113.疾風の秘密 ※微下ネタ注意
「動きが止まりました! 今です!」
コノミが2本の剣を光らせ、攻撃する。
攻撃系スキル【クロスブレイド】だ。
アルカもそれに続くように、攻撃する。
「(本当は即死効果を持ったスキルで終わらせたい所だが、ボスには通用しない。だったら……!)」
【トルネード】を使用し、それがヒットした瞬間に【爆炎】を放つ。
「ジョボボオオオオオオオオオオオオオオオオ」
炎の竜巻攻撃がジャイアントタートルを襲った。
「一気に決める! ドリームスイング!!」
疾風は、広範囲、高威力の斧専用スキル【ドリームスイング】を使用した。
3人の連続攻撃により、敵のHPも半分を切っていた。
「ジョボボボボボボ」
「させません!! ギャラクシー・ザ・スラッシュ!!」
最大100連撃を放つ【ギャラクシー・ザ・スラッシュ】がコノミのエクスカリバーから放たれる。
「ジョッボオオオオオオオオオオオ」
ジャイアントタートルは怯まずに、再び高速回転を始める。
コノミは「はっ!」とする。
「ぐあっ!」
「コノミくん!」
コノミは敵の攻撃をモロに食らい、壁に吹っ飛ばされた。
その為、HPが4分の1になってしまった。
トドメをさす為に、敵は倒れているコノミに高速回転と高速移動で襲い掛かる。
「一直線……みえみえだな」
コノミの前に斧を構え、疾風が立つ。
「見えたっ!」
疾風はまたもや、ジャイアントタートルの頭に斧を的確にヒットさせた。
高速回転中に攻撃を当てられるのだ。並のプレイヤーではできない。
「一緒に行くぞ!」
「ああ!」
アルカは【メタルウイング】で翼を鋼へと変える。
疾風は再び、【ドリームスイング】を発動させる。
2人の攻撃は、ジャイアントタートルへ同時に放たれた。
「ジョッ……ジョボアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
ジャイアントタートルのHPは0。
その肉体は、粒子となり砕け散った。
☆
秋のダンジョンを攻略したアルカ達。
第1層はじまりの街の公園に行くと、芝生に座った。
「いやぁ、僕とした事が……2人ともありがとうございます」
「気にするな。それよりもあのギャラクシー何とかは隙が大きすぎるな」
「そうですよね……」
「あれを使わなければ敵の攻撃をかわせたんじゃないか?」
疾風はコノミのプレイングスキルの高さを分かっている。
それを分かっているので、そう言っているのだ。
「確かにそうかもしれません……もっと使い時を考えなくてはなりませんね」
「まっ、勝てたからいいじゃないか! コノミくん、疾風、ありがとな!」
コノミは照れ臭そうに頭をかき、疾風は「ふっ!」と笑いながら口元をニヤッとさせた。
「それにしても本当に良かった。レベル60を目標にしていたんだけど、63にまで上げられたぜ」
ミーナのアイテムのおかげもあり、アルカは15レベルも上がったのだ。
ちなみに疾風のレベルは53。コノミは70となっている。
コノミに関しては、この戦いでカンストしたようだ。
「凄いレベルの上がり幅だな。何かアイテムでも?」
「うん。俺のクランメンバーがそういうアイテムを持っていて、それを使ってる」
「それは買えるのか?」
「欲しいのか?」
「ああ。今度買いたい。俺はこの中だと一番レベルが低いからな」
「ああ、それだったら」
サマーフェスティバルでミーナがアイテムを売るという事を疾風に教えた。
「ほぅ。是非行かせてもらう」
「ミーナもきっと喜ぶぜ」
アルカは嬉しそうに笑った。
そんな時、疾風が何かを思い出したようで、口を開く。
「そうだ、俺がどうやって今の動体視力を得たのかを知りたいんだったな」
「あっ、そういえば教えてくれるんだったな」
コノミがゴクリと唾の飲み込む。
「本当に……本当に教えていいんですか……!?」
顔から汗を流すコノミ。
なぜここまで緊張しているのだろうか?
「構わない。今回の戦いの中で分かった。アルカは信頼できるプレイヤーだ」
「でも……」
「何をそんなに不安がっている?」
「いや、正直人によっては、“えっ……?”ってなりますよ?」
「そうか?」
少なくとも、コノミは「えっ……?」となったようだ。
アルカもコノミの緊張を感じ取ったようで、ゴクリと唾を飲み込む。
(一体……どんな過酷な修行なんだ……?)
「アルカ、そう緊張するな。特訓というよりは趣味だ。それ続けていたら自然に動体視力が身についてたと言った方が正しいか?」
(趣味……?)
「では教えよう、その趣味とは……女の子の動画を視聴する事だ!」
「へっ……?」
アルカは表所をポカーンとさせた。
「女の子の動画……?」
「ああ、これはもう20年は続けている」
「女の子の動画を見て何であそこまで驚異的な動体視力を得られたんだ?」
今の発言で、疾風のネット歴20年以上という事が分かる。
つまり疾風は、アルカより年上の可能性が出てきたが、特訓内容が意味不明過ぎてそれ所では無かった。
「すまない。説明不足だった。動画サイトではリアル、ヴァーチャル問わずに様々な女の子が動画を投稿している。そうすると、“見える”瞬間が在る。特に録画不可能設定になっている生放送なんかは1度限りのチャンスだ。ほんの一瞬のパンチラを追いかける日々を続けていた結果、今の動体視力が身に付いたという訳だ。コノミには口止めした方が良いと言われてるからな。他言無用で頼む」
疾風は真顔で言い放った。
(こんなプレイヤーがいるのか……へっ、やるじゃねぇか!)
アルカは、自身の想像の遥か斜め上を行く疾風に対し、心の中でそう思ったのだった。
「えーとアルカさん。兄貴はちょっと天然なんです。引いても良いんで、これからも仲良くしてください」
「ああ。分かった。ただちょっと驚いたな」
ちなみにアルカはこの特訓をするつもりは無いらしい。




