともに話したこともありませんでしたから」

「キメラ君はシャイだからね」


 それを聴いたミーナが、カノンのテンションに若干引きつつ、キメラのそばで他のメンバーに聴こえないように言う。


「キメラちゃん……つらかったね……」

「ミーナちゃん……ミーナちゃんは好きな人いた事あるの?」

「好きになられた事ならあるかな……まぁ、その人に殺されかけたんだけどね」

「え?」

「幼馴染だったんだけど、私に矢を放ってきた」

「え……え……?」


 キメラは「何を言ってるんだ」とも思ったが、その表情が本気なのが分かると、考え込み……結果。


(これ以上詮索しないけど……ミーナちゃんってどっかの部族の生まれなのかな?)


 キメラは少し気持ちが軽くなった。

 だが、ミーナの話は重すぎた。


「そんな事もあるんだね……こっちこそ、何かごめんね?」


 キメラはスッと立ち上がる。


「よしっ! 私も立ち直らないと!」

「おお! ミーナやるな!」


 キメラが復活した。

 それを見たアルカはミーナを褒めた。


「ありがとうございます! そういえばアルさんは好きな人とかいた事ありますか?」

「俺かぁ。俺もないな~」

「じゃ好きなタイプを当ててみましょう」


 という感じで今に至る。



「凄いな、当たってるぜ」

「二分の一の確率ですから」

「なるほどな」


 ミーナは、極にも聞いてみる。


「極さんは好きな人とかいますか?」

「拙者は、いないでござるな」

「じゃ、好きなタイプを当てます……! 年上ですね?」

「わ、わかんないでござる……」


 恋愛とか意味不明な極は、グイグイと来るミーナに対し、少し困っていた。


「そうですかぁ……何というか皆さん……さめてますね」

「そういうミーナは?」

「いませんけど……いつか素敵な人を見つけます!」

(乙女だなぁ)


 両手を合わせ、キラキラした目で空を見るミーナであった。


「あっ、そういえば。皆は今度のイベントの告知見たか? 面白そうだよな」

「レベル差とかが無くなるって事は、新規が大量に入って来そうでござるな!」


 特定のイベント専用ダンジョンが用意され、そこでは【レベル】、【装備】、【武器】がリセットされてしまうというものだ。

 武器は、現在の職業で装備可能なものから1つ貰う事ができる。

 ただし、一番弱いものとなる。

 剣士であったら、【ショートソード】といった感じだ。


「私は今回はパスだね。【鍛冶師】だから相性最悪だ」

「私も【錬金術師】だからなぁ……」


 どうやら、イベントに参加するメンバーはアルカのクランからは少人数となりそうである。


「俺のアバターは初期でも能力値が高いからな。参加するぜ」

「あまり初心者をいじめないようにお願いします」


 キメラが念押しした。


「ああ、むしろ初心者を全力でサポートしてやるぜ!」

「お願いしますね? 目立つんですから」


 結果、今回参加するのはアルカのみとなった。


「え? 俺だけ!?」

「拙者は成績の問題でござるな……勉強しなくては……」


 最近GWOにハマり過ぎて、元々低い成績が更に低くなってしまったのだ。


「私はしばらくやけ食いでストレス発散するのでパスします」


 キメラも不参加だ。


「ま、新規に洗礼を浴びせてあげるといいよ。このゲームの理不尽さをね!」


 カノンはニヤリと笑いながら言った。


「新規ばかりとも限らないだろ? もしかすると、まだ見ぬ強敵と出会うかもしれねぇ」

「アルカ君も何か変わったね」


 イベント【ゼロダンジョンアドベンチャー】は、9月4日からである。

 運営の方で発案されたのが、8月31であったが、超大型企業という事もあり、すぐに実行に移されるのだ。タイミングを逃したらライフが減る可能性もあるので無理もない。最悪、行方不明者になる可能性もある。ブレイドアロー社の社員達は常に真剣だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ