124.人生はオンラインゲーム
MPを使い切る勢いで【トルネード】を使用した。
結果、その巨大な竜巻により、相手プレイヤーを撃破。
「ギリギリな戦いだったぜ」
「……」
パスタは立ち上がると、真剣な表情から一変、ニコリと笑った。
「負けちゃったわ。強いのね」
「実はあそこまでデカいのは初めて試した」
「そう……。凄いアバターを持ってるのね」
「ああ。俺の自慢だ」
2人は硬い握手をかわした。
「もっと広いフィールドだったら私が勝ってたかもね」
「どうだろう? その場合でも別な戦法で、俺が勝ってたかも?」
「あら? 随分と強気なのね?」
「いや、別にそういう訳じゃ……」
こうして……サマーフェスティバルの【アルカのクラン】主催の“ショー”は幕を閉じたのであった。
「アルカ殿! 今日は無事世界を救ったでござるな!」
コロシアムに人が居なくなった後、クランメンバーがコロシアムで集まっていた。
そんな空間で、極はアルカに対し、ちょっとした冗談を言った。
「いや、別に世界の命運とか、かかって無いし……」
「雰囲気でござるよ、雰囲気! ま、ともかく、拙者は凄く楽しかったでござる」
「そうか。まぁ、俺もだ。本当に良い思い出になったよ」
アルカはすがすがしい表情で、コロシアムの天井を見た。
「アルカ君。かっこつけてる所悪いね。戦いはまだ続いているのだよ」
「えっ? また誰かと戦うの?」
アルカは流石に疲れていたのか、一歩後ずさった。
「ちょっと会長! 誤解しちゃうじゃないですか!」
「ははは。ちょっとしたジョークだよ。でも、イベントが終了じゃないのは本当さ」
カノンは不敵な笑みを浮かべる。
「第2コロシアムで待つ」
「……!!」
アルカは考える。
(この流れは……!! “最後は私達が相手だ!”っていう流れだこれ。ジョークでも何でも無かった……!!)
アルカはちょっと力んだ。
が。
「アルさん。もう戦いは終わったんです!」
ミーナが力むアルカに対し、言った。
「ミーナ、俺なら大丈夫だ! さぁ! 皆! 行こうか! 第2コロシアムに!!」
第2コロシアムまで建設した事に対しては突っ込まず、クランメンバーを連れ、第2コロシアムへと向かうのであった。
しかし、第2コロシアム内部は真っ暗であった。
そして、カノンの指パッチンで電気がついた。
「「「「お誕生日、おめでとう~!!」」」」
「へ?」
第2コロシアム内部で打ち上げ花火やダイナマイトや爆発物、ダイナマイトクラッカーやダイナマイト花火が次々と無造作に発射される。
そして、それぞれが連鎖するように爆発していく。
「うわああああああああああああああああああああ!!」
物凄い爆風だ。
結果、第2コロシアムの屋根は破壊。客席も破壊。
それにより、室内だが、夜空が見えるようになった。
「アルカ殿……お誕生日、おめでとう」
極はアルカを見つめ、言った。
「そうか……今日……俺の誕生日だ」
「忘れてたでござるか? 次何歳になるかは分からないでござるが、祝わせてもらうでござる!」
極が呆れたように笑いながら言うと、アルカは予想外の展開に戸惑ってしまった。
「実はね。この日の為にアルカ君に内緒で計画してたりしてたんだ。どうだ? ビックリしただろう?」
カノンがドヤ顔で言った。
サプライズという奴らしい。
「アルさんこういうの慣れて無さそうですよね~」
ミーナは冗談半分で言った。
実際に慣れていないのではあるが。
「アルカさん! ケーキやご馳走も用意したんですよ!」
第2コロシアムにケーキや料理が次々と召喚される。
「ま、ゲーム内だから食べ過ぎとかないし、作れるものも限られてるからね。遠慮せず食べるといい。それに上を見ると、綺麗な花火が見える」
他クランの出し物だろうか?
打ち上げ花火が次々と打ち上がった。
ゲーム内とはいえ、リアルに再現された夜空とは相性抜群である。
(誕生日……別に何もない日だと思ってた。けど、まさか俺がこんな祝福を受けるとはね)
アルカはニコリと笑う。
「皆、ありがとう! 正直、予想外だった。まさか皆が俺の為に色々と用意してくれるとは……マジで嬉しい!」
「ははっ、気にしないでくれたまえ。料理もミーナ君の調合で簡単に作れたし、第2コロシアムもパーティ対抗トーナメントの優勝賞金がたんまりあったから余裕で設置できたし、そんなに苦労してないからね」
カノンはとても可愛らしい笑顔で無邪気に言った。
(な、何か……い、嫌な言い方だ)
キメラはカノンに対し、心の中でそう突っ込んだ。
「それでも限られた時間を使って祝ってくれただけで、かなり嬉しいよ」
「そうか、よし、皆、プレゼントタイムだ」
カノンが合図すると、極がアイテム欄から何かを取り出した。
「これ、皆で探したでござる」
「極君は面白い事を言うね。これは奪い取ったんじゃなかったっけ?」
「いや、あれは同時に見つけたからって事で、互いが合意の上で賭けをしただけでござるよ!? 何か誤解されそうでござる!」
何か本のようなアイテムを持っている。
「えーと、これは?」
極とカノンの漫才に困惑しながら、アルカは口を開いた。
「簡単に言うとでござるな……これを所持し、条件を満たすとユニーク職業になれるというアイテムでござる。残念ながら何になれるかは分からないでござるが……。でも、アルカ殿はユニーク職業になりたいって言ってたでござるから! だから皆で協力して手に入れたでござる!」
「えっ……。いいのか? そんな珍しい物貰って」
「アルカ殿の為に用意したでござるからな」
「……最高のプレゼントだな」
アルカはアイテム【就職支援の書】をストレージへと収納した。
その後、ケーキを食べたり、料理を食べたり。
【就職支援の書】を入手する際に戦闘したプレイヤーが強かったとか。
とにかく誕生日パーティーを楽しんだのであった。
「皆、繰り返すけど今日は本当にありがとう。そしてこれからも宜しく!」
「はい! これからも色々と、このゲームをエンジョイしましょう!」
キメラが天に拳をかかげた。
「そうでござるな! 何歳になっても、友達でござる!」
「錬金術師として、配信者として、これからも支援しますよ!」
「これからも私を楽しませてくれ」
極、ミーナ、カノンがそれぞれ言葉を送った。
(このゲームはオンラインゲーム。明確な終わりはサービスが終了する時だ。今まで人生ってのは、学生を終了した時点でEDかと思ってたけど……全然そうじゃなかったぜ! そう! 人生はオンラインゲーム!! 俺の、俺達の戦いは、これからだ!)
これからもアルカ達の戦いは続くのであった。
後日、アルカの【マイホーム】にて……。
「な、ななななな、何だって!?」
「いや、だからでござるな。拙者は、別な世界、別な時間からこのゲームにアクセスしてるのでござるよ!」
「極って、女の子だったの!? 滅茶苦茶意外だ!」
「驚くとこそこじゃないでござるよ!?」
アルカは極と2人きりで話をしていた。
極が秘密を打ち明けたのだが、話の途中で極が女子学生だという事が分かると、そこに驚いていたのである。
「いや、だって……証拠は……? き、極ちゃん?」
「な、無いでござる……というか極“ちゃん”は何か嫌でござる」
「ごめんな。じゃあ聴かせて欲しいんだが、こっちの世界とどう違うんだ? その平行世界の2008年とやらは」
「大きな違いとして、1つ言えるのは、VRゲームが無いという事でござるな。けど、こっちの世界にはスマイル動画が無いでござる」
「いや、だからスマイル動画ってなんだよ!」
「拙者お気に入りの動画サイトでござる♪ 拙者は中毒者でござるからな」
「?? とりあえず……妄想だとしても何か夢のない話だな」
「何ででござる?」
「未来人じゃなくて過去人って事だろ? おまけに平行世界と言ってもこっちの世界より遅れてそうだし……」
アルカはつい失礼な事を口走ってしまった。
「失礼でござるな!」
「ごめん。いや、そもそもマジなの?」
「マジでござるよ!」
※98話、99話、110話参照。
アルカは少し悩んだ後……。
「分かった」
「?」
「信じるぜ! というか、そうだったら俺も楽しい」
「!! ありがとうでござる!!」
「パラレルワールドとか都市伝説とか俺好きだからな。むしろ本当であってほしい。釣り宣言は無しだぜ?」
閲覧ありがとうございます。
第3章は、124話で終了となります。
そして、ブクマ、評価、感想ありがとうございます。
ここまで長く書けるとは思ってなかったですが、読者様による応援のパワーは凄まじく、30万字に到達しかけています。
しかし、文字数が多くなりますと、新規の読者様は最初から通して読むのは難しいかもしれません。
その為、4章の頭に、今までのあらすじのようなものを簡単にまとめようかと考えております。
これからもどうか宜しくお願い致します。
※2022年5月21日;誤字修正を行いました。




