112.男の友情
「まぁ、ユニークスキルには大分助けられてるな。コノミくんは、ユニークスキルとか使うのか?」
「ついこの前まで取得条件が不明だったスキルは持っていますが、残念ながらユニークスキルは持ち合わせていません。あっ、気にしなくて良いですよ? 僕にはこのエクスカリバー達がいますからね!」
コノミは両手を腰に当て、「えへん!」と胸を張った。
「応援してるぜ。っと俺はこれからレベル上げをしなくちゃならないんだった」
「レベル上げですか。さては誰かと戦いますね?」
「なぜそれをっ!?」
「カンです。僕も今暇なので、一緒に攻略しませんか? 今日は休ギャルゲー日なので、沢山GWOをプレイできますからね」
ギャルゲー大好きなコノミだが、やり過ぎは良くないと考えているようで、自主規制しているようだ。
「じゃあ、一緒にやろうか」
「はい! お供します! あ、それで何ですけど、今からもう1人来るんですけどいいですか?」
「? 同じクランの仲間か?」
「いえ、違います。クランは違いますが、大事な僕の兄貴です」
「兄貴……? お兄さんか?」
「兄貴は僕のお兄さんではありません。ですが、僕の心の兄貴です。正直ちょっとヤバイですが、良い人ですよ」
ヤバイとは何がヤバイのだろうか。
そもそも兄貴という事は、そのプレイヤーもリアルが男性の可能性が大である。
もしそうであれば、性別を明かす程の仲なのだろう。
「そうか、じゃあ、3人でやるか」
ヤバイという点が引っ掛かったアルカであったが、真面目なコノミが良い人と言っているので、大丈夫だと思う事にしたようだ。
「あっ、来ました! おーい! 兄貴―!!」
1人のプレイヤーがゆっくりと歩いてくる。
青のロングヘアが特徴的であり、ボーイッシュな雰囲気である。
「待たせたな。ん? この龍は……?」
「この方は僕の師匠! ま、勝手に決めたんですけど」
アルカはお辞儀をし、挨拶をする。
「はじめまして。アルカって言います。これでもプレイヤーです」
「プレイヤーか! っと、敬語は良してくれ。こちらが申し訳なくなる」
「おっと、ごめん」
GWOは、雰囲気的に敬語で無くとも、マナー違反と取られる事はあまり無い。
「ふっ、今日は宜しく頼むよ。俺の事は、疾風と呼んでくれ」
疾風は手を差し出した。
アルカはその手を握り、握手をする。
「疾風か。かっこいいな!」
「ありがとう。では、早速奥へ進むか」
3人はモンスターを倒しながら、進む。
疾風は、斧を武器としているようだ。
「おっ、もしかして職業は物理アタッカーか?」
「ああ。少し前まではな。今は、“斧使い”を職業としている」
【物理アタッカー】からの派生により、【斧使い】という職業に就く事ができる。
文字通り、斧を使用した豪快なスキルを多く覚えられる。
しかし、武器は斧以外装備出来なくなる為、人気は低い。
「ふっ!」
疾風はモンスターの動きを完璧に見切り、相手にスキル攻撃を叩き込んだ。
「モンスターの動きを見切っている……このエリアを相当やり込んでいるんだなぁ」
奥へ進むにつれ、モンスターの種類も増えてきた。
だが、全ての攻撃を回避している。巨大な斧を持っているのにも関わらずだ。
「いや、初見だぞ?」
「!? 凄いな!!」
「そっちこそ凄まじい攻撃力だね。僕の武器より強いかもしれない」
コノミが2本のエクスカリバーを振るいながら言う。
「兄貴は凄まじい動体視力を持っているんですよ。凄い才能ですよ。本当に」
「よしてくれ、これは努力を積み重ねた結果だ。元の俺は凡人に過ぎないさ」
アルカは、「謙虚な人だなぁ」と思った。
それと同時に動体視力を鍛える為にどんな修行を積んだのか気になった。
アルカのプレイングの弱点を補える可能性があるので、是非とも知りたいと考えたのだ。
「努力って何をしたんだ? 俺、敵の動きを見切るの苦手だから、興味あるな」
「興味があるか……。いいだろう。だが、先にボスを倒してからでも良いかな?」
「あ」
いつの間にかボス部屋の前にまで来ていた。
1人でコツコツレベル上げをしていた時に比べ、時間の流れが速く感じた為だ。
「楽しい時間はあっという間だぜ」
「嬉しいことを言ってくれるな。俺も同じ気持ちだ」
「へへっ!」
「ふっ!」
コノミは。
(2人共、気が合いそうで良かった!)
自分の友達同士が仲良くしているのを見て、喜んでいた。
ボス部屋へと入ると、巨大な亀のモンスターが居た。
その名も、ジャイアントタートル。
「見た感じ、防御面が強そうな相手だな」
「そうだな。コノミくん、疾風……頼んだぜ!!」
2人はアルカの呼びかけに頷いた。
「ジョオオオオオオオオオオオオオオオオ」
ジャイアントタートルは、高速回転をし、そのままフィールドを移動。プレイヤー達を狙う。
「爆炎!!」
アルカはスキル【爆炎】を使用し、口から火球を放った。
しかし、敵の動きは止まらない。
「回転してる間は、あまりダメージが通らないな」
「そうですね。とりあえず、回転中は回避に専念します」
回転の勢いを利用し、大ジャンプで攻撃して来るので、飛行ができるアルカと言えども、油断できない状況が続いた。
「いつまで続くんですか!?」
回転は一向に止まない。
だが、その状況を打破したのは、疾風であった。
「見えたっ!!」
疾風が目を大きく見開かせた。
そのまま疾風が頭に一撃を入れると、回転が止まり、敵はフラフラし始めた。




