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125.GWO運営は今日も頑張る

 初の運営サイドのお話となります。

「ここでようやくOPですか」


 コノミのリアルである、高崎たかさき 夕木ゆうきは、ギャルゲーをしていた。


「ああ、この映像でしたら確かにゲーム開始時には流せないですね。ギャルゲーにおいて、OPが流れるタイミングって重要だと思うんですよ。一番最初に流してしまうのも作品によってはありですが、中にはこのゲームのようにOP映像がネタバレとなってしまう作品も存在しますからね。例えば、2時間くらいプレイして、OPが流れると「ああ! ここからが本番か!」ってワクワクするものですよ。さて……夏休み最後! 沢山プレイしますよ~!」


 夏休み最終日であるが、宿題も明日の準備も完璧な夕木は、余裕を持ってプレイできるのだ。

 だが、社会人にとっては、平日。

 通常通り、業務が行われている。


 例えば、GWOの運営会社でもそうだ。



 ここは、【ブレイドアロー社】のGWO運営支部。

 この会社は非常に大きな会社で、GWOの運営はその内の1つに過ぎない。

 そんな運営支部では、一部社員達が会議を行っていた。


「サマーフェスティバルは盛り上がったようで何よりです」


 どうやら、今回はサマーフェスティバルの反省会を行っているようだ。

 しばらく話すと、次なるイベントについての意見募集が始まる。


「9月……秋ですねぇ……秋は長期休みがありませんからね。学生達は憂鬱な事でしょう。そんな憂鬱を引っくり返すようなイベントを開きたいものです」

「そうですね。ストレス発散と言いますと、やはり戦闘系のイベントでしょうか」

「いえ、負けたらストレスが溜まると思います」

「では、集客をして盛り上げる……というのはいかがでしょうか? 既存のプレイヤーだけですと、似たようなイベントに対し、“またこのイベントかよ、ボケが!”ってなってしまうと思うんですよ」

「ううむ……でもどうやって集客を……?」


 何人かの話し合いに1人の緑アフロヘアの強面男が意見を出す。


「小生にいい考えがありマッスル(。◕ˇдˇ◕。)/」


今年入社したばかりで若手だが、自分から意見をバンバン発言するので、ここの会議にも呼ばれているのだ。


「ほぅ? では、毬藻まりも君。どうぞ」


 毬藻はくわえていたぺろぺろキャンディをスーツの内ポケットにしまうと、発言する。


「えーとっすね! まず全員が同じ土俵に立てるイベントを開催するべきだと思うんすよね。正直、レベル上げって面倒じゃないっすか。素人が入った所で、イベントでボコられるのが落ちっす。でもさっ! だからと言って、戦闘系イベントを開かないのは勿体無いと思うんすよ。だから小生が考えたのは、装備、レベルがリセットされるダンジョンを設置し、そこで戦闘系のイベントを開く。って事なんすよ。そうすれば、初心者でもボロ負けする事は無くなるっす。勿論ダンジョンから抜ければ元通りになるっす」

「しかし、初期アバターの能力差とかでレベルリセットされても差が出るんじゃ……」

「そんなもん、いつものGWOじゃないっすかw。今更っすよ今更! 大体どんな感じでアバターがランダム生成されてるか、先輩パイ乙パイパイ達にも分からないっしょ?」


 事実、どのようにアバターがランダム生成されているかは、GWO運営支部の面々にも分かっていない。

 何やら極秘事項のようだ。


「確かにそうだが、もうちょっと口の利き方をだね……ほら、ライフが減ってる……」

「そうっすね! わりっす! イベントが成功すれば回復するからいいんすけどね」


 ライフとは……!

 その名の通り、ゲームとかでよくある、あれである。

 ゲージが0になると、ゲームオーバーになってしまうあれである。


 ブレイドアロー社では、ライフ制が導入されているのだ。

 会社に貢献すればライフが回復、場合によっては最大HPが増える。

 逆に貢献できなければ、ライフが減り、残りライフが0になると、クビになるシステムだ。

 ちなみに、過去にオーバーキルでライフが0になった社員は、偶然にも行方不明になり、クビにはされなかった。

 言動に関しては、AIが管理し、ライフを減らしている。

 だが、それのダメージは微々たるものだ。

 そう、ブレイドアロー社は実力主義だ。


 そして、会議は1時間くらい開かれ、次なるイベントが決定した。


「お疲れ様です。どうでした……?」

「次イベントが決定した」

「おお!」


 ちなみに、運営支部だけでもかなりの人数なので、班分けがされている。

 この班に毬藻はいない。


「次なるイベントは……」


 デスクに戻り、真ん中分けの男が今回の会議内容について話した。


「面白そうですね! ただ初期アバターの能力差が……」

「それについては何件か意見が出たが、普段からアバター格差はあるんだからそういうゲームだって事でスルーされた」

「そうですか……まっ、確かにそうですね」

「ああ、それと、立川! 今からトイレの個室に来るように!」


 こうして、GWO運営部の面々は次なるイベントに向けての作業を始めた。

 対して、真ん中分けの男は、部下の立川をトイレの個室に呼び出した。


「な、なんですか……?」

「これを渡しておこうと思ってな」


 そう言うと、真ん中分けの男は1枚のチケットを差し出した。


「!! コンティニューチケットじゃないですか!」

「立川の頑張りは知ってる。これからも一緒に働きたいと思ってな。だが、お前の残りライフも少ないだろ? だからこれを渡しておこうと思ってな。これからも頼むぞ」


 そう言うと、真ん中分けの男は去っていった。


「……何て優しい人だ……」


 新人に有能な人物が大勢いると、その年の年末に【ダメージ増量祭り】がブレイドアロー社で開催される。

 そうなれば、残りライフが少ない立川はクビになる確率が高い。

 だが、コンティニューチケットがあれば、一度だけクビを無効にできる。


「よし!! 頑張ろう!!!!」


 立川は上司の為、全力を尽くそうと思ったのであった。

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