117.ファンタジック☆フィールドを攻略せよ!
ミサキはスキル【ファンタジック☆フィールド】を発動させた。
発動後は辺り一面、メルヘンチックでカラフルなフィールドへと姿を変えた。
「これは一体……!?」
「とっておきですよ……! 私達、上位vtuberのね!」
ミサキはメルヘンチックな空間に似合わない大鎌を構える。
アルカは【ファンタジック☆フィールド】の効果が分からないので、下手な事をされる前に倒してしまおうと、ミサキへと低空飛行で向かっていく。
アルカの拳がミサキへ襲い掛かる。
が、
「あれっ?」
「はぁ!!」
アルカの攻撃をかわし、背後に大鎌を振り下ろしダメージを与えた。
「くっ! どういう事だ!?」
ここでアルカは違和感に気が付く。
(いつもよりスピードが出て無い……それ所か……ミサキからのスキルでも何でもない一撃を食らっただけで、HPの4分の1を持ってかれたぞ!?)
アルカは、スキルの効果を察する。
「この変なスキルの効果……さては俺のステータスを半減させるな……?」
「さぁ……? どうでしょうねぇ?」
ミサキは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「ま、多少強すぎるスキルですが……私は決めたんです。使えるものは使おうとね! そう、運も実力の内なのです!!」
そう言うと、ミサキは再び大鎌を構える。
「なーんてねっ! ハイドロレーザー!!」
ミサキの右手から水のレーザーが放たれる。
「エッッッ!?」
試合が始まり、あまり時間が経過していない。
それなのに……アルカのHPは残りわずかとなっていた。
(嘘だろ!? このダメージは半減ってレベルじゃない!! もっと……ステータスダウンの効果がありそうだぜ!! このままじゃ負ける)
アルカは焦りを感じたが、深呼吸し、周囲を観察しながら考察する。
(他の強スキルを使って来ないって事は、ミサキのMPはほとんど残っていない可能性が高い。強さに見合う程のMPを消費しているようだな。つまり、このフィールドを解除すれば勝てるかもしれない!! 何か……何かないのか!? 攻略方法は!!)
アルカはミサキの発言を思い出す。
何か……何かヒントは無かっただろうか?
『とっておきですよ……! 私達、上位vtuberのね!』
先程ミサキはこのように発言していた。
(vtuber向けのスキル……vtuberと言えば何だ? 考えろ!)
アルカの思考を邪魔するかのように、ミサキを応援するファンの声が耳に入る。
「ミサキちゃああああああああああああああああああああん!!」
元気にサイリウムまで振っている。
(何であんなにファンが居るんだよ……ん? そうか!! vtuberには大勢のファンがいる! そんなvtuber向けのスキルだったら……一か八かだ!!)
アルカはスキル【爆炎】を連続で放つ。
「どこ狙ってるんですか~?」
ミサキはニヤニヤし、余裕そうにしている。
だが、アルカの狙いはミサキでは、無い。
(狙いは客席だ……!!)
アルカのスキルが観客席へと飛んでいく。
「うわあああああああああああああああああああああ!!」
「何しやがんだ!!」
試合中、ミサキ以外へはダメージが通らないようになっている。
まるでガラスが貼られているかのように、観客の手前で火球が止まり爆発する。
衝撃もダメージも無いが、観客の怒りを買うには十分であった。
更に【爆炎】を放つ。すると。
「このっ!! ミサキちゃんと真剣に勝負しろおおおおおお!!」
ミサキを応援していた客は、応援をやめ、アルカへと叫び続ける。
(!? ま、まさか……こんな事が!!)
ミサキはさっきの余裕そうな表所から一変、焦りへと変わる。
【ファンタジック☆フィールド】が解除され、元のフィールドへと戻る。
「解除成功!!」
そう、このスキルの効果はファンからの応援が無いと発動できず、1人でも応援してくれる観客が居なければ解除されてしまうという弱点を持っていた。
アルカは【停滞音波】を発動させる。
「か、体が!!」
アルカの翼から発せられた不協和音を食らったミサキは、動けなくなってしまう。
「終わりだ!! メタルウイング!!」
ミサキを鋼の翼でミサキの体をHPが0になるまで、切り裂いた。
「ぐっ……やはり強いですね。完敗ですよ」
吹き飛ぶミサキ。
悔しさも当然あるだろうが、それ以上に満足そうな表情をし、立ち上がる。
「今日は素直だな」
「……実は、これでアルカさんを追うのはやめにしようと思ったんです」
「!?」
「いつも負けてばかりだった私は勝利の味を知りました……そう、美少女コンテストでの出来事です。それ以来、勝ちに拘って来ました。ですが、世界は広いと思ったのです。別に戦闘面で勝てなくとも、私には……別なフィールでの戦いがありますから!」
別なフィールド。
おそらく、配信業界での事であろう。
人気配信者を続けるのは難しい。
故に、ファンの声に答え、その人気に答えるのもまた戦いだと、ミサキは考えるようになったのだ。
「という訳です。今までありがとうございました。予想を超える戦法、お見事でした。では、お元気で!」
「そうか……もし」
「?」
「もし、戦いの味が恋しくなったら、いつでも相手になるぜ!」
ミサキは優しい笑みをアルカに向けると、コロシアムをあとにした。




