初クエストは意外と簡単
異世界の朝は早い。
ハルナは朝日が出だした頃に起き始めて、
他の人が起きていないことを確認すると
朝の支度をする。
その後部屋に備え付けられたキッチンに行き、
少し前に買って置いた野菜と鶏肉、牛乳を使い
簡易的なクリームシチューを作っていた。
そこに昨日朝買ったパンを置き、
四人分の朝ごはんが作られた。
そこにナツミとシンジが起床した。
二人もハルナと同じように朝の支度をする。
「ねぇ、二人ともタツくんを起こしてくれない?
シンジ君は知らないと思うけどタツくんは
朝が弱くていつも中々起きないからね、頼んだ」
シンジは「はいはいー」と返事すると、
ナツミと一緒にタツをそれなりの時間と労力をかけて起こした。
タツも朝の支度をすると、四人はそろって椅子に
座り朝ごはんのシチューとパンを食べ始めた。
四人はそれぞれおいしいと言ったり、雑談をしながら朝食を食べ終わった。
朝食の後ハルナが今日はクエストを頼まれていると言うと、三人とも嬉しそうな顔をして、三者三様に
やる気の満ちた顔していた。
ハルナの案内で依頼者のいる建物へ来た一行が目にしたのは「中央情報場ペデスタル」と書かれた、
五階建ての大きめの建物だった。
「うわ〜やっと僕たちにもペデスタルから依頼が
くるようにもなりましたか!やりましたね」
テンションの上がるタツに対してハルナとナツミは
苦笑いをしていたが、シンジに至っては実感が無いようだった。
「そんなにペデスタルから依頼がくるのってすごいことなの?」
「もちろんだよシンジ!、この町を実質統治しているペデスタルから依頼がくるってことはこの町で
実力があるって認められてっことだからね」
シンジが理解すると、四人はそろって中に入っていった。室内は大きな吹き抜けになっていて、中央には大きな柱が建っていて、それを囲むようにカウンターが並んでいる構造となっていた。
室内には多くの人で溢れていて、ほとんどの人が
大きな荷物を背負っていた。
ハルナは地図を見ると、五階にある「外部連絡室」の場所を確認した。そしてハルナが先行して四人は
階段で五階まで行きそこにある「外部連絡室」に
ノックをして返事がした事を確認すると、部屋に
入っていった。
「おお、来たか。大体時間通りだな。まずは座ってくれ」
そこにいたエルフと思われる年老いた見た目の老人に促された四人はソファーに腰を下ろした。
「さっそくだが依頼の詳細を伝えておこうと思う。
最近、他の町との交易路に手強い魔物が住み着いて
しまってな。簡単に言うとそこに住み着いた魔物を
狩ってきてほしい。依頼料はすでにギルドの方に払っているから討伐したら受け取ってほしい。場所は町の南出入口から出て少しした所にある交差点だ」
彼の説明を聞くとハルナは笑顔になると、
やる気の満ちる声色で「精一杯やらしていただきます」と言って一礼すると、そのまま四人は部屋を
出てペデスタルを後にした。
「これから、どうしますかハルナさん?
私としては早めの交易路回復のために早めに討伐したいです」
「うんうん、私もそう思っていたんだ。準備をしたら今から行こうと思ってるんだけど。タツとシンジ君はどうかな?」
タツとシンジは二人とも頷くと、一行は一度宿に戻ると色々持っていく者を整理して、町の南の出入口
にそろっていた。
「いや〜いよいよだね、シンジ君は初めてのクエストで緊張してる?」
「いえいえ、どちらかと言うとワクワクしてる気持ちの方が強いので、ほとんど緊張していません」
「そうかそうか、多少の緊張感を持っている所にも
関心できるね。ナツミとタツは今の気分はどう?」
「大丈夫ですよナツミさん。油断しないように頑張ります」
「もちろん僕も本気でやりますよ。四人での連携も
試したい所ですからね」
ハルナは二人の答えにも満足したのか、笑顔で頷くと「さぁ、行こうか」と言って目標地点へ、
向かった。
目標地点には依頼で言われていた通り巨大なネズミとそれより巨大な武器を持った俗に言うゴブリンがいた。
「すごいな初めて魔物を見たけど、やっぱり魔物なんだな」
「当たり前じゃんシンジ。感動してる暇があったら
戦う準備しようぜ」
タツの言葉を皮切りに、ハルナは弓を構えて、
ナツミは深呼吸をして、タツは双剣を構えた。
そしてシンジは小さなメスを手に持ち、そのまま
自分の指に少し切り傷を入れて血を出した。
魔物達がこちらに気づくと、ハルナは冷静に矢を当てていき、ナツミは魔法を詠唱し始めた。
「白魔法 氷属性 アイスグランド」
詠唱が終わると魔物達の足元が凍り動くことが出来なくなった。
その隙を狙うようにタツが接近して魔物を切り裂いていき、シンジは血を滴らせながら詠唱をした。
「黒魔法 召喚術 ソードコール」
シンジの右手には長剣が握られ、魔物達を切り裂いていった。
ネズミ達が全滅した頃にはゴブリンとの対決と
なっていた。
「このゴブリンだけ手強いんだけど、どうしましょかハルナさん」
「う〜ん、あれかな魔王軍のやつかもしれないね、
作戦としては私とナツミで動きを止めるから、
タツとシンジで止めをさすって感じで」
三人の了解という言葉と共に作戦が開始された。
ハルナが矢を連続で打ち、ゴブリンを地面に固定してそこにナツミが氷を張り身動きのとれないように
する。
最後にタツとシンジが同時に固定されたゴブリンを
切った。
「やりましたね、これでクエスト達成ですね」
「ゴブリンだけが厄介だったですけどね」
「まぁまぁ達成したからいいじゃんタツ。私も達成できて嬉しいよ」
「それでこれでどうするんだ?」
「ああ、シンジ君は初めてだったね、たまに忘れちゃうよ〜。でもクエストはこれで終わり。このまま
帰ってギルドに報告して、報酬をもらって終わり」
そのまま四人はギルドに戻って報酬をもらった。
「いいんですか?報酬のほとんどを夕食につかっちゃいましたけど」
「心配しなくてもいいよシンジ君、今回みたいな直接頼まれてるクエストな少なくてね、もしお金がなくなっても募集されてるクエストを受ければいいからね。それにクエスト達成のお祝いは必要でしょ?」
「それなら、確かにそうですね。これからもどんどんクエストを受けいきたいですね」
「やる気だね〜シンジ、僕としてはクエストはたまにやる程度で、ゆったりしてたいんだけど。ナツミもそうでしょ?」
「私もたまに頑張るぐらいがいいかな〜」
「まぁそれは追々決めていこうよ、今日はたくさん食べて、たっぷり寝てまた明日にでも決めようね」
ハルナの宣言通り四人は夕食をたらふく食べて、
そのまま部屋に戻りぐっすり眠ってしまった。