朝自習が捗らない被害者は1人だと思った?
僕の名前は宮下大輝。
上岡君や石坂さんのクラスメートだ。登校時間はだいたい、朝の7時50分。そう、上岡君より早く教室に着く3人のうちの1人だ。ちなみに席は廊下から2列目の前から3番目。夏はエアコンめっちゃ当たると予想。
さて、明日はゴールデンウィークだが関係ない。毎日のように机に教材を広げてホームルームまで自習を……
・・・
できない!!
できるかボケェ!教室の斜め後方を見ろ!毎朝いちゃついてる2人組がいるんだ!石坂さんと上岡君だよ!全然自習に集中できないよ、二人が、イシ×カミが、あまりにも、あまりにも尊すぎるんでなあ!!
僕の趣味はアニメやマンガなのだが、特に好きなものはラブコメだ。現実にはありえなさそうな胸キュン展開がたまらない。それに伴って、カップリング癖がついてしまっていることも認めよう。どんな作品にもカプを見出してしまう。だが現実ではやったことはなかった。そんな尊いものは三次元に存在しない。高校に入るまではそう思っていた。
だがあの二人はどうだろう。入学して1週間くらいはなんでもなかった。ああ、話してるな、男女でよく会話が弾むな、くらいに聞き流していた。
でも気づいたら状況は変わっていた!少し語らせてもらおう。まず最初に必ず発生するニックネームイベント。あれはすごい。ただの友達関係の間に成り立つだろうかいや成り立たない。ニックネームを考えている時間、数分か、たった数秒かもしれないが、石坂さんが上岡君のことを思い浮かべていると考えていると興奮してしまう。そしてこの前、「これはなんなのだ」と問うた上岡君に対し石坂さんは「毎日の楽しみがあれば学校に来ようと思えるでしょ?」と答えた。僕は聞き逃さないぞ。これを上岡君は「石坂さん自身の楽しみ」と捉えたようだったがそれを聞いた石坂さんは数秒、無言だった。ここから導き出される答えは1つ。
ニックネーム遊びは「上岡君のために石坂さんが提供している楽しみ」なのではないか。
だから解釈違いに石坂さんは一瞬、フリーズした。それが僕の考察だ。自覚があるかは知らないが、石坂さん!上岡君に気があるでしょ!!
後日起こった、「無視事件」もそうだ。あれは上岡君が原因で起こった事件といえよう。しかし解決したのも上岡君だ。石坂さんの些細な変化を見逃さず、謝罪、さらに元気付けることに成功していた!細かな表情、喋り方の違いを見破った上岡君!石坂さんのこと好きでしょ!!
その後連絡先交換してたしな!んんっ!最高!
だがしかし!今日はどうした!何故来ない!もう8時はとっくに過ぎたぞ何故来ない上岡ァ!早く尊みを補給させろお!
それどころか、気づけばパリピに包囲されているじゃあないか!!絶対サッカー部入りそうな猿どもに囲まれた……会話が下品だ。イシ×カミじゃなくて獣の会話が聞こえてくるぜ……。
「なあなあ、このクラスで誰が可愛いと思う?」
「三浦とかよくね?」
「俺は榊さんかな」
「渡辺とか胸おっきくてえろくね?」
もう、死ね!見た目しか見ることのできない雑魚め!たしかに、石坂さんはとびきり美人ではないしナイスバディでもない。失礼だが客観的に言わせてもらえば、ルックスはそんなでもない……が、大事なのは心!あの眩しい笑顔とその奥にある太陽の心!その魅力に気づけているのは上岡君だけだろう。あ、僕はわかってないぞ?僕みたいなムシが入る隙はないのだ。とにかく、1秒でも多く尊いやりとりを見せてほしい。朝の20分だけに限定されていようが構わない。むしろそれが良い。貴重であればあるほど価値は高い。
「おい宮下ぁ。勉強してて偉いなあ」
「いや、そんな真面目にやってないよ……開いてるだけ……」
「嘘つけや」
やかましいわ猿ゥ!僕は本当にやっていないんだ!石坂さんと上岡君を見ているからなあ!
ーーーーー
「明日からゴールデンウィークですが、しっかり勉強もやってくださいねー」
帰りのホームルームが終わる。
支度を終えて、廊下に出る。
教室に戻る。
え?幻?
もう一度廊下に出る。
いやん!石坂さんと上岡君が二人で歩いてる!!
え、放課後デート?
つい、距離を取りながら後を追ってしまう。
下駄箱。靴を履き替えて……まだ一緒に歩いている。
校門。を出ても一緒。
王浜駅。なんと電車に乗るのではなく、繁華街の方は繰り出した。
放課後デートじゃん!!うおおお!!!!
「あの2人……付き合ってるのかァ!?」
もう、辛抱たまらんっ!