116.再再再戦
2021年8月29日、サマーフェスティバル当日。
第1層にある、はじまりの街は、現実世界の夏祭りのように提灯等が飾られていた。
本日は、このエリア全てがサマーフェスティバルの会場となる。
様々なクランが出し物をしているようで、そちらの方も賑わいを見せている。
「現実世界の夏祭りみたいだ」
現実世界ではまだ昼間だが、雰囲気を演出する為に、ゲーム内の時間帯が夜に変更されていた。
「GWO内でこんなに美味しいお菓子が作れるとは……驚きでござる」
極はわたあめを食べながらそう言った。
アルカは現在、極と一緒にサマーフェスティバル会場を巡回している。
自分達の仕事まで、まだ時間がある。
なので、その時間まで、サマーフェスティバルを極と楽しもうという訳だ。
「ははっ、確かにな。俺達も今度お菓子作ってみるか!」
「そうでござるな!」
(楽しいな……夏祭り何て何年ぶりだろうか)
アルカはサマーフェスティバルを極と共にエンジョイした。
☆
「ふふ、もうすぐ時間だ。楽しいショーを期待しているよ」
クランの地下コロシアムでカノンがニヤリとしながら、アルカに言った。
「ああ、全力で行くぜ! というか凄い観客だな!」
観客が人気野球チームの観戦かと思うくらい、大勢いる。
「地下にコロシアムを設置して正解だったな! ありがとう!」
「高い金を払ったかいがあったという訳だ」
アルカが仕事をしている間、クランメンバーが地下にコロシアムを設置してくれたようだ。
これで思う存分戦闘を楽しむ事ができる。
「それにしても、ミーナのアイテム屋は凄い人気だなぁ」
「人気vtuberだからね。それにアイテムの効果も質も高い」
(疾風は目当てのアイテム買えたかなぁ)
コロシアム出口でミーナがアイテム屋を、キメラがたこ焼き屋をやっている。
ミーナのアイテム屋にはサイン色紙を持って並んでいる者もいる。
「んん? んんんんんん??」
ミーナの隣には、見覚えのあるプレイヤーがいた。
「疾風じゃん」
「ん? ああ、あのプレイヤーね。有名vtuberともなるとセクハラとか色々される可能性があるからね。サマーフェスティバルが始まってからずっとミーナ君の後をつけていた疾風君というプレイヤーを、今日1日限定で用心棒として雇ったという訳だ。というか知り合いだったんだね?」
「この前友達になったんだけど……ま、大丈夫か」
アルカは考えを切り替える事にした。
疾風は紳士的なプレイヤーだと信頼しているからだ。
「さ、時間だ。ルールは以前説明したと思うが、アイテムの使用は禁止だ。後は好き放題暴れてくれたまえ」
ビーと音が鳴ると、会場が静まり返る。
「皆の者! 本日は我がクランに訪問いただき、誠に感謝する。今回我らクランが提供するのは“ショー”!! 存分に楽しんでくれたまえ!! では、最初にアルカ君と戦ってもらうのは……このプレイヤーだ!」
カノンが観客に挨拶をすると、選手入場口から、対戦相手のプレイヤーが出て来る。
「エレメンタル☆シスターズのミサキ君!」
会場が騒がしくなる。
「ミサキちゃああああああああああああああああああああん!!」
「うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「頑張れミサキちゃんんんんんんんんん!! 俺達がついてるぞー!!!!」
人気vtuberグループの一員だ。
熱狂的なファンが多いのも無理はない。
ファンの数は新人vtuberのミーナより遥かに多いのだ。
一方、アルカの応援は。
「師匠ォ!! やっちゃってくださいいいいいいいいいいい!!」
「がんばれー」
「がんばってー」
1人を除いて、テンションがあまり高くない。
唯一の人外アバターと言う事もあり、ファンが少ない訳ではない。
ただ、相手はアイドルvtuberだ。
過激に応援したらファンにリンチされる事恐れ、控えめな応援となっているのだ。
「おい! お前はミサキちゃんがやられる所を見て心が痛まないのか!!」
「これは真剣勝負です。どちらが勝っても恨みっこ無しですよ?」
「人の心が無いのか! お前!」
「このサイリウムに見覚えはありますか?」
アルカを応援していた観客の1人……まぁ、コノミなのだが。
コノミは、サイリウムと称し、2本のエクスカリバーを抜いた。
「エクスカリバー……!?」
怖気付いたようで、コノミに突っかかっていたプレイヤーは席についた。
ここで倒され、リスポーンしては、折角確保した席が取られてしまうからだ。
ちなみに【To_Soul】のバンド活動の方は大丈夫か? と思われるかもしれないが、許可を取って観戦に来ている。ショーが終わったら自クランに戻るつもりだ。
「ミサキちゃん……パーティ対抗トーナメントぶりだね」
「そうですね。今日こそ、アルカさん……貴方を攻略します!!」
ミサキはアルカに勝利宣言をする。
「今度も俺が勝って見せるぜ!」
電光掲示板のカウントがスタートし、それが0になると同時に戦闘がスタートした。
(私は学びました。がむしゃらに向かっていっても勝つことはできないと。冷静に対処すればきっと勝てる筈です。人気vtuberエレメンタル☆シスターズのミサキとしての私の戦い方を……アルカさん、味わってください!!)
ミサキはスキルを発動させる。
(スキル発動! ファンタジック☆フィールド!!)




