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102.夏休みはイベント沢山!

 平日の夜、気晴らしにGWOにログインするアルカ。

 学生たちは夏休みという事もあり、相変わらずクラン参加の返事を全員から貰えていない。遊びに勉強に忙しいのだろう。

 だが、学生であろうと夏休み期間をゲームに費やす人、又は特にやる事がないので、ゲームをしている人も居るだろう。そんな中、モンガルコラボだけで終わらすのは勿体無い。

 運営はモンガルコラボ以外にも3つのイベントを用意したようだ。


 1つ目は【SPウェポンを見つけよ!】 というものだ。8月いっぱいの間、GWO内のどこかにSPウェポンと呼ばれるユニーク武器が隠されているので、それを見つけようというイベントである。宝探しのようなものだ。

 ただ、条件付きで出現する場合もあるので、そこは要注意である。

 隠されている武器の種類は、剣、盾、弓、杖、槍、ハンマーの6種類である。

 どのSPウェポンにも共通している点はスキルが武器に内臓されている点と、装備した際に武器がキラキラ光る、特別なエフェクトが出現するという点である。薄暗いエリアで装備すればその瞬間、目立つ事間違い無しだろう。目立ちたいプレイヤーにもおすすめ。


 2つ目は【虫取り大会】である。

 イベント専用エリア、【虫の森】で虫モンスターが多数登場。

 中にはレアな虫モンスターも!? テイマーは特に要チェックだ。


 3つ目は【サマーフェスティバル】。要するに夏祭りである。

 現実世界で1人で行く勇気がない。という方にもおすすめのイベントだ。


「学生は夏休みという事もあって、イベント盛り沢山だな」


 アルカは運営からのお知らせを見て呟いた。


「SPウェポンか……。ユニーク武器って事は各種1つしか無いのか。スキル内臓ってのは気になるけど、大きさ的に俺向きじゃないな。虫取り大会はまたしてもテイマー向けのイベントみたいだな。となると、俺が楽しめるとしたらサマーフェスティバルだな。……ソロでも楽しめるよな?」


 実は周囲のプレイヤーが二人組以上だったら少し恥ずかしい。

 そう考えてしまった。ただ、祭りの雰囲気を味わって童心に帰りたいという想いも確かにある。

 そもそもVRゲーム内での夏祭りを味わうのはアルカの場合、初である。

 純粋にどんなものなのかも気になる。


「誰か誘うか。キメラちゃんとカノンちゃんは学生で忙しそうだし、ミーナも学生っぽいし何よりvtuberとしての活動が充実しているからなぁ……」


 アルカは数秒間頭を悩ませるが、すぐに名案を思い付く。


「極だ。奴はニート! つまり毎日暇している。夏祭りとか行った事ないかもしれない。だったら誘わなきゃお互い損って訳だ。男2人とかそんなの関係ない。そう、このゲーム内のプレイヤーは全て女の子なのだからっ!」


 アルカはなぜか、「決まったぜ」とでも言いたげな表情をしていた。

 普段自信の無いアルカだが、一度思い込むと疑わない性格という一面も持ち合わせている。こうなってしまっては一種の自己催眠状態だ。


「おっ! 丁度極がログインしてる。ちょっと聞いてみるか」


 アルカはメニュー画面からビデオ通話を選択する。

 数秒コールが鳴った後、極のアバターが空中ディスプレイに映し出される。


「こんばんはでござる」

「おう! 暇か?」

「ぼちぼちでござるな。今日はレベル上げしようとしてたでござるが、リアルの疲れが今になって出てきたから、そろそろログアウトしようと思ってたでござるよ」

「ん?」


 アルカは疑問に思った。

 何に疲れたのだろうか?


(人生……何てな!)

「?」

「悩みがあったら聞くぜ?」

「悩みは特に無いでござるなぁ」

「じゃあ、なぜそんなに疲れている?」

「友達とお祭りに行ったでござる。いやぁ、振り回されっぱなしでござったよ」

「は? 祭り……? 何のゲーム? 極って他にVRゲームやってたっけ?」

「リアルでござるよ。リアルで友達とお祭りに行ったでござるよ」

「そ、そんな!? (どういう事だ!?)」


 アルカは一歩後ろに下がってしまう。


「相手は……女の子か? 二人きりか?」

「女の子でござる。向こうが二人でって言ってきたから二人でござるよ」


 漆黒の龍の腹の中で、静かに何かが暴れた。

 上空へ向かってスキル【爆炎】を放ち、その後指をディスプレイに向けて指した。


「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッカァヤロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!! 何してるぅうううううううううううううううううう!?」

「うわっ!? 急にビックリしたでござるな」


 アルカはニコリと笑う。


「いやぁ、ごめんごめん! ちょっと驚いちゃってね。なるほど! てっきり極は女の子にモテないタイプだと思ってたから意外だったよ! なるほど! やっぱりそういう縁ってのは大事にしなきゃね」

「何を言ってるでござるか……?」


 アルカは極を、引きこもり気味の中年男性ニートだと思い込んでいる。

 実際は女子中学生なのだが。

 そんな訳で話が嚙み合わないのだ。


 アルカは再び優しくニコリと笑う。


「本当はサマーフェスティバルに誘おうと思ってたんだけど、俺と一緒じゃ楽しくないよね? いや、ごめんねっ☆ じゃあ、今日の所はここで退散するぜ! バイビー☆」

「え? ちょっ」


 アルカはテンションを上げながら、ディスプレイを閉じた。


「くっ! まさかのダメージを負ってしまったぜ! だが、こうなったら別な奴を誘うしかねぇな。幸いサマーフェスティバルの開催日は今月の29日。まだ時間はある。29日までに俺と遊んでくれるプレイヤーを何人でも募集してやるぜ! 楽しくなってきたぜ!」


 アルカは彼女が欲しいとかは、特に考えた事が無かった。

 では、なぜこんなに動揺しているのか?

 それは、アルカの過去にあった……。悲しい過去だ……。

 簡単に言うと、学生時代にネット友達を作り親友だと思っていた人が居たのだが、彼女が出来たと報告があり、その一週間後くらいからログインした形跡が無くなった。そして、二度と連絡が取れなくなったのだ……。

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