2#噂
2人が教室に入ると、もうすでに生徒がたくさんいて、
自由に席に座って、話をしていた。
空いているのは、窓際の後ろのほうの席。
外も見えるし、後ろだし、なかなかいい席だ。
「そういえば、」 と、鞄を机の上に置いた優里が切りだした。
「うん?」 その前に座った杏奈がドサッっと乱暴に鞄を置いた。
「今日、変なメールが来たの。」
「メール?」
「うん。好きな人誰ー?って...。
知らないアドレスから。」
「・・・もしかしたら、優里のことが好きな人かもね。」
「何それ。ただのチェンメだよ。」 と、優里は笑い返した。
新しいクラスメート。
きれいに消された黒板。
机の上の落書き。
新学期らしいなと優里が思っていた、その時――
――ガラッ
「!! 沖野 来た...。」杏奈が『!!』と、反応した。
「あ、ほんとだ。」
杏奈は、沖野 直生が教室に入ってくるところを見つめている。
「杏奈、ほんと好きだね。」と、優里が苦笑いしながら言った。
「うん♪だってかっこいいもん。。」
「え、理由はそれだけ?(笑」
「いや、そーじゃないけど――」と、杏奈が反論しようとした....
「おはよ。」
「あ、直生。おはよ。」
直生が、優里たちの横へ来て、杏奈の言葉をさえぎった。
「悪いけど、隣いい? 席空いてなくて。」と、直生が優里の隣の席を見ながら言った。
空いているのは、優里の横の席と、その後ろの席だけだった。
「うん、いーよ。」 と、優里は笑顔で答えた。
横で、見ていた杏奈は、
「おはよっ!!!」
負けじと、優里に負けない笑顔で言った。
「杏奈ー、優里ちゃん、おはよー。」
駆け寄ってきたのは、綾。同じクラスになった女の子だ。
「あのさ、転校生くるんだって。すごい噂になってるよ。」
「え、嘘ー?!」
「うちらのクラスか、1組に。....男子だって。」綾が語尾にハートをつけて言った。
「イケメン?!」 そこが大事!と、杏奈が聞いた。
綾は、少しためて・・・・
「イケメン。」
と答え、にっこり笑った。
それを聞いた杏奈は、もう「一大事」というようだ。
「どうしよー、惚れたらどうしよー。」
「ちょっと、杏奈。直生は?どうなんの。」
あきれながら、隣の直生に聞こえないように優里が尋ねた。