114.ルールとマナーを守ってゲームを楽しもう!
「じゃあ、サマーフェスティバルで会おう」
「師匠! お元気で!」
疾風は右手をビシッと、コノミは手を振って別れた。
「さて、俺も最終調整に入るとするか。この先ずっと仕事でログインできないだろうし」
アルカはマイホームへと移動する。
「さて、今の俺のスキルを確認するか」
★アルカの所持スキル
【第一の瞳】、【第二の瞳】、【第三の瞳】、【第四の瞳-ダークネスブレイクバースト】、【第五の瞳-プレストフォルム】、【咆哮】、【装備破壊】、【メタルウイング】、【爆炎】、【トルネード】、【破壊道】、【停滞音波】
「今のスキルはこんな所だな。即死攻撃は対策されてると思った方がいいな。そもそも俺の持ってる即死攻撃の第四の瞳は攻撃が遅い上に、MPの消費が激しい。これは使わない方がいいな。第一の瞳も弱体化したし、これは相手の動きを止めて攻撃しまくるしかないかぁ」
アルカは深く考える。
相手があんなに真剣になっているので、こちらもそれに応じないと失礼である為だ。
「ミサキとは何回か戦った事あるからまだいいけど、問題は極とパスタさんだな。おまけにパスタさんの戦いは一度しか見れてない。となると、隠された何かを持ってる可能性が高いな。むしろ今までのレベルが3だったから、レベルが上がってできる事が増えてると考えた方が不自然じゃないよな」
以前、パスタはレベル3であった。
その時点でもレベル50の相手を余裕そうに倒していたので、それより強くなっていると考えると、恐ろしい。
「あっ、後神ゴッドさんが居たな。一体どんなプレイヤー何だろ。マナーが悪いってのは聞いてるけど」
神ゴッドはマナーが悪い事で有名だ。
「ちょっと調べてみるか……」
アルカは、GWOからログアウトする。
☆
アルカはパソコンで神ゴッドのプレイ戦闘動画を見ていた。
『究極回復!!』
『こっ、このっ……!!』
『お゛い゛!! 効かねぇよ!!』
スキルによる遠距離攻撃をかわしもせずに、相手に走っていく。
HPが減っては増え、減っては増えが繰り返されている。
「不死身なのか……?」
不死身ではない。
【究極回復】に秘密がありそうだ。
神ゴッドはズボンに両手を突っ込み、ガムを膨らませる。
『ホアチャアアアアアアアアアアアアア』
『のぼっ!?』
神ゴッドは相手の頭に回し飛び蹴りを食らわせた。
『さて……決めるか!!』
神ゴッドは地面にガムを吐き捨てた。
「ライフドレイン!!」
神ゴッドが相手の頭を掴み、そのまま持ち上げる。
「があっ!? しまったぁ!!」
「へっへっへ! 愉快だなぁ!! お゛い゛!!」
対戦相手のHPが物凄い速度で減っていき、HPが1の所で止まる。
【ライフドレイン】の効果のようだ。
「ゴッドキィィィィィィッッック!!」
スキルでも何でもないただの蹴りを神ゴッドは繰り出した。
対戦相手は「ぅぐ」と呻きながら、壁まで吹っ飛んだ。
「くっ……負けか……」
対戦相手のHPが0となり、試合が終了した。
神ゴッドはゆっくりと、倒れているプレイヤーに向かう。
「お゛い゛!! どうだった!? 試合の感想は!!」
「強かったよ……俺はプロゲーマーをかつて目指していたと言うのに……それでも歯が立たなかった……」
「い゛いか!? このゲームはな゛ぁ゛!! 全てはランダムアバターの当たり外れとスキルで決まるんだよ!! いくらプレイングスキルを磨いた所でぶっ壊れスキル、ぶっ壊れアバターの前には糞の役にも立ちやしね゛ぇ゛!!」
なぜか対戦相手に説教をし始めた。
「で、でもプレイングスキルを伸ばせばいつかは……。コノミちゃんとかだってユニークスキル無しで勝って来てるじゃないか!!」
「貴様、コノミって奴は最近ユニーク武器のエクスカリバーを手に入れたらしい。実力で手に入れた1本目はいいとして、2本目は運良くガチャから排出だってよ! お゛い゛!! 持ってるんだよ! ユニークスキルが無くとも、持ってる奴は運も持ってるぅ゛んだよ゛!! お゛い゛!! おめぇはどうだ? 特別な何か……あんのか? お゛い゛!!」
「少なくとも、君より礼儀はあると思ってる」
「な、なにぃ……!? お゛い゛!! 許さんぞ!! 許さんぞ!! 許さんぞ!! こっ、このぉ゛!! 私を侮辱するのは許さんぞ!!」
ここで動画は終わっている。
何とも強烈なプレイヤーであった。
「分かった事は、おそらく回復系のスキルを極めてるって事だな。それにしても声が大きいな。というか、ライフドレインやべぇ……」
特に気にしていなかった神ゴッドがもしかして一番厄介かもしれない。
そう考えるアルカであった。
「強敵が多過ぎる。俺のスキルで何とかなるのか……?」
もしかしたら、誰かには負けるかもしれない。
そんな不安がアルカの頭をよぎっていた。
「不安……? なぜ?」
別にこれに負けたからどうなるという訳でもない。
死ぬわけでもない。
それなのに不安になるというのは、それだけこのゲームに本気になっているという証拠であろう。
「ま、いいか。あ、そういえば」
アルカはカレンダーを見る。
「サマーフェスティバルって丁度俺の誕生日じゃん」
また1歳年を取ると考えると、ちょっとテンションが下がるのだった。
「別に誕生日だからって何かする訳じゃないから、サマーフェスティバルをエンジョイできそうだ。もしかして、大人になってから一番の誕生日になるかもな」
アルカはニヤリとするのであった。




